受精卵がいつも8分割で止まってしまいますどうすればいいですか?

受精卵が胚盤胞まで育たないのは どこに問題があり、どんな治療が有効なのか、 はらメディカルクリニックの原先生に 詳しく伺いました。

原 利夫 先生 1983 年、慶應義塾大学大学院医学研究科修了にて 医学博士学位を取得。同大産婦人科助手時代、日本 初の凍結受精卵ベビー誕生の一員として活躍。その後、 東京歯科大学市川病院講師、千葉衛生短大非常勤講 師を経て、1993 年はらメディカルクリニックを開院。 わかりやすい説明に定評があり、テレビや雑誌でコメ ントを求められることも多い原先生。不妊症の多くが 原因不明といわれているが、それでも諦めることなく、 同クリニックでは漢方療法やサプリ、鍼灸、骨髄刺激 など、治療外でもさまざまな取り組みを行っている。
usaさん(33歳)Q.2回目の体外受精で撃沈しました。1回目はアンタゴニスト法で 採卵。胚盤胞まで育てる方針の病院ですが、8分割でストップ。 「卵子の質がよくない」といわれ、半年間、鍼灸や低用量レーザー 療法に通い、ルイボスティーも飲んで体質改善に取り組みまし た。2回目はロング法でチャレンジしたのですが、空胞ばかりで 卵子は5個しか採れないし、通常の体外受精を試みた2 個は 受精もしない。顕微受精をした3個のうち2個は受精しましたが、 結局8分割でストップし、移植も凍結もできませんでした。この 先、どんな治療が有効なのか、ご意見を聞きたいです。

usaさん のデータ

■検査・治療歴

体外受精(顕微授精を含め)に2回チャレンジ。
1回目(排卵誘発はアンタゴニスト法)は受精卵が8分 割でストップ。
その後半年間、鍼灸や低用量レーザー療法、 ルイボスティー飲用などで体質改善に取り組む。
2回目(排卵誘発法はロング法)は採卵5個。
通常の体外受精では受精せず、顕微授精をした3個のうち2個受 精するも8分割で止まり、結局、移植・凍結はできなか った。
胚盤胞まで育たない原因は不明。

■現在の治療方針

卵子の質を改善するために「L-アル ギニン」と「メラトニン」というサ プリを処方されている。
採卵など、 今後の治療方針は未定。

染色体異常

2回とも受精卵の成長が8分割で止まってしまったそうですが、どんなことが原因として考えられますか。
原先生 考えられる原因の1つとして、染色体異常があります。
受精卵というのは、針をちょっと刺しただけで勝手に2分割くらいになってしまうのですが、そこからさらに成長していくためには染色体の情報が必要になってきます。
8分割を越えて胚盤胞まで到達するためには、染色体がきちんと活性化していないといけないんですね。
2回とも8分割でストップしたということは、その染色体に何らかの異常がある可能性があります。
本当にそれが原因かどうか、受精卵の染色体を調べる検査がありますが、残念ながら国内ではできません。
しかし、受精卵自体の検査は不可能ですが、母親側、父親側の染色体を調べることはできます。
採血で簡単にできるので、一度その検査を受けてみてはいかがでしょうか。

染色体異常の時は?

検査をして、染色体に異常があった場合は?
原先生 精子が持ち込んだ染色体に異常があった場合は、培養の方法を変えてみるのも1つの方法です。
カルシウムイオノフォア法といって、培養液のカルシウムの濃度を少し変えてあげる方法で、特殊な薬剤で卵細胞質内のカルシウムの濃度の上昇を促すことで、卵子を活性化。
精子側に卵子活性化物質が欠如しているケースでも、この方法で受精卵の分裂がスムーズに進むことがあります。

誘発法の変更

ほかに原因は考えられますか?
原先生 受精しにくく、受精しても分割が進まないということは、担当の先生がおっしゃるように、やはり卵子の質がよくない可能性も考えられますね。
2回目のチャレンジではロング法で5個採卵できたとのこと。
それほど少ない数ではないと思いますが、空胞が多いというのが気になります。
このような場合は排卵誘発法を変えてみたほうがいいかもしれません。
前の周期に超音波で前胞状卵胞をみて、その数が3個以下であれば、薬をあまり使わないクロミッドⓇなどを用いた低刺激法や完全自然排卵周期法のほうがいいのではないかと思います。
クロミッドⓇには、エストロゲンの分泌を抑えるとともにLHの分泌も抑える作用があるんですね。
そうすると卵胞がゆっくり育ちますから、空胞を防ぐ効果が期待できます。
また、usaさんは現在 33 歳で年齢的にはまだ余裕があるので、薬を使わない自然周期による採卵にも挑戦して、質のよい卵子が採れるかどうか試してみるのもいいと思います。

卵子の質とサプリメント

卵子の質を上げるために、サプリメントや鍼灸にもトライされているようですが。
原先生 メラトニンなど、いろいろなサプリも試していらっしゃるようですね。
現在はDHEAを処方されているようですが、これらのサプリには卵子の質を改善し、良好胚盤胞到達率や妊娠率を上昇させる効果があるという報告もされているので、引き続き摂取されていくことをおすすめします。
また、活性酸素が卵子に悪影響を与えるというデータもあるので、これを予防するために、ビタミンEの摂取もプラスしていただくといいですね。
usaさんは、漢方療法はまだ試していないようですが、当院では卵子の質を上げることを目的に、場合によっては「白虎加人参湯」や「四逆散」「竹温胆湯」などの漢方薬を処方しています。
体質にうまく合えば漢方も効果を発揮することがあるので、こちらも先生に相談されてみては?

精子所見を改善するには

ご主人側ができることはありますか?
原先生 男性については、残念ながら現段階では精子の状態を改善する絶対的な治療法はないのですが、少しでも精子の形態率や運動率をよくするために、当院ではいくつかの薬剤を組み合わせて服用する「MSF療法」という治療を始めました。
精子運動性と形態の改善、精子DNAの破砕を防ぐために「グルタチオン」、精子運動性の改善と精子数を増加させるために「L ̶メチオニン」、他の薬剤との併用により精子産生細胞の酸化を防ぎ、精子の運動性を向上させるために「ビタミンA」、精子産生の原料となる「亜鉛」という4種類の薬剤を、精子の産生期間に合わせながら 30 日単位で服用していきます。
女性と並行して、男性側もこのような治療をしてみるのもいいと思います。
さまざまな治療法を提案されていますし、胚盤胞まで育てられる培養技術のある病院だと思うので、先生を信頼されてもいいのではないでしょうか。
できることは積極的に取り入れて、前向きに治療を進めていただきたいですね。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。