【医師監修】福井 敬介 先生 1989 年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に入局、 愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000 年愛媛大学産科婦人科学助教授。 2001年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」 と、福井ウィメンズクリニックを開設する。A 型・やぎ座。今年はスタッフの増 員を予定していて、その初期研修などを含め体制づくりに大忙しの日々。患者さ んの精神的、身体的、経済的な負担をできるだけ軽減したいと邁進中です。
まかろんさん(39歳)Q.5 年ほど前、子宮内膜増殖症と診断されましたが、結婚でやむなく病院を 変更しました。現在は個人の不妊治療専門病院に通院中です。先生は増 殖症のことはまったく触れず、1年くらいタイミング療法をしていて、最近「そ ろそろ人工授精をやってみませんか」と言われました。私は今、排卵時に 約1週間不正出血が多々あり、インターネットで調べたところ、排卵が不 定期で着床もしづらいというような記述もあり不安になりました。 このまま、今の先生におまかせしても大丈夫でしょうか? それとも病院 を変えて、別の先生に診てもらったほうがいいのでしょうか。
子宮内膜増殖症
「子宮内膜増殖症」は、このまま放っておいていいのでしょうか?
福井先生 まずは増殖症の、細胞診などの病理的な検査を受けるべきだと思います。
不正出血が増殖症によるものなのかをきちんと確認すべきです。
また、まかろんさんの場合、39 歳という年齢でタイミング療法を1年続けたという治療は、少しのんびりしすぎではないかと思います。
早めに次の治療へのステップアップをすすめます。
「子宮内膜増殖症」にはさまざまなタイプがありますが、大まかに言うと、「単純型(良性)」と「異型」の2つに分類されます。
単純型であれば、ホルモン療法や、自然経過で消滅するものもあり、経過観察でよい場合もあります。
しかし異型の場合は、子宮体がんに発展する可能性もあるので、注意して頻繁に検査を行う必要があると考えられています。
検査は、細胞診および組織診を行います。
今の主治医に再度、子宮内膜増殖症のことを伝えて検査してもらうか、婦人科の専門医院で病理検査を行ってもよいかもしれません。
増殖症は不妊治療に影響を与えますか?
福井先生 子宮内膜の増殖が過度になり、子宮内膜が異常に厚みを増した状態を「子宮内膜増殖症」といいます。
主にエストロゲンの作用が異常に強く出てこの病気になるのですが、そのような状態になるのは、ホルモン異常や代謝異常で、たとえば月経不順、多嚢胞性卵巣症候群などがあり、ベースとして排卵障害がある場合があります。
治療方法は、原因や患者さんのバックグラウンド(肥満や糖尿病などがあるかどうか)にもよります。
妊娠を希望するのであれば、排卵障害の治療やホルモン療法を行い、場合によっては子宮内膜をはがす外科的な処置が必要になります。
状況にもよりますが、増殖症は不妊症に影響を及ぼすことがなきにしもあらずです。
若年型の子宮体がんというのもありますので、それをしっかりと念頭において検査をすべきです。
質問内容を見るかぎり、まかろんさんのご希望でタイミング療法をされているのかもしれませんね。
ただ、漫然と治療を続けているのであれば、まずは増殖症の検査を受け、治療をするなら早く始めることです。
不妊治療については、早めにステップアップすべきだと思います。
また、タイミング療法を続けていらっしゃるので、排卵はあるのだと思います。
治療を医師にまかせきりにせず、また一人で悩まずに、担当の先生に「検査してください」と言ってみてください。