タイミング療法4周期目。高温期が続いているけれどこれって妊娠?【医師監修】

タイミング療法を始めて4周期目に高温期の継続。 注射の影響? それとも妊娠反応なのでしょうか? 美馬博史先生に詳しくお聞きしました。

【医師監修】美馬 博史 先生  医学博士。東京慈恵会医科大学医学部卒業後、同大学産婦人科入局。 同大学附属病院産婦人科勤務を経て、美馬産婦人科院長就任。日本 産科婦人科学会専門医。日本東洋医学会専門医。日本生殖医学会 会員。日本女性心身医学会会員。「女性の健康はオバリー(卵巣)機 能が主役」として、体にやさしいオバリー生活法を提案。著書は『妊 娠したい! と思ったらすぐ読む本』、『キレイなわたしをつくるオバリー 生活法』、『こんにちは! 更年期』、『更年期専門外来』など多数。

ドクターアドバイス

生理予定日後も高温期が続くなら、 妊娠の可能性も。 妊娠しなかった場合は、 まずは詳しい検査を ひと通り受けるところから始めましょう

りんさん(23歳)Q.多嚢胞性卵巣症候群と診断され、タイミング療法を開始して4周期目です。今回、右卵巣の卵胞 が19㎜になり3日ほどで基礎体温が下がり、翌日から高温期に入りました。その日に病院へ行き、 排卵の確認と高温期を安定させる注射をしました。性交渉は排卵日の3日前と2日前にしました。 今まで高温期は9日ほどしか維持できていませんが、今回は最初36.55度、6日目に36.88度、 8日目には36.97度まで上がっています。注射のお陰で高温期が保てているのか、妊娠に期待し てよいのか不安です。また、今の病院では、こちらから尋ねないせいか子宮内膜の厚さなどを知ら されず、検査初期に子宮卵管造影検査もしていません。

高温期が続く…妊娠??

高温期が続いているのは、薬の影響なのでしょうか、それとも妊娠なのでしょうか?
美馬先生 これまで高温期が 10 日以上続かなかったということから、排卵後にできる黄体が十分に形成されず、黄体がうまく働かない状態、黄体機能不全だと考えられます。
今回は高温期が続いているようですが、次の生理予定日を過ぎても高温期が続く場合は、妊娠の可能性があります。
現在、排卵誘発剤のクロミッドⓇとプロラクチンを下げる薬を併用しているようですが、今回も妊娠しなかった場合は、不妊因子を特定するための詳しい検査をするべきでしょう。

高プロラクチン血症

りんさんはプロラクチンを下げる薬を処方されていますが、これはどのような場合に服用するのですか?
美馬先生 プロラクチンとは、脳下垂体から分泌されるホルモンの1つで、乳汁をつくる働きをします。
通常は、出産後の授乳期に分泌されるホルモンですが、授乳期以外に過剰に分泌されてしまうことがあり、これを「高プロラクチン血症」といいます。
このホルモンには排卵を抑える作用があり、分泌量が多いと排卵障害の原因となります。
脳下垂体に腫瘍があるなどの特殊な例を除き、ほとんどは潜在性のものなので、プロラクチンを下げる薬を投与します。
ただし、プロラクチン値が高いことが不妊の原因なのかどうか、質問内容だけでは判断できません。
多嚢胞性卵巣症候群であると診断するに至った経過や検査結果について、もっと詳しい説明を担当の先生に求めてみてはいかがでしょうか。

不妊治療の必要検査

また、りんさんが通う病院では、検査初期に子宮卵管造影検査を行わなかったようで、この点も気にしていらっしゃいます。不妊治療の際には、どのような検査が必要なのでしょうか?
美馬先生 多嚢胞性卵巣症候群が疑われる場合は、たとえ超音波検査でわかったとしても、基本的な不妊検査を省くことはできません。
当院では、月経周期前半の卵胞期と後半の黄体期に血液を採取して、血中のホルモン濃度を測定します。
FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄 体形成ホルモン)、E2(エストラ ジオール)、P4(プロゲステロン)、PRL(プロラクチン)の他、必要に応じてテストステロン(男性ホルモン)を調べます。
さらに月経終了後~排卵前に、卵管および子宮病変の有無を調べる子宮卵管造影検査をします。
これは不妊症の必須検査です。
りんさんの担当の先生は、子宮卵管造影検査は行っていないとのことですが、排卵が順調でも、卵管が細かったり、閉じてしまっている場合もありますから、遠慮せず先生に相談してみてください。

その他に必要な検査は?

その他にも、必要と思われる初期検査について教えてください。
美馬先生 低温期中に卵巣の状態や卵胞の発育状態を測定する超音波卵胞測定は、産婦人科の聴診器といわれるような必須の検査です。
卵巣内の卵胞の数や大きさも測ることができます。
この検査で卵胞の大きさが18 ㎜を超えた時点で、ホルモン検査も行います。
E2が300、LHが10 以下であれば排卵となります。
これによって排卵日を正しく予測し、性交のタイミングを指導できます。
さらに性交後のヒューナーテストでは、頸管粘液を採取し、活動性のある精子がどのくらいいるかを調べます。
この検査では、男性の精子と女性の頸管粘液の相性もわかります。
この検査の結果で、卵子が精子を受け付けない抗精子抗体が発見されると、卵管での受精は難しいでしょう。
この場合は、体外受精に進むことになります。
いずれにせよ、不妊治療の第一歩は詳細な検査から始まります。
りんさんはまだ 23 歳とお若いので、落ち着いて、まずは必要な検査をきちんと行うことから始めましょう。
そのための医師や病院を探してみてはいかがでしょうか。
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