【医師監修】大島 隆史 先生 自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入局。産婦 人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長として4年間勤務。 1992年、新潟大学医学部において医学博士号を授与される。新潟県立がんセ ンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を経て、1999年、大島クリニックを 開設、院長に就任。「多嚢胞性卵巣症候群の方も妊娠を諦めないで。正確な 診断と、リスクを見極めながらも積極的な治療を行うことが妊娠への近道です」 と大島先生。
sareeさん(28歳)からの投稿 Q.ベビ待ち2カ月目の主婦です。高校生の頃から生理周期がバラバラで、25歳く らいから婦人科に通うように。婦人科では「周期にバラつきはあるけれど、排卵 はしてますよ」と言われたものの、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断され、 あまりに周期が長引く時はホルモン注射をしています。周期を整えるピルも飲み ましたが体質に合わず、頭痛と吐き気がひどく、28日分の1シートで断念。周期 は長い時で34~48日、短い時で27日など、基礎体温のグラフはガタガタです。 タイミング療法にトライ中ですが、専門病院に行ったほうがいいでしょうか?
経血量と排卵の状況
sareeさんは投稿時に基礎体温のグラフも添付してくれたのですが、それを見て大島先生はどう思われますか?
大島先生 高温があまり維持できていないようなので、おそらく排卵はうまく行われていないのではないでしょうか。
sareeさんは周期にバラつきがあるうえ、経血の量も少なめということ。
これは気になる症状ですね。
排卵誘発をすると多くなるなど、経血の量は排卵の状況に比例します。
その点からみても、やはり排卵に問題があるのではないかと思われます。
排卵の判断方法
婦人科の先生には「排卵自体はしている」と言われたそうですが……。
大島先生 何をもって「排卵している」という診断をされたかですね。
基礎体温だけをみておっしゃっているのか、それとも卵胞をエコーで追跡されてなのか。
診断方法によって真偽のほどが違ってくると思います。
基礎体温はあくまで判断材料の一つで、やはり排卵前と排卵後にきちんと卵胞をエコーで追跡しないと、排卵しているかどうかを正確に診断することはできないのではないでしょうか。
ホルモン値からPCOSの判断も
sareeさんのように生理周期にバラつきがあるという方の場合、どのように治療していけばいいのでしょうか。
大島先生 早く妊娠を望まれるなら、まず正確な診断を受けることが大切です。
生理3日目で採血して一通りのホルモン検査を行い、エコーで3日目の胞状卵胞の数を数えます。
PCOSということであれば、妊娠するために排卵をうまく起こさなければなりませんが、薬で排卵誘発をすると卵巣が腫れやすくなる傾向があるんですね。
腫れを防止するために、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の値を測ることも重要です。
この値が 60 を超えていると卵巣が腫れやすくなる、というデータがありますので、その場合は注射薬だけで卵巣を刺激して、卵胞の経過をみていったほうが安全かもしれません。
sareeさんのような方の場合は、正確な検査、そしてリスクを見極めてから不妊治療に入ることが必要なので、やはり、同様の症例の経験が豊富な専門病院に行かれたほうがいいのではないかと思います。
※LH:黄体形成ホルモン。卵胞刺激ホルモンとともに卵子の発育や排卵、黄体の形成を促す。
※FSH:卵胞刺激ホルモン。卵 胞の発育を促す。