早めの検査が希望なのですが不妊治療と不育症検査の同時進行は可能でしょうか?

不育症では、スクリーニング検査を実施し、 個別化した治療が行われます。この検査と 不妊治療は同時進行できるのか、絹谷先生に伺いました。

絹谷 正之 先生 愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入局。その 後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて高度生殖補助医療 研修、顕微授精を修得。1999 年にはカナダ、アメリカにて高度生殖 補助医療研修を行う。2000 年、絹谷産婦人科副院長、2002年より 院長に。広島県産婦人科医会常務理事。趣味は旅行、映画鑑賞のほか、 サイクリングも。自転車をこぐ爽快感が、忙しい日々のリフレッシュに なるそう。
チョコマカロンさん(パート・38歳)からの投稿 Q.人工授精での妊娠で、2 度目の流産をして5日目です。実は、姉が不育症で 2 度の流産経験があることと、私が高齢であることも踏まえ、よくいう3回の流産後ではなく、早めに不育症の検査をしたいと考えています。「不育症外来の初診 は生理を一度見送ってから」と、インターネットなどの口コミなどでは目にしますが、 初診から検査結果が出るまで、やはり不妊治療を行ってはいけないのでしょうか? 有名な先生は初診まで4カ月待ちとも……。 検査時期について、焦りと不安でいっぱいです。

三回以上の流産で検査

チョコマカロンさんは、早めの不育症検査を希望されています。
絹谷先生 2度の流産はとてもつらかったと思います。
このつらい経験で、精神的に不安定になる方もいらっしゃいます。
ただ、医師の側からみると、流産は珍しいことではなく、1回の妊娠につき、妊娠した人全体の約 15 %は流産を経験しているといわれています。
通常は、流産を3回以上くり返す場合(習慣性流産)に検査をします。
ですから、2回までは必ずしも検査を必要としませんが、チョコマカロンさんのように、お姉さんが不育症で、ご本人が希望する場合はスクリーニング検査を行ってもいいと思います。
おそらくチョコマカロンさんのなかで、「早く産みたい」気持ちと、「流産をくり返すかもしれない」怖さの葛藤があるのではないでしょうか。
検査をして異常が見つかれば、早期に対策をすることができます。
逆に、検査をせずに不妊治療を続けて妊娠した場合、流産の原因がわからないままなので、また流産となっても対処ができません。
原因が見つかれば、不育症の治療を進めることができ、流産をくり返す危険因子を少しでも取り除くことに尽力できます。
とはいえ、私でしたら、不妊治療を続けるか、不育症の検査をして治療をするかは患者さんご本人の意思を尊重します。
患者さんと話し合いながら、どう進めるべきか決めていきますね。

不育症検査について

お姉さんが不育症ということですが、チョコマカロンさんも早期に検査したほうがいいですか?
絹谷先生 遺伝的に近いお姉さんが不育症ということですが、必ずしもチョコマカロンさんも不育症であるということにはなりません。
ただし、女性の年齢が上がると妊娠しにくくなるので、ご心配なら不育症の検査を受けられるのも一つの選択です。
流産の原因の約6割は、胎児の染色体異常による自然淘汰です。
女性の年齢が上がると、卵子の老化によって、胎児の染色体異常のリスクも高まることがわかっており、 35 歳で約 20 %、 40 歳で約 40 %、42 歳で約 50 %と報告されています。
また、夫婦いずれかに★相互転座などの染色体異常があった場合の治療については、残念ながら治療法はありません。
そのため、染色体検査を躊躇する方もいらっしゃいますが、知ることで覚悟や安心は得られるのではと思います。
また、もし異常があったとしても、異常の種類によって、どのくらいの割合で必然的な流産が発生するか、ある程度推定することが可能です。
そのほかの原因として挙げられることは、クラミジア感染、ウイルス感染などの感染症、糖尿病、甲状腺機能異常などの内分泌代謝異常、子宮形態異常、★免疫異常など、さまざまです。
そのため、診断・治療には、系統立てた検査が必要となります。

検査内容

では、具体的にどんな検査をするのでしょうか?
絹谷先生 不育症の検査は、流産後、精神的に落ち着き、ホルモン状態が安定した時期に行います。
多くの場合は基礎体温をきちんと測り、1回目の月経後に行います。
当院の場合は、日本産科婦人科学会の生殖・内分泌委員会報告をもとに、2段階に分けてスクリーニング検査を実施しています。
初診時に検査項目や、それぞれの料金などの説明書をお渡ししています。
検査には、次の7つがあります。
①子宮の形態異常、子宮筋腫や内膜ポリープの有無を経腟超音波検査、子宮卵管造影検査、子宮鏡検査で調べる
②ホルモンや甲状腺の状態を検査する内分泌学的検査
③ご夫婦の染色体検査
④自己抗体・抗リン脂質抗体検査
⑤凝固因子活性検査
⑥感染症検査
⑦同種免疫検査
病態を詳しく把握するために、保険診療対象外の検査も含まれています。
子宮形態異常の検査以外は、すべて採血のみで、結果は1週間ほどでわかります。
染色体検査のみ2週間ほどかかります。
また、患者さんの経済的負担を考慮し、先に保険適用のある項目から調べ、それらに異常がなければ自費検査項目に進むという手順も、説明しています。
検査後の治療は、結果によって治療方法が異なりますので、結果を説明後、今後の治療法・次回妊娠時の流産率をどのくらい軽減できるかなどについて、お話ししていきます。
先生のクリニックには、不育症外来が設置されていますね?
絹谷先生 はい。
せっかく妊娠しても流産をくり返してしまう方を多くみてきました。
その方たちの力になれればと、ようやく不育症外来を始めたところです。
流産はとてもつらい体験ですが、適切な検査・治療を行えば、次回、妊娠がうまくいく確率が高まります。
流産の回数だけに固執せず、不安なことがあれば臆せずに受診してほしいと思います。

★相互転座って?

わかりやすくいえば、染色体の一部が入れ替わること。
この場合、場所が変わるだけで、遺伝情報などが全体的に失われているわけではない。
そのため、本人が生きていくうえでは問題はない。
しかし、夫婦のいずれかにこのような染色体異常があると、流産しやすくなる場合がある。
ただし染色体の組み合わせ4種類あり、そのうち2種類の組み合わせは自然淘汰で流産してしまうが、1種類はまったく正常の染色体、もう一つは親と同じ相互転座保因者となる。

★免疫異常って?

人間の体内に細菌やウイルスなどの異物が入ってくると、それを排除しようと防御システム=免疫が働く。
ところが何らかの原因で免疫機能が低下して感染しやすくなったり、自分の体を攻撃するようになったりする。
この状態を免疫異常という。
たとえば、習慣性流産と関係するといわれる抗リン脂質抗体は、自分の体に対し免疫反応を起こすという免疫異常の結果、産生された自己抗体である。
血管内に血栓を作る傾向があり、胎盤の血流を悪化させた場合、胎児に十分な血液が届かないために流産を起こす。
>全記事がドクター編集!

全記事がドクター編集!

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。