【Q&A】移植する胚の順番について~矢野先生

kikiさん (38歳)  
初めての採卵(9/20)は6個でうち3個成熟、うち2個顕微授精し、胚盤胞まで待つこととしたものの、2個とも途中(1個は3日目、もう1個は細胞の数が少なく)で成長停止のため、移植できませんでした。
2回目となる今回の採卵(11/16)は2個、うち2個とも成熟で顕微授精し、1個は2日目(見た目が良好という所見の初期胚)で凍結、もう1個は6日目(胞胚腔は良好だが、まわりはグレード3で良くないという所見の胚盤胞)で凍結しています。
これから、移植するにあたり、どちらを先に移植した方がいいのか、その理由を含めて教えて頂きたいと思います。
よろしくお願い致します。
花みずきウィメンズクリニック吉祥寺
院長 矢野 直美 先生

東京大学医学部医学科、東京大学大学院医学系 研究科博士課程卒業。武蔵野赤十字病院、帝京 大学医学部附属溝口病院、東京都老人医療セン ター、池下レディースチャイルドクリニック、池下 レディースクリニック広小路勤務を経て、2009年、 池下レディースクリニック吉祥寺院長に就任。体 外受精はすべて院長が担当。少数精鋭のスタッフ で、一人ひとり丁寧に診ることを心掛けている。
2022年7月より名称が「花みずきウィメンズクリニック吉祥寺」に改称。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
正常受精をすると、9割以上は4細胞に到達します。
採卵数が少なく、胚盤胞到達率が低いため、今回は4細胞の段階で1個凍結したようですね。
移植した後に子宮内で胚盤胞に到達するかはわからないものの、培養器よりも子宮内の環境の方が良いことを期待して、あえて初期胚で凍結胚を確保するという方針の施設もあります。

胚盤胞のグレーディングで最も広く採用されているGardner分類では、4AA、3BCなどのように表記します。

初めの数字が、胚盤胞の拡張の程度を示し、2番目のアルファベットは胎児となるもとの細胞数が多い方からABCとし、3番目のアルファベットは胎盤のもとになる細胞数が多い方からABCとしています。
ご質問の方の通院されている施設のグレーディング方法がGardner分類でしたら、3ACあるいは3BCなどでしょうか?
胎盤の元となる細胞数は着床しやすさに影響しますので、大事なところです。3BCでも絶対妊娠しないわけではありませんが、施設によっては凍結の対象にならない場合もあります。

「どちらの胚を先に移植するべきか」というご質問への回答は、判断が難しいところです。

良好胚盤胞に育つ可能性が残されているということで、4細胞の移植をお勧めします。

保険適用となるのは、移植6回までですが、胚を全て移植するか、廃棄とならない限り、新規の採卵を保険適用ですることはできません。

次回以降の採卵時には、あらかじめ初期胚凍結もするのかよくご検討ください。
良好胚盤胞が得られるまで凍結しないという選択もあります。
しかし、なかなか良好胚盤胞が出来ない場合、治療を際限なくすることになりかねないので、あえて初期胚も含めて凍結し、6回の移植までを不妊治療の区切りとするというご夫婦もあるかもしれません。

補足ですが、2個胚移植をする場合、初期胚2個、あるいは胚盤胞2個でないと同日に移植できません。

先進医療として自費で2段階移植をする施設もありますが、その場合、本来あまりよくない初期胚を移植して、その後に本命の良好胚盤胞を移植します。
先に初期胚のグレードの良い方から凍結して、あまりグレードの良くない胚盤胞を凍結した組み合わせですと、本来の2段階移植の趣旨には合わないかと思われます。
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