【Q&A】卵巣付近の水腫について~佐藤幸保先生【医師監修】

まえさん(46歳)

現在、体外受精のため採卵待ちです。
しかし、先日の卵管造影検査で、左側卵巣付近に水腫が発見されました。
水腫の手術はネットでは5日の入院と書いてありましたが、そのような形でしょうか。手術以外には改善方法はありませんでしょうか。
また、水腫は子宮内膜炎の原因になると聞きました。放っておいても不妊治療、そして健康に問題はありませんでしょうか。

ハシイ産婦人科の佐藤幸保先生に伺いました。

【医師監修】ハシイ産婦人科 佐藤幸保 先生 
京都大学医学部附属病院および高松赤十字病院で体外受精など生殖医療を担当。患者さんそれぞれのニーズに応じて、個別化した不妊診療を提供することをモットーにしている。
資格:産婦人科専門医、生殖医療専門医、周産期専門医・臨床遺伝専門医
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

 現在「卵巣の腫れがひくのを待っている」とのことですが、卵巣の腫れはクロミッドの影響だと考えられますか?

排卵がうまくおこらない(破れない)まま残った非破裂卵胞が腫大する、あるいは排卵後に形成された黄体が嚢胞化して腫大することがあります。クロミッドなどの排卵誘発剤を使用すると、このような「卵巣の腫れ」がおこる頻度が高くなる印象があります。月経中に「卵巣の腫れ」が見られる場合は、ひくのを待ってから、排卵誘発の治療を開始したほうがいいでしょう。

左側卵巣付近に水腫が発見されたとのことです。水腫ができる原因について教えてください。

左卵巣付近に卵巣とは別個の嚢胞(水腫)が見られる場合、傍卵巣嚢腫あるいは卵管留水腫の可能性が考えられます。傍卵巣嚢腫のできる原因は不明ですが、卵管留水腫のできる背景には卵管の通過障害があることが多いです。

水腫は子宮内膜症の原因になりますか?

傍卵巣嚢腫あるいは卵管留水腫自体が子宮内膜症の原因となることはありません。

不妊治療を進める上で、水腫は治療したほうがよいでしょうか? 水腫を治療する場合、手術以外の方法はありますか?

卵管留水腫では内容液が子宮内に逆流し、受精卵が着床するのを妨げる危険性がありますので、胚移植をする前に治療することが勧められます。手術以外の治療法がないわけではありませんが、一般的ではありません。

現在、体外受精のため採卵待ちです。しかし、先日の卵管造影検査で、左側卵巣付近に水腫が発見されました。水腫の手術はネットでは5日の入院と書いてありましたが、そのような形でしょうか。

卵管留水腫あるいは傍卵巣嚢腫に対する治療としては、全身麻酔下での腹腔鏡下手術を行うことが多いです。ネットの情報どおり、手術前日・手術日・術後2〜3日、合計4〜5日の入院が一般的です。

手術以外には改善方法はありませんでしょうか。

傍卵巣嚢腫については、妊娠に悪影響を及ぼしませんので、悪性の可能性や症状がなければ、治療の必要はないでしょう。一方、卵管留水腫は体外受精などの不妊治療に悪影響を与えますので、治療するほうがいいでしょう。治療としては、手術以外の方法がないわけではありませんが、一般的に手術が推奨されます。

また、水腫は子宮内膜炎の原因になると聞きました。放っておいても不妊治療、そして健康に問題はありませんでしょうか。

卵管留水種を放っておいても健康に悪影響を与えることはありません。ただ、不妊治療の成功率を下げ、また子宮内膜炎の原因となることもあります。妊娠希望がある場合は手術をしたほうがよいでしょう。

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