着床不全外来の 血液検査で陽性反応。

今後の治療法を教えて

奥 裕嗣 先生 1992年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病院勤務の後、アメリカに 留学。Diamond Institute for Infertility and Menopauseにて体外受 精、顕微授精等、最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、IVF大阪クリ ニック勤務、IVFなんばクリニック副院長を経て、2010年レディースクリニッ ク北浜を開院。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学 会生殖医療専門医。7月から導入している「バーコードシステム」が順調に 稼働し、外来の患者様、カルテ、検体をバーコードで一元管理。「患者様の ご理解のもと、トリプルチェック体制が整い、より安全な診療ができるように なりました」と、先生もひと安心のご様子。
ほりこさん(28歳)からの相談 Q.はじめまして。不妊原因として卵管閉塞を指摘され、治療歴3年です。 これまで採卵7回、うち2回初期胚移植をしました。今回の採卵では、胚盤胞2個、桑 実胚1個、8分割胚1個を凍結しています。次に、ホルモン補充周期の胚盤胞移植を 控えているのですが、着床不全外来の血液検査でひっかかってしまいました。凝固 因子活性12因子…46、プロテインS活性…43。 今後、どのような治療をすればいいのでしょうか。ちなみに、現在、葉酸、ビタミンE、 亜鉛、ユベラなどのサプリメントを服用しています。

不育症検査

ほりこさんの検査数値は、何を意味してい るのでしょうか。
奥先生 当院での正常値は、凝固因子活性12 因子が 82 〜 1 3 2 、プロテインS活性が 60 〜 1 5 0 です。
この方は、いずれの数値も低 い状態です。
両者の数値が下がってくると、 血液の循環が悪くなり、血栓を起こしやすく なります。
実は、着床障害と不育症(流産)、 胎児死亡は、起こる時期が違うだけで、基本 的に同じ病態で起こっているのではないかと いわれています。
今後、どのような治療が考えられますか。
奥先生 血液の循環が悪く、微小の血栓が 起きて、着床しにくくなっている可能性があ ります。
そのため、血流を改善する治療が必 要になります。
1つ目は、アスピリン療法です。バファリンⓇ といって、子供の解熱剤として知られる薬を使 います。
これが血管の抵抗を下げ、血流を良く するといわれています。
2つ目は、ヘパリン療法です。
以前は、入院 管理のもとで点滴が必要でした。最近は、在 宅自己注射という方法で、ご自身で注射を 打っていただくことが可能です。
ちなみに、プ ロテインS活性値が低い不育症の方には、保 険適用となる薬もあります。
3つ目は、アスピリンとヘパリンを両方使 う方法です。
アスピリンのみを使った方、ヘ パリンのみを使った方、アスピリンとヘパリ ンを両方使った方の3つを比較したところ、 両方使った方が元気な赤ちゃんを出産する 率が高いという報告があります。
ほりこさん は、2つの異常がありますので、胚移植され た後に、アスピリンとヘパリンを両方使われ るといいと思います。

ホルモン補充周期の方が…

胚盤胞移植を予定されているそうです。
奥先生 この方は、両側卵管閉塞を認めます ので、本当は最初から胚盤胞移植を受けら れると良かったのではと思います。
卵管閉塞の方は、分割胚では胚移植後、胚が卵管へ移 動できず、子宮内にとどまって妊娠できない 可能性があります。
したがって、子宮内環境 よりも良い、体外培養で胚盤胞まで育ててか ら胚移植する、胚盤胞移植に変えるのはいい ことだと思います。
凍結融解胚移植の方法についても、ホル モン補充周期と自然周期がありますが、ホ ルモン補充周期で胚移植されることに問題 はありません。
どちらの周期も妊娠率が変 わらないという報告もありますが、一般的に は、ホルモン補充周期のほうが妊娠率は高い という報告が多いようです。

可能性は十分

ほりこさんのような症例はよくあるので しょうか。
奥先生 きれいな胚盤胞を移植しても着床 しないケースはよくあります。
この状態で、 ドクターが着床障害を疑って、着床障害検査 をするかどうかがポイントになります。
この 方は検査を受け、異常を見つけてもらってい ますので、良いドクターにかかられたのだと 思います。
28 歳という若年性の卵管因子です から、胚盤胞移植を行った後、アスピリン・ヘ パリン療法を行えば、うまくいく可能性は十 分あると思います。
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