はじめての不妊治療、 しっかり情報収集をして、 正しい知識をもって 治療に臨みたいですよね。 今回は「排卵誘発」について 俵先生が詳しく教えてくれます。

俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤 務医時代より不妊治療に携わり、2004 年愛知県の竹内病院トヨタ不妊センタ ー所長に就任。2007年、 俵 IVFクリニ ックを開業。生殖医療専門医。同院は 今年で開院 5 周年。「不妊症に関する 社会への情報発信や、患者さんとのコ ミュニケーションの充実など、今後もさ らに努力をしていきたいと思います」。
みーかさん(会社員・34歳)Q.次回の治療から、初めて体外受精をします。 クリニックで説明を受けましたが、 仕事が忙しいこともあり、 自分達で詳しいことまで調べて 検討できていないのが現状です。 疑問なのは、排卵誘発の方法には いろいろな種類があると思いますが、 それぞれの違いはどこにあるのでしょうか? 副作用などもあるのかどうか、気になっています。

排卵誘発は、移植のチャンスを増やし、 よりよい卵子を選ぶために行います

まずは、排卵についてお話ししましょう。
自然排卵は、通常、左右の卵巣のどちらかから、卵子が1個だけ排卵されます。
卵子は、卵巣の中にある原子卵胞の中から、その周期に育っていくものが選別されて、最終的に1個だけ排卵されるわけですが、その1個がベストな状態のものなのかどうかはわかりません。
なかには加齢により染色体異常が起きていたり、空っぽの卵胞(空胞)という場合もあります。
そうなると、採卵しても移植することができないケースが増えてしまうため、体外受精顕微授精を行う時は、「排卵誘発」を行って、複数の卵子(卵胞)を育てます。
排卵誘発は、移植まで持っていくチャンスを増やすだけでなく、複数の卵子の中からよりよい状態のものを選別することで、妊娠率を上げることもできるのではないかと思います。
では、何個くらい卵子を採ればいいのでしょうか。
さまざまな施設のデータや学会の報告によると、5〜 10 個程度が、最もいい胚ができるとされる数のようです。
私の経験からみても、そのくらいの数が採れれば良好な卵子に当たる確率も高まりますし、余剰胚もできるので、1回の移植で結果が出ない場合も、2回目、3回目のチャンスを得ることができます。
やはり、5〜 10 個が適切な数といえるのではないでしょうか。
「採る卵子の数は多いほどいいのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、採卵数が 20個以上になってくると、採卵の数日後に卵巣が腫れたり、血液内の水分量が減って血液が濃縮し、血栓症を引き起こすなど、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)になるリスクが高まるおそれがあります。
年齢が若くて、薬に対する反応がいい方や、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方などは、排卵誘発剤によって多くの卵胞が育ち、このような副作用が出やすくなるので、誘発のしかたをコントロールして、適切な数の卵子が採れるように調整していきます。

誘発法は、年齢やAMH値、ホルモン値、 治療歴などを参考に選択します

排卵誘発は、飲み薬や注射などを使用して行っていきます。
誘発の方法は、大きく分けて「低刺激周期」と「刺激周期」の2つがあり、開始時期や使用する薬剤、メリット・デメリットが異なります。
詳しくは、上の表をご参照ください。
当院の場合、誘発方法は年齢、抗ミュラー管ホルモン(AMH)の値、FSHなどのホルモン値、これまでの治療歴などを参考に選択します。
当院で最も多く用いている方法は、クロミフェンとHMG製剤を使う低刺激周期です。
特に、年齢が高い方やAMH値が低い方、注射をたくさん打っても卵子の数が増えない方には、この方法をファーストチョイスとしてご提案しています。
そのほかに、「ショート法」「アンタゴニスト法」、少数ですが「ロング法」も行っています。
ショート法は、 30 代後半〜 40 代でも卵巣の予備能がある方に。
アンタゴニスト法は、刺激周期の方法の中では比較的副作用が軽いので、 20 代〜 30 代前半の方で、ある程度の卵子数を採りたいがOHSSのリスクが心配な方にご提案しています。
当院では、患者さんへの負担を極力抑えた誘発法を考えています。
試した誘発法でよい結果が出なかった場合、次は別の方法にすることもあります。
体外受精や顕微授精では、排卵誘発がスタート地点です。
そこで採卵して育った受精卵が妊娠のキーになる、とても大事な部分といえます。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。