2人目不妊で病院を予約。治療はどんなペースで進むのですか?【医師監修】

治療にかかる期間は? また、そのスケジュールはどのように決めるのでしょうか。 不妊治療の計画の立て方について、 俵史子IVFクリニックの俵先生に伺いました。

【医師監修】俵 史子 先生 浜松医科大学医学部卒業。総合病院勤務医時代 より不妊治療に携わり、2004 年愛知県の竹内病 院トヨタ不妊センター所長に就任。2007年、 出 身地の静岡に俵史子 IVFクリニックを開業。 最先 端の治療に興味を持つ市内の病院や大学の医師 が研修に来ることも。若い医師たちのスキルアッ プや施設を超えて情報を交換し合うことで、静岡 県全体の不妊治療のレベルアップにも貢献。

ドクターアドバイス

2人目であっても不妊期間が長ければ 通常の治療と同じ流れで進めていきます
わかぶーさん(パート・43歳)からの投稿 Q.2 人目不妊で専門病院に予約を入れました。 現在、9 ~17 時まで、週 4回のパートをしています。 不妊治療に関してまだまだ勉強不足なのですが、 治療が始まったらかなり頻繁に通院することになるのでしょうか。 仕事をしながら治療を頑張られている方、 どのように両立されているのか教えていただけますか?

先生からアドバイス !

●2人目不妊でも基本検査が必要
●年齢を考えて短期集中の治療を
●妊娠率の高い治療を視野に入れて

治療方針決定の手順

こちらのクリニックでは、どのような手順で治療方針を決めていくのですか?
俵先生 まずは初診時に、不妊期間と、これまで月経周期とタイミングが合っていたかどうかをお聞きします。
それに年齢を考慮すると、だいたいの治療方針が決まってくるのではないかと思います。
不妊治療は初めてでまったく検査をしていないという方は、月経周期の低温期にFSHLHなどのホルモンを調べる血液検査、子宮や卵巣の状態をみる超音波検査、卵管の通りを調べる子宮卵管造影検査、排卵の時期にヒューナーテスト、高温期に黄体機能を調べるホルモン検査、さらに男性の精液検査も実施してから検討します。
1周期をかけて行いますが、これらの基本検査をすることで、治療の具体的な方向性が見えてくると思います。

タイミング療法の考え方

その後はどのような形で治療を進めていきますか。
俵先生 年齢にもよると思いますが、半年以上、月経周期の体温上できちんとタイミングがとれている場合は、タイミング療法を続けてもあまりプラスになることは考えられないので、ステップアップのご提案になると思います。
また、子宮卵管造影検査を初めて受けた方の場合は、検査をすると卵管の通りがよくなって妊娠する方が結構いらっしゃるので、検査後、タイミング指導をして様子をみます。
タイミング指導はどのくらいの期間続けるのでしょうか。
俵先生 これも患者さんの年齢によって期間が変わってきます。
30 代前半の方なら半年、 30 代後半~ 40 歳くらいまでの方なら3カ月程度を目安とします。
現在 43 歳のわかぶーさんなら1~2回でしょうか。
43 歳という年齢ですと、そのくらいの速いペースでステップアップを考えていかなければいけないと思います。

人工授精の考え方

タイミング療法で結果が出なければ次は人工授精へ、というステップに進むのですか?
俵先生 当院では、人工授精はヒューナーテストや精子の所見が悪い方にご提案しています。
それ以外の方には、タイミング療法と人工授精はそれほど妊娠率に違いはないので、そのことをお話ししてご本人の希望があれば行っています。
どちらの療法も漫然と続けるのではなく、「一般不妊治療は半年」と決めたら、その期間内にタイミング療法と人工授精をスケジューリングし、時間を無駄にしないように治療を進めていきます。

二人目不妊の考え方

わかぶーさんは2人目不妊ということですが、その場合も治療方針は変わりませんか?
俵先生 2人目のお子さんができないのは、年齢や新たな問題の発生など、いろいろな原因があるかもしれませんが、不妊期間が長いということであれば原発性不妊と同じ条件と考えて治療方針を立てます。
検査も一通り行いますし、ステップアップも年齢を考慮しながら、1人目の不妊の方と同様のペースで考えます。
ただ、2人目不妊の方の場合、すでにお子さんがいらっしゃるせいか、体外受精までは進まないという方が多い印象を受けますね。
ですから2人目不妊の治療計画を立てる際は、患者さんがどんな気持ちで治療に臨んでいるかをよく確認することが大切ではと思っています。

仕事と治療の両立

わかぶーさんは仕事をされていて、治療と両立できるのか心配されているようですが……。
俵先生 わかぶーさんにとって一番大切なのは〝時間〟なのではないでしょうか。
少し厳しい言い方になってしまうかもしれませんが、年齢から言えば、この半年が重要です。
お仕事のことも気になると思いますが、できれば短期集中で治療を進めたほうがいいと思います。
よく考えて、治療に集中すると決めた場合は、一般不妊治療より少しでも妊娠率の高い体外受精にトライすることをおすすめします。
体外受精では、時間的に融通をつけなければいけないのは採卵と移植です。
あとの診察については、お仕事の合間に受けることができるかもしれません。
卵巣刺激の方法なども、クリニックに相談すればある程度調整は可能だと思います。
しかし、クリニック側でも可能な範囲で協力してもらえると思いますが、治療上、いい受精卵をベストな時期に移植することが最優先なので、譲れない部分もあるということをご理解いただきたいと思います。
自分にとって何が一番重要なのか、意志をもって治療に臨むことも大切ですね。
俵先生 そうですね。最終的に治療方針を決めるのは患者さん自身です。
ご自身の卵巣機能などをよく理解したうえで、どこまで治療するのかをしっかり考えていただくのがいいですね。
※FSH:卵胞刺激ホルモン。卵巣に作用して卵胞の形成・発育を促す。
※LH:黄体形成ホルモン。卵胞刺激ホルモンとともに卵子の発育や排卵、黄体の形成を促す。
※子宮卵管造影検査:子宮や卵管の通過性、 構造上の異常の有無を調べる。腟から子宮にカテーテルを挿入し、卵管へ造影剤を注入し、その流れ方を観察する。
※タイミング療法:基礎体温や尿中または血中のエストロゲンや黄体化ホルモンを測定して、排卵日を予測し、その排卵日前後に性交渉を行う、不妊治療の1つ。
※人工授精:採取した精液を子宮内に注入し、 受精を促す方法。採取した精液をそのまま使う場合と洗浄・濃縮した精液を注入する方法がある。
※体外受精:卵巣から卵子を取り出し、体外で受精させること。排卵誘発、採卵、媒精、そして胚培養、胚移植といっ た段取りがとられる場合がある。
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