妊娠ストーリー新しい未来との出合い vol.2 ~後編~

不妊治療、離婚、そして新たなスタート…… いろいろな経験をしてきたからこそ 自然と相手を思いやれるように。

これからも笑顔で暮らしていこうね。

中学生の頃に出会い、長い間、友人関係だったピカさんとサトシさん。

お互いに離婚を経験し、自然と二人は一緒にいるように。

そして、以前はうまくいかなかった不妊治療もスムーズに進み始めます。(前編はこちら)

離婚を経て始まった 新たな生活

24歳の時に4歳年上の男性と結婚したピカさん( 41 歳)。

父の死を機に子どもを望みますが、しばらく経っても妊娠の兆候は現れず、不妊治療をスタート。

治療を続けるうちに、二人の気持ちはどんどんズレていき、やがて離婚という悲しい結末に……。

それでも愛し合っていたピカさんとご主人は離婚した1年後、ピカさんが33 歳の時に再び籍を入れます。

しかし、二人の間に一度空いてしまった溝を埋めることはやはり難しく、6年後の 39歳の時、ピカさんは2度目の
結婚生活を諦め、彼と決別することを選択します。2つバツがついてしまったピカさん。

別に悪いことをしたわけではないけれど、やっぱり周りの目が気になったといいます。

「前の主人と暮らしていた家にそのまま住めるはずだったのですが、いろいろな事情でダメになってしまったんです。

ご近所の目が気になるから、実家にも戻りにくいし……。

離婚後、住むところがなくなってしまったんですね」

途方に暮れたピカさんは、中学生の頃からの友人であるサトシさん( 42 歳)に相談。

「サトシとは中学の頃に一度おつき合いした仲。

彼の前の奥さんも私の前の主人もお互いに知っいて、結婚してからも交流を続けていました」

お互いバツ2同士で、ピカさんのこれまでの事情もよくわかっているサトシさん。

「深い意味もなく、じゃあ、一緒に住んじゃおうかー、ということになったんです」

ルームシェアをする友達同士という感じ。

気心が知れているピカさんと同居することに、サトシさんもまったく抵抗を感じなかったそうです。

やっぱり子どもが欲しい! 体外受精に望みをかけて

仲の良い友人というスタンスに変わりはなかったけれど、半年、1年と一緒に暮らすうちに、二人はお互いにかけが
えのない存在だと気づきます。

「恋愛とはちょっと違うかもしれないけれど、サトシは一生の茶飲み友達。

もう 30 年も一緒にいる夫婦みたいですが、けじめをつけるために籍を入れることにしたんです」

その時、ピカさんは 40歳。

妊娠にはギリギリといわれる年齢になっていましたが、前の結婚でどうしても叶えられなかった、「子どもを産みたい」という気持ちが再び心にわいてきたといいます。

「その頃、月経不順があって、生理が止まらない時期があったんですね。

婦人科で診てもらうことになり、ホルモンの検査も一応受けたのですが、その結果にびっくり!以前の不妊治療ではずっとホルモンのバランスが悪いといわれていたのですが、今はとても状態が良く、先生から“これならすぐに妊娠できちゃうよ”って言われたんです」

ピカさんが前の結婚生活でトライした不妊治療は人工授精まで。

「前は、まだ年齢が若かったのに、一度も陽性反応は出ませんでした。

今の年齢なら自然妊娠はおろか、人工授精でも難しいかなと思い、初めから体外受精を視野に入れた不妊治療をしようと考えたんです」

「できるところまでやってみてもいいんじゃない?」というサトシさんの言葉にも後押しされ、ピカさんは体外受精も受けられる不妊治療専門クリニックを受診しました。

「不妊治療の検査を一からやり直したら、左の卵管が詰まっていることがわかりました。

“早く赤ちゃんを”という気持ちが強かったので、片方の排卵を待ってチャレンジするよりも、最初から体外受精を受けることを望みました」

40 歳という年齢も考慮し、 排卵誘発は低刺激法に。クロミッド ®の飲み薬+注射で、6個の卵子が採れました。

そのうち5個が受精して、全部胚盤胞になりました。

やはりホルモンの状態が良かったのか、この年齢で優秀な結果だったかもしれませんね。

すぐにでも妊娠できると思って移植に臨んだのですが、1回目は新鮮胚移植で不成功。

2回目は凍結胚盤胞を自然周期で戻したのですが、それも着床には至りませんでした」

念のため、ピカさんは不育症の検査を受けることに。

ナチュラルキラー細胞の値が少し高く、自分の体を守るために受精卵を攻撃してしまう可能性があるかもしれないと考え、それを抑えるための注射も打ちました。

「早く、早く!」と焦る気持ちを抑えながら、次の移植を待っていたというピカさん。

「3回目はホルモン補充周期で凍結胚盤胞を戻しました。

それでやっと、夢にまで見た陽性反応が出たんです!」

相手を想うからこその 自然な思いやり

クリニックに通い出してから5カ月後の妊娠判定。実は二人は、妊娠しなくても、採卵は1回だけにしようと決め
ていたそうです。

「もう彼女に痛い思いをさせたくなかったので、2回目はやらせたくなかったんです。

4日に1回注射を打ちに行くとか、調子が悪くなってつらそうにしているのを見ていたので。

僕が代わってあげたいけれどそれはできない。

横で見ていることしかできないのが歯がゆいですよね。

前の結婚でもピカは4年間不妊治療をしている。

これ以上体を痛めつけてほしくなかったんです」(サトシさん)

治療中、サトシさんはピカさんになるべく負担をかけないよう、気遣ってくれたそう。

「すごく自然体で、頼まなくても病院の送り迎えをしてくれたり、私の調子が悪い時はサッと台所に立ってくれたり。

自然にそういうことができる人なんですね」

サトシさんは前の2回の結婚で3人のお子さんをもうけているので、子づくり・子育てではピカさんの大先輩。

「僕は、前の子どもの時に立ち会い出産を経験しているので、妊娠はもちろん、出産のつらさやすごさを知っています。

女の人は強く尊い。

男は何もできないから、自分ができることはしてあげたいと思います。

“やらなきゃいけない”じゃなくて、“やってあげたい”という気持ちですよね」(サトシさん)

ピカさんは、妊娠判定日にはいつもサトシさんの携帯電話にメールで結果を報告していましたが、陽性が出たその
日は直接話したくて、メールを入れませんでした。

「嬉しいことかも、というより、おかしいな、事故にでも遭ったんじゃないかと思って心配しましたね。

後で妊娠を聞いた時は、感動というより、“えーっ、ホント?”と驚きのほうが強かったのを覚えています」(サトシさん)

40 代のこれからが 人生の再スタート!

その驚きは、今は確かな喜びに。二人の赤ちゃんはピカさんのお腹の中で順調に育ち、予定日は来年早々です。

「二人とも過去にはいろいろあったけれど、 40 代からが本当の人生のスタート。

サトシと、生まれてくる赤ちゃんとともに、これからも変わらず、家族で毎日笑って暮らしていきたいと思っています」(ピカさん)

(完)

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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