卵の受精率や質の悪さに悩んでいます

体外受精(IVF)で、なかなかいい結果が得られない。 頻繁に語られる悩みを、セントマザー産婦人科医院の 田中温先生にぶつけてみました。

田中 温 先生 順天堂大学医学部卒業。 越谷市立病院産科医長時 代、診療後ならという条件 付きで不妊治療の研究を許 される。度重なる研究と実 験は毎日深夜までに及び、 1985 年、ついに日本初 のギフト法による男児が誕 生。1990年、セントマザー 産婦人科医院開院。不妊 治療のトップリーダーとし て、医師たちからの信頼も 厚い。オフは体力作りのた めに、ジョギングをしてい るとか。AB型・やぎ座。

ドクターアドバイス

どの排卵誘発法を選んでいるかが、 妊娠を左右するんです。

オリーブさん(31歳)からの投稿 Q.8回のIVFで、採卵した卵の数は19 個、受精したのは8個、 移植した数は4個でした。 精子の状態はよいのですが、受精率が悪いです。 顕微授精(ICSI)することを相談しましたが、 その必要はないと言われました。 精神的にも経済的にも限界を感じています。 このまま回数を重ねるしかないでしょうか。私にできることはありますか?

排卵誘発法の変更

IVFをしても、なかなか結果を得られないという相談も多いのではないでしょうか?
田中先生 そうですね……。この方の場合、卵の作り方に問題があるのでは? 8回IVFをされていますが、毎回、同じ排卵誘発法で採卵されているのではないでしょうか。解決策としては、まず、排卵誘発法を変えてみること。さらに、受精率が悪いのなら、顕微授精もしてみるべきだと思います。
医師に相談して、他の排卵誘発法を取ってもらえないのなら、思い切って病院を変えるというのも一つの方法だと思います。
排卵誘発法とおっしゃいましたが、どんな方法があるのですか?
田中先生 排卵誘発法は、大きく二つ。一つは、積極的によい卵をたくさん作る方法。この方法には、 ※グ法、※ ョート法といったGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)アゴニストを用いる方法と、
※ロング法:月経前の黄体期からGnRHアナログ製剤を使用し、月経3日目からHMGを7日間連続して筋肉注射する排卵誘発法。 ※ショート法:月経開始 日からGnRHアナログ製剤を使用し、月経3日目からHMGを7日間連続して筋肉注射する排卵誘発法。
GnRHアンタゴニストを用いる方法があります。
もう一つは母体への刺激を少なくして、排卵数を少なくして採卵する方法です。
どちらも正しいのですが、たくさん卵を採る方法のほうが妊娠率は自然と高くなるでしょうね。たくさん採れたら凍結もできるし。いい卵は1個しか採れないというわけではないので、1度になるべくたくさん作ったほうがいいと思います。
そのために、これまでたくさんの排卵誘発法が開発されてきたんですから……。
不妊症の治療の歴史は、排卵誘発法の歴史といってもいいほどです。この 20 数年間、排卵誘発法のいろいろな研究が重ねられてきました。

排卵誘発法の選択基準

どうやって排卵誘発法を選ぶのでしょうか?
田中先生 私たちの病院では、まず卵巣の中の ※胞状卵胞の数やホルモンを調べ、その人に一番合う排卵誘発法を選びます。だいたいその検査で、どの方法がフィットするかはわかるのですが、1度目でだめだったら、2度目、3度目は他の排卵誘発法にしてみるなど、試行錯誤しながら一番よい方法を見つけていきます。
※胞状卵胞:1個の成熟卵胞になる前段階の卵子。
どの排卵誘発法を選ぶかは、とても重要なポイントなんですね。
田中先生 そのとおり。排卵誘発というのは非常に重要なんです。妊娠というのは、卵が採れた時点で決まっている。卵の質でほぼ決まると思うんです。
さらに言うと、卵の質は、どの排卵誘発法を選んだかで決まる。いかにその人に合う排卵誘発法を選んで決めてあげるかが、我々の腕の見せどころです。だから、ワンパターンで8回も採卵するというのは、あまり考えられないですね。

抗精子抗体と受精率

オリーブさんは、抗精子抗体の検査をしたところ強陽性ということですが、それと受精率が悪いことは関係がありますか?
田中先生 関係はあると思います。だからこそ、顕微授精が必要なんじゃないかなぁ。  
例えば、女性の体の中に抗精子抗体というのができると、精子が卵管にたどり着くまでに精子が上昇できなくなり、卵子と巡り会えないということになってしまいます。だから、普通は子宮内に直接精子を入れる人工授精をすすめるんです。それでも受精しない場合は、IVF、それでもだめなら、顕微授精へとステップアップしていきます。
この方の場合、受精率が悪いのならば、早く顕微授精をされたほうがいい。間違いなく、確率は上がると思います。
先生のところには、このような悩みや質問、そして、セカンドオピニオンを求めてくる患者さんも多いのではないでしょうか?
田中先生 多いですね。メールも毎日 30 通ぐらいかな。必ずその日中に返事を書くようにしています。関東からの患者さんたちからの相談も多いので、直接乗ってあげられるように、月に一度、東京にも行っているんですよ。
特に多いのは、男性不妊症の相談です。半分くらいが無精子症の質問かな。この分野に関しては、当院でしかできない技術がありますから
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。