【Q&A】AGAの治療薬は精液検査に影響ある?~寺井先生【医師監修】

ゆきさん(31歳)

精液検査について、泌尿器科の医師には「精子数が多いため、運動率や正常形態率は低いが自然妊娠の可能性は十分にある。サウナをやめるという生活習慣改善で上がるのでは?」と言われましたが、3ヶ月経過した現在も上記結果で大きく変わらなかったです。
AGAの薬を服用中ですが、その影響もあるのでしょうか。

AIで調べてみると、自然妊娠は時間がかかるタイプとの見解でした。そこで、不妊治療専門の先生の見解を伺いたいです。
自然妊娠を期待して問題ないでしょうか。
どのタイミングで人工授精を考えていくべきか、精子の改善のためにできることを教えてください。

泌尿器と男性不妊のクリニックの寺井先生に聞いてきました

【医師監修】泌尿器と男性不妊のクリニック 寺井一隆 先生 
2002年順天堂大学医学部卒。杉山産婦人科の生殖医療科(新宿)などへの勤務を経て、2022年4月に泌尿器と男性不妊のクリニックを開院し、院長に就任。全国でわずかしかいない泌尿器科の男性不妊専門医として多くの不妊に悩む男性患者さんの気持ちを汲み取った診察を行う。日本生殖医学会生殖医療専門医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

相談ありがとうございます。男性不妊を専門とする泌尿器科医の視点から、ご主人の精液検査結果を踏まえて、ご質問に丁寧にお答えいたします。
まず、ご主人の検査結果の全体的な印象ですが、精子の「濃度(107.4百万/mL)」は基準値を大きく上回っており、非常に素晴らしい数値です。一方で、「運動率(29%)」と「正常形態率(2%)」がWHOの基準値(運動率42%以上、正常形態率4%以上)を下回っています。 つまり、「全体の数は十分に足りているけれど、元気に動いている精子や、形の綺麗な精子の割合が少し寂しい状態」と言えます。

これらを踏まえ、5つのご質問に回答します。

① 精子の運動率や正常形態率の改善方法について教えてください。

精子の質(運動率や形態率)を改善するためには、「精子の製造工場である精巣の環境を整えること」と「酸化ストレス(精子を傷つける有害な酸素)を減らすこと」が重要です。まずは工場に異常がないのか、医療機関で超音波検査と血液検査を行うことが重要です。
• 医療機関でのチェック(精索静脈瘤の有無): 精子の運動率や形態率が低い原因として、最も頻度が高いのが「精索静脈瘤」です。これは成人男性の約15%、男性不妊を疑う方の約40%に見られます。泌尿器科(男性不妊外来)を受診し、超音波検査で静脈瘤がないか確認することをおすすめします。もし見つかれば、日帰り〜短期入院の手術で劇的に改善する可能性があります。

• 抗酸化サプリメントの活用: 精子は酸化ストレスに非常に弱いです。コエンザイムQ10、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、カルニチンなどの抗酸化作用のあるサプリメントを摂取することで、運動率や形態率の改善が期待できます。

② AGA(男性型脱毛症)の薬が精子に与える影響について教えてください。

AGAの治療薬(フィナステリド/プロペシア、デュタステリド/ザガーロなど)は、精子の数や運動率を低下させる可能性があるため、妊活中は原則「休薬(服用を中止)」することをお勧めします。
これらの薬は男性ホルモンに働きかけるため、人によっては精液所見(特に濃度や運動率)を著しく悪化させることがあります。幸いなことに、薬を中止すれば数ヶ月(精子が新しく作られる約3ヶ月のサイクル)で元に戻る・改善することが多いです。もし現在ご主人が服用されている場合は、一度主治医や当院にご相談いただき、妊活期間中だけでも休薬を検討してください。

③ 自然妊娠を期待して良いか、先生のご意見をお聞かせください。

結論からお伝えすると、「可能性はゼロではないが、自然妊娠だけにこだわりすぎて時間を費やすのはもったいない」というのが専門医としての率直な意見です。
ご主人の精子は「濃度」が非常に高いため、運動率が低くても「元気に動いている精子の総数」である程度カバーできています。しかし、不妊期間が半年であること、そして奥様のAMH(卵巣予備能)が2.13であることを考慮する必要があります。31歳というご年齢から見ると、AMH 2.13は「極端に低いわけではないが、少し卵子の在庫の減少が早めに始まっている可能性」を示唆しています。 年齢的にはまだお若いですが、卵巣の予備能を考えると、自然妊娠を待ち続けるよりも、少し早めのペースで治療を進めた方が安心です。

④ 人工授精(AIH)を考えるべきタイミングについてアドバイスをお願いします。

まさに「今」が、人工授精へのステップアップを検討するベストなタイミングです。
実は、ご主人のような「濃度は濃いが、運動率や正常形態率が低い」というタイプは、人工授精のメリットを最も受けやすいのです。 人工授精では、採取した精液をそのまま子宮に入れるのではなく、精子を洗浄・濃縮し、「元気で形の良い精子だけを選別して集める」という作業を行います。つまり、ご主人の豊富な精子の中から、エリート精子だけをピックアップして奥様の子宮の奥に直接届けることができるため、現在の課題をダイレクトにカバーできます。タイミング療法を半年続けられているので、次の一手として非常に合理的です。

④ サウナ以外に精子改善のための生活習慣の提案を教えてください。

精巣は熱に弱いため、サウナを避けるのは大正解です。それ以外では、以下の生活習慣を意識してみてください。

●下着はトランクスを選ぶ: ブリーフやピタッとしたボクサーパンツは精巣を体に密着させ、温度を上げてしまいます。風通しの良いトランクスがベストです。
●長時間の座り仕事・膝上PCを避ける: デスクワークで座りっぱなしだと精巣が圧迫されて熱を持ちます。1時間に1回は立ち上がりましょう。また、ノートPCを膝の上で操作すると、PCの熱がダイレクトに伝わるので厳禁です。
●禁煙(最重要): タバコは精子のDNAを傷つけ、運動率を著しく低下させます。電子タバコも同様です。
●十分な睡眠と節酒: 睡眠不足や過度な飲酒は、男性ホルモンの分泌を低下させます。

 

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