【Q&A】ホルモン補充周期での移植日について~藤本先生【医師監修】

えりんぎさん(32歳)

5回移植して2回陽性でしたが、2回とも心拍確認前の稽留流産でした。
前医でエストラーナテープ、ウトロゲスタンで2回陽性、1回陰性。現在の病院ではエストラーナテープ、ワンクリノンで2回陰性でした。
私にはウトロゲスタンの方が合っているのでしょうか?また、前医ではD17~19で移植、現在の病院はD21で陰性なので、もう少し早めてもらったほうがいいのでしょうか?

【医師監修】さっぽろARTクリニックn24 藤本 尚先生
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
ウトロゲスタンとワンクリノンはどちらも膣から吸収されるプロゲステロン製剤で、体外受精における胚移植の際には、ホルモン補充周期での治療の際には必須であり、新鮮胚移植や自然周期での凍結融解胚移植においても使用する場合があります。
現在日本で使用できるプロゲステロン膣座薬は4種類あります。用法や容量は薬剤により異なりますがそれぞれの薬の製剤吸収のさせ方の違いによるもので、1日量での効果はどの製剤も差はないということが薬剤が認可される時点で検証されています。そのため1日量の価格はどの製剤も同じに設定されています。
なので、どの製剤が優れていて、どの製剤が劣っているというものではありません。4製剤はそれぞれに特徴があるので、先生の好みもありますし、患者さんの好みもあります。

またホルモン補充周期での凍結融解胚移植における一番のメリットは移植日をある程度自由に”決められる“というのがメリットです。よく患者さんに”一番いい日にしてください“と言われるのですが、僕は”一番いい日というのはなくて、いつにでもできるというのがこの方法のメリットなんですよ“とお話しています。
なので、子宮内膜がある程度基準に足りる厚みがある(一般的には7mm以上)ならば、胚移植日が早い遅いは妊娠の結果に影響しないと言えます。

エリンギさんは2回の稽留流産を経験されているので定義的には反復流産(2回の流産既往)となります。
流産の原因の多くは胎児側の原因(一番は染色体異常など)となりますが、一部に母体側の原因となる方もいます。過去の流産の原因を調べる方法はありませんが、反復流産ということであれば不育症の検査を行い母体側の流産原因がないかを調べるというのも選択肢としてはありますので、主治医の先生と相談してみるといいかもしれません。
胎児側原因の流産を予防する方法はありませんが、母体側原因の流産については原因がわかれば対策がとれるものもあるからです。

エリンギさんの年齢を考えると、保険での胚移植はあと1回であることが予想されます。あと1回の胚移植を少しでも高い確率で行うためにできることを考えると、胚盤胞の2個移植になります。今までされていたかは記載がないのでわかりませんが、1回あたりの妊娠率を上げる方法としてはこれになります。一方で2個移植では双胎のリスクがあることも忘れてはいけません
膣座薬に違いはありませんが、妊娠経験のある慣れた薬剤ということであればウトロゲスタンしようでいきましょう。移植日は気にせずに自分の都合の良い日で決定してよいと思います

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