【Q&A】セントロメア抗体陽性での保険診療~藤野 祐司先生【医師監修】

makkiyさん (42歳)
セントロメア抗体陽性なのでプレドニンを服用しながらの採卵で、自費診療しか選択肢がありません。
それで3年続けてきましたが、お金が底をつきていて続けたくても続けることができません。
42歳になり、保険診療で通院できるのはあと1年。
セントロメア抗体陽性でも、プレドニンを使わないなど保険診療でできる限りを尽くしたいと思い、受けてくださる病院を探しに探しているところです。
患者がこのように希望していても、保険診療内での顕微授精はしてくれないのでしょうか?

藤野 先生に聞いてみました。

【医師監修】ウィメンズクリニック本町  藤野 祐司 先生
大阪市立大学医学部卒業。藤野婦人科クリニックの院長を務めた後、平成28年にウィメンズクリニック本町を開院。
ご夫婦・ご家族の“夢”の実現に向かって、希望を叶えられるよう、患者さんの状況に合わせた診療を提供することを大切にしている。
日本産婦人科学会専門医、生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●セントロメア抗体は不妊にどのような影響がありますか?
セントロメア抗体とは、細胞核のセントロメア(卵細胞の減数分裂など受精・胚発育に必須な機能を果たす紡錘体に存在する)に対する抗体で、この抗体がセントロメアに作用して細胞分裂や減数分裂という受精卵の発育に欠かすことができない機能に異常を引き起こすと言われています。
受精卵では、卵子由来の核と精子由来の核の2個の核(前核と言います)が形成されること通常なのですが、セントロメア抗体が陽性である場合は、前核が3個も4個も形成される異常受精(多核)胚細胞となる頻度が高いことが知られています。体外受精・顕微授精において前核が3個以上ある場合は妊娠する可能性が無いので胚移植することが出来ません。
●セントロメア抗体陽性の患者さんが保険診療で不妊治療を受けるには、どのように治療や薬を選択すればよいですか?
ステロイド(プレドニン)内服で受精卵の多核化が軽減できます。しかしながら、健康保険適用での体外受精実施においてはステロイド内服が今のところ認められていません。また、柴苓湯内服がどこまで効果的かは判断できません。
●今後の治療についてアドバイスをお願いします。
体外受精・顕微授精実施において、セントロメア抗体陽性の場合は正常受精率が通常の半分以下になると言われています。また、多核胚(妊娠には結びつかない受精卵)になる可能性が5倍〜10倍と高くなるとも言われています。
現在のところ保険診療で体外受精・顕微授精を実施する場合は、プレドニンが保険適用外のため処方出来ませんので、胚移植可能な正常受精胚の数が極端に少なくなるというリスクをご了解いただければ、保険診療で治療が可能だと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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