5回移植しているのに一度も着床に至っていません

相談者 : ばんびさん(35歳)人工授精6回、体外受精5回(うち顕微授精1回)を実施しました。トリオ検査も実施し、結果を待って4、5回の移植を行いましたが一度も着床に至っていません。体外受精2回目からは2個胚移植を実施。治療のなかで卵胞が育たず、採卵ができないこともしばしばありました。また、出産歴があり、当時(30歳)は人工授精1回目で妊娠。主治医は現状できる対策はすべて行ったとのこと。転院すべきでしょうか。保険診療、先進医療内での治療のみを考えています。
あいウイメンズクリニック伊藤 哲 先生 順天堂大学医学部卒業、同大学院修了。順天堂大学医学部産婦人科学教室講師、国際親善総合病院産婦人科医長を経て、1999 年あいウイメンズクリニック開院。日本生殖医学会生殖医療専門医
トリオ検査をされて着床の窓のずれ、ラクトバチルス菌0%であることがわかったそうですが、これについてどう思われますか。
伊藤先生●子宮内フローラ(子宮内の細菌叢)の状態を調べられたと思うのですが、子宮内に存在している細菌の中でも善玉菌であるラクトバチルス菌の割合が多いほど、着床や妊娠に良い影響を与えるといわれています。90%以上あれば正常と考えられていますが、ばんびさんは0%という結果だったとのこと。まったく存在していないというのは少し疑問に感じますね。数値に誤差があったとしても少ないことは間違いなかったと思われます。
 結果を受けてラクトバチルスのサプリメントを摂られたようですね。当院でも子宮内のラクトバチルス菌が少ない方はラクトフェリンのサプリメントを飲んでいただいて、1カ月後くらいに再検査を実施。結果、30%くらいの方でもほぼ正常な割合まで改善されています。ばんびさんは再検査されたのでしょうか。それが少し気になるところです。
 着床の窓のずれに関しては、そのずれを考慮して移植する時期を調整していけばいいので、大きな問題はないかと思います。
着床不全を解消するために、ほかにできる検査はあるのでしょうか。
伊藤先生●ばんびさんのように複数回胚を移植しても一度も着床に至っていないという方には、血液を採って血清Th1/Th2比を測定する検査も有効だと思います。
 これは受精卵に対する免疫寛容を確認する検査ですが、T h1とT h2の比が大きい人は免疫のバランスが崩れているので、受精卵を異物として感知してしまい着床しづらくなることも。
 異常が出た場合は出産前まで薬を服用して免疫の異常を抑えていきます。
 この検査は保険診療で不妊治療をしていても受けることはできますが、検査料や薬代は自費となります。治療により着床・妊娠に至っている方もいるので、一度受けてみてはいかがでしょうか。
転院を考えたほうがいいですか。
伊藤先生●どの施設でも同じ治療が受けられるのが保険診療の定義なので、保険適用内のみで治療をされるということであれば転院しても治療内容や使える薬剤は変わらないと思います。ただし、排卵誘発法の選び方などは施設によって方針が異なる場合があるので、それを考慮するなら転院を考えてられてもいいかと思います。
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