【Q&A】ステップアップについて~中島先生【医師監修】

じぇいくさん(31歳)2021年7月より妊活をしています。
タイミング法を計10回、人工受精を3回試しましたが、今月も生理がきてしまいました。
AMHが2.04(2023年2月検査)と低いため、早めのステップアップ=体外受精も検討しています。
かかりつけの病院では、体外受精はやっていないため転院が必要です。
かかりつけの医師は「もう少し人工受精にトライしてみてもいいんじゃない?」ということでしたが、どれくらいまでトライすればいいのでしょうか。
先が見えず、少しでも確率の上がる体外受精にステップアップした方が、自分は精神的にも負担は少ないのかと思っています。
ただ離島在住のため、転院するには県外での受診が必要になりそうで、仕事の都合などから今一歩踏み出せずにいます。
今までの治療歴から、あとどのくらい人工受精にトライすべきかご教授ください。
<その他>
私は4年ほど前から、子宮内膜症チョコレート嚢胞がありましたが、チョコレート嚢胞䛾腫れはほとんど小さくなって、今はなくなっていると言われました。
【医師監修】空の森KYUSHU 中島 章 先生 鹿児島大学医学部卒業。久留米大学病院産婦人科、国立成育医療センター周産期診療部不妊診療科(現・国立成育医療研究センター)などを経て、空の森CLINIC(沖縄県)立ち上げより参加。2022 年4 月、地元久留米市に空の森KYUSHU 開院、院長就任。サッカー観戦が趣味で、特にアビスパ福岡を応援しているそう。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

まずはジェイクさんの情報を整理していきます。

31歳で不妊治療歴が約2年になります。不妊治療内容としては一般不妊治療でタイミング法や人工授精を1年以上継続していることに対しては、もう十分であろうと捉えられます。子宮卵管造影では、卵管の疎通生は異常なしとのことですが、子宮のサイズに関してはそれだけでの評価は難しく、超音波、必要に応じてMRIなどによる形態評価を行う必要があるかもしれません。子宮卵管造影で子宮サイズが小さく見える場合には、単純にX線の撮影方向に対して子宮向きがよくないだけかもしれませんが、まれに子宮内腔の形態が先天的に弓状やT字型になっていることがあり、子宮内膜が厚くならないために妊娠しづらい可能性もあります(が、不妊治療の専門医の見解でなければ、あまり今のところは気にする必要はないと思います)。

これまでの精液所見にもややばらつきがあり、男性因子が影響している可能性は否定できません。

また、チョコレート嚢胞が本当にあったのか?については不明ですが、少なくとも見えなくなっているのなら今のところ心配いらないでしょう。

現在、生殖補助医療の保険診療化に伴い、経済的な負担が大きく軽減していることもあり、若い夫婦であっても十分に治療を考えていけるような環境が整ってきました。生殖補助医療による治療へ進むことで、今までわからなかった不妊の原因が見えてくることもあります。

確かにAMHの値は年齢における平均より低い値であり、あまり人工授精に拘らずに生殖補助医療による治療へ進んでも良いのではないかと思います。職場との関係においても、採卵にむけての卵巣刺激(排卵誘発剤)はペン型の在宅自己注射ができますので、PPOS法、またはshort法とよばれる治療プロトコールであれば通院日程を組みやすいと思います。治療に入る前月あたりに、ある程度の通院日程を主治医に聞いておいて、職場とのシフトの調整を行なっていけば、離島からの通院でも十分に可能と考えます。ご主人の精子を液体窒素タンクに凍結保存しておけば、尚のこと治療スケジュールも組みやすくなると思います。

もしまだ一般不妊治療を続けるのならば、一旦専門施設の初診の予約をとった上で、(数ヶ月待ちになる可能性がありますので)その受診までの期間にアロマターゼ阻害剤を使いながら、人工授精を試しておくとよいかもしれません。月経周期は27日で、クロミッドの内服をしているとのことでしたが、2年近く飲んでいるのならば、かえってクロミッドにより子宮内膜や頸管粘液への負の効果が出る可能性もあり、一度自然排卵周期やアロマターゼ阻害剤などの内服に切り替えることも検討してよいと思います。

またBMIが27ありますので、食事療法(タンパク質・食物繊維をしっかりとって、炭水化物を控えめに)、運動療法(筋トレ、ウォーキングなど)によりダイエットしてみるのも妊娠率を高めてくれる可能性があることを記しておきます。治療開始に向けて今のうちに頑張っておきましょう。

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