移植のホルモン補充がうまくいきません

移植のホルモン補充で、 卵胞を育たせず内膜も 厚くする良い方法は?

操 良 先生 岐阜大学医学部卒業。岐阜大学附属病院で8年間、不妊専門外来を担 当し、1992年には岐阜県下初の体外受精に成功。女性ホルモンに関す る研究成果が認められ、平成9年度に岐阜県医学研究奨励賞を、平成 11年に日本内分泌学会で研究奨励賞を受賞。現在、操レディスホスピタ ル院長。医学博士。日本生殖医学会認定生殖医療専門医。忙しい合間 を縫ってストレス解消のため、最近また本を読み始めたという操先生。ジャ ンルはもっぱらミステリーで、エラリー・クイーンなど正統派ミステリーを愛し、 これまでに3000冊以上も読破されているとか。
コイさん(33歳)からの相談 Q.ホルモン補充療法を行っていますが、生理12日目で16㎜の卵胞が出現 (医師からは卵胞ではなく消えていくと言われました)し、内膜も4.6㎜と薄い ため様子を見ました。生理18日目に卵胞は確認されませんでしたが、採血の 結果排卵後でした。リセットして次の周期に入ったのですが、生理 2 日目で 6 ㎜の卵胞があり、エストラーナテープⓇも前回と同じ2枚のままと医師から指示 がありましたが、不安もあり3枚に増やしてもらいました。テープのほかに飲 み薬など、卵胞が育たずに内膜が厚くなる方法は何かありますでしょうか? 医 師からは何の提案もなく不安で、同じ失敗をしたくありません。

ホルモン補充周期

コイさんの状況をご覧になって、どのように思われますか?
操先生 ホルモン補充周期をやっていても卵胞が成長してしまうということですよね。
通常のホルモン補充であれば“排卵は起こらない”というのが普通なんですが、コイさんの場合はLHFSHが完全に抑えきれていないので育ってしまうわけです。
内膜も 4.6 ㎜とかなり薄いですね。
7 ㎜未満で も着床する例はありますが、最低 7 ~ 8 ㎜は欲しいところです。
排卵を起こさせないようにするのであれば、エストロゲンの量を増やすことです。
コイさんがされたようにエストラーナテープⓇの量を増やしたり、あとは他のプログラムですね。
スプレキュアⓇなどGnRHアナログを使用して、そのうえでホルモン補充をやるという先生もいます。
それであれば理屈上、絶対に排卵は起こらないのでそういう方法もあります。
また、卵胞が育ってしまった場合でも、排卵をさせてその周期に胚移植するという先生もおられますね。
ホルモン補充移植では、コイさんのようなケースは起こりうることなんですね。

ガラッと変えてみるのも

操先生でしたら、どのような治療方針にされますでしょうか。
操先生 先ほど言ったようにエストロゲンの量を増やすというのもひとつの手ですし、あとは方法を変えます。
質問にもあるように、ジュリナⓇなどの内服薬とか、今は施設によってはル・エストロジェルⓇといった塗布薬も使われています。
それから、周期によっても結果が変わってきますよね。
同じ量でエストロゲンの補充をしていても規定量まで上がらなかったり。
それで次の周期にはちゃんと上がっていたり、逆の場合も。
どうしてなんだろうということも結構あります。
当院では、基本的にはエストラーナテープⓇから始めて、合わなければ内服薬に替える方法をとっています。
内膜が厚くなっていなければ増量したり、もう少し引っ張って内膜を厚くしてから戻します。皆さんたぶん、そういうプログラムでやってらっしゃるはずです。
もうひとつは、まったく自然周期で行うという手もありますよね。
コイさんは 28 日周期で生理不順も ないようなので、きちんと排卵が起こっていて子宮内膜の厚さも自然周期で問題なければ、ホルモン補充を使わずに胚移植するという考えもあります。
質問内容を見る限りでは、不妊の原因が不明で体外受精までいった経緯がよくわかりませんが、 33 歳なので年齢的には まだ少し余裕がありますよね。
今はエストラーナテープⓇを 3 枚に増やしてもらっている途中とのことなので、これで排卵が起こらなければそれで良いと思います。
もしこの周期でうまくいかなければ、次はガラッと手を変えた治療方法にしてみるのも考え方のひとつかなと思います。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。