次回の治療方針について【医師監修】

2回目の移植も陰性。
ERAかPGT‐A、どちらを受けるべき?

相談者 : メイさん(39歳)人工授精3回すべて陰性。アンタゴニスト法で採卵15個、10 個の胚盤胞を凍結しました。治療開始時は38歳でAMH値が高く、インスリン抵抗値検査を受け、人工授精時にはメトグルコ®を服用。卵子が育ちにくく、月経周期も32 ~ 34 日と少し長い傾向があります。体外受精の胚盤胞5AA、顕微授精の5AAを移植するも陰性。着床不全のERA検査を行い移植するか、ERA検査をせずにPGT – Aを行って移植をするかで迷っています。
【医師監修】神奈川レディースクリニック 小林 淳一 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1984 年より習慣流産の研究と診療に携わり、1989 年より済生会神奈川県病院においてIVFを不妊症・不育症の診療に導入。その後、新横浜母と子の病院の不妊・不育・IVFセンター長に就任。2003 年、神奈川レディースクリニックを開院する。患者さまの個々のペースに合わせた無理のない医療を目指す。

この方の治療状況や方針、ERA検査の検討などについて、小林先生はどう思われますか。

小林先生● メイさんは卵子が育ちにくいというお悩みがあるようですが、年齢の割にはしっかり採卵できていて、ある程度グレードの良い胚盤胞もたくさんできています。2回以上良好胚を移植してもうまくいかなかったら、受精卵の染色体異常を調べるPGT -Aの対象になるかと思いますが、メイさんの場合、受ける必要はまだないと思います。

これまでどのような形で胚を戻されたのでしょうか。排卵ありだったのか、排卵なしだったのか。まだ胚盤胞はたくさん残っているので、次はその方法を変えてトライしてみるという手もあると思います。

ERAは着床の窓がずれていないかどうかを調べる検査で、その方にとって最適な時期に移植することで着床・妊娠率を上げられるのではないかと考えられているものなのです。

この検査は自費になりますが、先進医療として認められているので、保険診療で不妊治療をしていても受けることができます。保険診療を継続されるなら受けてみてもいいと思いますが、その効果は100%信頼できるものではありません。ERAは2回、3回やるとその都度結果が変わることがあります。また時期が、前後にずれているという人は検査を受けた人全体の3分の1程度。つまり3人に2人はERAを受ける必要はないということになります。

PGT -Aについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。

小林先生●本来ならPGT -Aをやって正常な胚盤胞を選び、ERA検査を受けて着床の窓を完璧に計算してから移植するというのが理想的な形なのだと思います。しかし、PGT -Aは現状、保険適用の検査になっていません。保険診療で採卵して凍結した胚盤胞は使うことができません。P GT -Aをするなら自費診療で最初から採卵を行う必要があります。そこが一番大きな問題です。保険を使うことができるのに、それをわざわざ自費に切り替えて治療することに納得されているのかどうか。

2回移植に失敗されていますが、メイさんの条件は決して悪くないです。39歳でまだ保険診療が可能な年齢です。今慌てて高額な検査を受けるのではなく、前述したように胚の戻し方を工夫するなど、もう少し現状のまま頑張れることはあると思います。

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