移植・着床不全について

2度の移植で着床しません。
今後どうすればいい?

相談者 : みかんさん(29歳)3 年前に自然妊娠し、帝王切開で出産。2 人目の妊活中です。採卵後、2 度の移植をしましたが着床しません。セカンドオピニオンでホルモン補充が足りないと言われ、主治医にウトロゲスタン®の処方を希望しましたが行っておらず、SEET 法や2個移植も病院の方針で行っていません。転院は難しいです。保険回数も残り4 回となり焦っています。AMH 値や子宮体がん・頸がん検査、抗精子抗体などの異常はありませんが、生理痛が出産時よりひどいことが気になります。
神谷レディースクリニック 岩見 菜々子 先生 札幌医科大学卒業。2014 年より神谷レディースクリニック勤務。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。

検査データや相談内容から、気になることはありますか?

岩見先生● みかんさんは29歳でまだ若く、1人目を自然妊娠されています。妊娠できる力は十分におもちなのでは、という印象を受けました。ただ、2度の移植で着床されないとのことで、気になったのは帝王切開をされていること。帝王切開時の傷で子宮内に窪みができ、そこに液体などが溜まることで着床環境が悪化する帝王切開瘢痕部症候群になる方が一定数いらっしゃいます。経腟超音波検査や子宮鏡検査により診断ができ、2022年4月からは子宮鏡及び腹腔鏡手術が保険適用になったので、検査をしてみてもいいかなと思いました。

また、年齢とともに、超音波検査では映らない程度の初期の子宮内膜症を発症している可能性もあります。生理痛は早めに鎮痛剤などで対処するのがいいと思います。

ウトロゲスタンRの処方を希望されていますが、通院先のクリニックでは行っていないそうです。ほかにどのような治療法があるのでしょうか?

岩見先生●ホルモン補充周期では、内服薬単独より、ウトロゲスタンRのような黄体ホルモンの腟座薬、または注射を併用する方が妊娠成績は良いという報告が多いのは事実です。ただ、みかんさんは転院が難しいとのこと。1人目を自然妊娠されているので、一般的には黄体機能不全ではなく、妊娠に関するホルモンバランスも問題ないのではと思われます。ホルモン補充周期での移植ではなく、自然周期での移植を検討するほうがいいかと思います。

保険適用で治療ができるチャンスが残り4回という焦りもあるようです。2個移植などは有効でしょうか。

岩見先生●移植をする胚盤胞の数が多ければ、妊娠率は高まるとは思いますが、同時に多胎妊娠のリスクもあります。SEET 法や二段階胚移植も含めて、妊娠歴がある方には積極的にはおすすめしにくいかなと思います。みかんさんは移植はまだ2回。保険適用の回数が6回なのは、6回で妊娠される方が多いからです。20代での妊娠歴があるのですから、不妊の原因が見つかれば妊娠される可能性は高いはず。焦らずに、まずは帝王切開での瘢痕はないか、子宮内の状態に問題はないかの検査をおすすめします。セカンドオピニオンは保険回数に影響はありませんし、しっかり検査してもらえる病院を一度受診してご相談されるのがいいでしょう。

 

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