いま注目の抗酸化成分 PQQで卵子の抗老化を目指す

高い抗酸化作用により抗老化が期待できるPQQ(ピロロキノリンキノン)。不妊治療ではどう活用するといいか、ART クリニックみらいの村田泰隆先生にお話を伺いました。

ARTクリニックみらい 村田 泰隆 先生 名古屋大学医学部大学院修了。IVF大阪クリニック、なんばクリニック勤務、竹内病院トヨタ不妊センター長、エンジェルベルクリニック不妊センター長を経て、2016年 ARTクリニックみらい開院。6年間で4000例を妊娠・出産に導く。医学博士。

加齢と共に進んでしまう卵胞の減少と卵子の老化

不妊治療は、時間経過に伴う『老化』との闘いです。原始卵胞は、人が生まれた時には約200万個あると言われていますが、年齢が上がるにつれて減少し、残りが1000個くらいになると閉経状態となります。原始卵胞が卵巣の中に現在どれだけ残っているか、その指標となる検査がAMH(アンチミューラリアンホルモン)です。これは卵子の『質』ではなく、『量』をみる検査だと考えてもらうとよいでしょう。無排卵(無月経)の方でも、ピルを使って排卵を止めている場合であっても、卵胞の数は減っていきます。偽閉経療法を行うなど、減少を遅らせる試みや研究はありますが、時間経過に伴う卵子の数減少を完全に防ぐ方法はありません。同様に卵子の質低下も避けることができません。

卵子の老化は異数性胚の増加につながる

卵子の質低下の最大の要素として、染色体異常(異数性)卵子の増加、があります。23種の染色体のうち、ある1本が多い(トリソミー)、あるいは1本少ない(モノソミー)などの異数性卵子は、たとえ受精し成長したとしても、ほとんどが着床しない、しても流産となります。異数性胚のなかでもごく一部、生命力があって流産を免れ、この世に生をうけることのできる胚があります。21番染色体のトリソミー(ダウン症)がその代表ですが、ダウン症のお子様の出産率は、30歳の母親ではおよそ1000 に1、40歳では100 に1、女性の出産年齢が高くなるにつれてぐんぐん上昇し、10年の経過で約10倍となります(正確には出産年齢ではなく卵子の年齢が関与します)。この現象は、水面に顔を出した氷山の一角にも例えられます。水面下では、排卵しても妊娠に至らない異数性の卵子が、同様に急激に増えていることが想像できます。体外受精においては、異数性のない卵子に巡り合う確率を上げようとより多くの卵子獲得を目指すわけですが、採卵できそうな卵子の数を予想する際、先に挙げたAMH を参考とします。AMH 値が低い方は治療効率を上げにくい可能性があり、より早い取り組みをお勧めすることになります。

「抗酸化」「抗糖化」対策が重要なポイント

老化はヒトにとって避けられない現象ですが、それに抗うポイントとして、「抗糖化」や「抗酸化」が挙げられます。ヒトは糖や酸素を利用しないと生きてはいけず、糖化や酸化は切っても切れないものですが、糖や酸素とうまく付き合って糖化・酸化ストレスを軽減することで、血管や臓器へのダメージが減って健康長寿につながることが期待されています。精子や卵子、細胞レベルで質を問う生殖医療においては、「抗酸化」「抗糖化」対策はより重要なポイントになると考えています。そのためには、いわゆる健康的な生活を送ることが何より大切です。バランスの良い食事や充分な睡眠、日々のストレス発散、適度に運動して適正体重を保つ、などなど。過剰なストレスや不規則な生活では、酸化をすすめる活性酸素の産生が増加します。赤ちゃんができにくい要因には、卵管因子など物理的な問題もありますが、生活習慣の影響も大いにあると実感します。通院されるご夫婦を診ていて感じるのは、朝食を食べない、食事を単品ですます、運動不足で体重増加、など、忙しさのあまりご自身の健康にまで気がまわっていない方が多いことです。原因不明不妊とされるご夫婦の中には、生活習慣を見直すことで妊娠するのでは?と思う方々がいて、実際にそれだけで妊娠するケースが沢山あります。

卵子や精子の質の改善に強い抗酸化作用のPQQ

そうした健康的な生活を心掛けつつ、さらに「抗酸化」を目指すには、PQQなどのサプリメントを摂取するといいのでは。抗酸化物質にはメラトニン、レスベラトロール、NMN、コエンザイムQ10などさまざまありますが、中でも非常に強い抗酸化作用をもってミトコンドリア新生作用もある、価格も手頃なPQQは、非常にパフォーマンスのよいサプリメントだと思います。特におすすめするのは、体外受精を行っても思うような結果が出ていない方。採卵数が少なかったり、卵子の質が良くなくて胚盤胞ができにくい方などでしょうか。精子の運動率が低い男性も試してみるとよいのでは。酸化ストレスの増加により卵子や精子の質が低下することが分かっていますので、強い抗酸化作用をもつPQQはおすすめです。しかし魔法の薬は存在しません。サプリメントだけ飲んで満足するのではなく、健康的な体を維持する生活習慣が大前提であることは忘れないでほしいと思います。

体外受精をするしないに関係なく、お子様を目指した治療は、先ほど紹介した染色体異数性の割合変化からも、より若いうちに、少しでも早くに取り組んだ方が断然有利です。まず一人目を、と治療されているご夫婦でも、将来的にはできれば兄弟も…と考えている方がたくさんいます。ぜひとも早めに取り組んで、場合によっては体外受精も選択肢に含め(より若い卵子からの胚を凍結して保存しておける、というメリットがあります)、ご夫婦の目標とする家族計画を実現して頂きたいと思います。どうぞ積極的に婦人科や専門治療施設の門を叩いて相談してください。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。