胚盤胞移植 今後の治療について

胚盤胞の評価はどれくらい気にしたらいいのですか?

あいウイメンズクリニック 伊藤 哲 先生 順天堂大学医学部卒業、同大学院修了。順天堂大学医学部産婦人科学教室講師、国際親善総合病院産婦人科医長を経て、1999 年あいウイメンズクリニック開院。日本生殖医学会生殖医療専門医。
相談者 : ぶたこさん(36歳)多囊胞性卵巣症候群(PCOS)の疑いがあります。クロミッド®を服用し2 回タイミング法を試みた後、体外受精にステップアップ。13 個採卵できましたが成熟卵は11 個、そのうち分割胚1個、胚盤胞5個(グレード2が3個、グレード3が2個)。グレード2の胚盤胞を2回移植しましたが、1回目は化学流産、2回目は着床に至りませんでした。グレード2の胚盤胞はあと1個(4AC)、残りはグレード3です。評価の分類は移植の際、どれくらい気にしないといけないのでしょうか。
多囊胞性卵巣症候群の疑いがあるということですが、これは卵子や受精卵の質に影響を与えますか。
伊藤先生●A M H( 抗ミュラー管ホルモン) の数値が8・61ng/mlと高めですね。この値から判断すると、やはり多囊胞性卵巣症候群(PCOS)ではないかと考えられます。
 PCOSの人は採れる卵子の数は多いのですが、数の割には質が良くないという傾向があります。この方は13個採卵できて、そのうち5個が胚盤胞になったとのこと。比率からみたらそれほど悪い状態ではないと思います。
胚盤胞のグレードは妊娠に大きな影響を与えるのでしょうか。
伊藤先生●グレードの分類にはAA、AB、AC、BB、BCなどがあります。一般的にAやBなら望ましく、Cはなるべく入らないほうがいいと考えられているのですね。Cが入ると妊娠率が15~20%程度落ちてしまうという報告もあります。
 しかし、これはあくまで見た目の評価。PGT -Aなどで胚盤胞の中身を調べてみると、見た目の評価がAAでも異常な受精卵であるケースもあります。
 グレードだけに振り回される必要はありませんが、現状では評価の良い胚盤胞から戻していくというのが一般的な考え方だと思います。Cが入っていたとしても最後の段階まで成長する力のある受精卵ですから、初期胚を戻すよりはCの胚盤胞を戻したほうがいいと思いますね。
着床に関する検査もすすめられているようですが。
伊藤先生●比較的良好な胚盤胞を3回くらい移植して結果が出ないと反復着床不全ということになるので、そのタイミングでERAやALICEなどの着床に関する検査を受ける場合が多いですね。
 この方はまだ移植2回。着床不全ではなく、偶然の結果ということも考えられます。まずは残っている4ACの胚盤胞を移植して、その結果を見てから検査を考えてもいいのでは。Cが入っていても妊娠する可能性はあると思います。
 うまくいかなかったら、着床能や内膜の組織を採って慢性子宮内膜炎の有無を調べる検査などを受けてみては。
 新たに採卵からはじめることも考えられているようですが、とりあえず残っている胚盤胞を移植、そして結果が出なかったら着床に関する検査、その結果を見て採卵するかどうか決めるという流れでいいのではないでしょうか。
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