人工授精Q&A

排卵誘発に用いる薬や、排卵が起こるタイミング、抗精子抗体が及ぼす影響など、人工授精(AIH)に伴うさまざまな疑問について、またステップアップについてはどのように考えておけばいいか、いくたウィメンズクリニックの生田克夫先生にお答えいただきました。

いくたウィメンズクリニック 生田 克夫 先生 名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986年から体外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に導く。

今回初めてクロミッド®を処方されましたが、飲むべきでしょうか?

3 回のAIH を経て転院し、初めてクロミッド® を処方されました。排卵や内膜に問題はなく男性不妊が原因と思われますが、クロミッド®を飲む理由がわかりません。自然排卵のAIH ではだめでしょうか?
どういった目的で飲む薬なのか、納得できるまで医師に説明を求めましょう
 AIH ができているということは、排卵はしているのでクロミッド® は必要ないと思いますが、〝何のために飲むのか” を医師にきちんと聞かなくてはいけません。過去3 回のAIH で妊娠に至らなかったということは、ご主人の精子だけの問題ではない可能性もあります。要するに卵子が受精する場所にいない可能性です。一般不妊治療では受精が起こっているかどうかを知る方法はないのです。ですから治療は精子と卵子が出会う確率を高くすることになります。
 受精が起こっても5 日目まで育つ確率は約半分で、育ったとしても40 歳になると2 / 3 の胚は異常なので妊娠しないか、反応は出ても流産になることほとんどです。従って、2~ 3 個の卵子を排卵させることで、正常な胚が着床することを期待するわけです。日本人の場合、HMG 注射を1 ~ 2 回追加しないと複数の卵子の排卵は起きません。このためにクロミッド® を使用することがあります。このような治療をしても妊娠しない場合は体外受精の適応になります。

すでに排卵してしまっているのではないかと不安です

19 日と21 日の通院で卵胞11mmと言われ、26 日のAIH に向けて24 日に点鼻薬をさしましたが、ルナルナの計測で14 日と18 日に体温が低下。19 日の時点で既に排卵済みでは?
排卵したかどうかは、基礎体温の低下だけで判断することはできません。
体調管理アプリなどは、この辺からこの辺までの間に排卵が起こりますね、という大まかなことがわかるだけで、排卵日を正確に特定することはできません。
 排卵は低温期の最終日に起こる確率が高く、その前後であることは確かですが、高温期に移行して初めてそこが低温期の最後だったとわかるわけです。よって基礎体温だけで排卵を正確に予測したり確認することはできないのです。 卵胞11mmで数日後に排卵刺激を行ったということですが、18mm未満でもし排卵刺激がかかると、だいたいの卵胞は変性して潰れてしまうので排卵しません。
 成熟卵胞は酵素の力で殻に穴が開いて、中の卵子が飛び出して排卵となる。しかし卵胞が小さいうちに刺激しても殻が薄くなっていないので、うまく穴が開きません。すると中に水が溜まってさらに2cm位膨らみ、ギリギリで割れる場合もありますが、割れ損なうと4cm位になって卵巣内に残ります(黄体化未破裂卵胞)。
 18mm以上で刺激を加えればだいたいは排卵しますが、普通の周期でも10%位は排卵が起こらないというデータがあります。そうした場合でも体温は上がるので、排卵したかどうかは、AIH を行った1 週間後位に超音波検査で卵巣を確認してみないとわかりません。

抗精子抗体の値は、いくつ以上だと体外受精の適用になるのでしょうか?

検査の結果、AMH1.54ng/ml、抗精子抗体6.39 で次周期から人工授精(AIH)の予定です。抗精子抗体の値が低いとAIH でも可能性はあるようですが、体外受精に進んだほうがいいでしょうか?
不動化抗体の値が10 未満であれば、AIH で妊娠する可能性はあります。
 詳しく書彼ていないのでわかりませんが、6.39 という数値は、精子不動化抗体(SI50)なのではないかと思います。「不動化抗体」というのは、精子を動けなくしてしまう抗体が女性の身体にあると、精子が子宮に入り込んだとしても、精子の細胞膜に取りついて動きを止めてしまいます。要するに、精子が子宮や卵管の中を泳いで、卵子のところまでたどり着くことができなくなるので妊娠率が低くなるというわけです。
 抗体の作用が強い強陽性の場合は、体外受精・顕微授精など、早めのステップアップが必要になります。SI50 値が2 以上だと陽性になりますが、10 未満であれば、絶対に体外受精でなければ妊娠しないという数字ではないので、ご相談者の6.39 ならAIH で妊娠する可能性もあると思います。
 ただ、もともとAIH そのものの妊娠率は高くはないので、3~4 回位は試みてもいいと思います。しかし、5 回目以降は妊娠率がグッと下がりますし、半年以上続けるのはおすすめしません。この方はAMH も低いので、体外受精へ進もうと思った時には、卵巣刺激に反応しなくてあまり採卵できないという可能性もあります。何をどこまで治療するのか、よく考えて臨まれた方がいいと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。