不妊治療のステップを上がるとき、「人工授精」と聞くと、いくばくかの抵抗感を抱くご夫妻は少なくないようです。できれば自然で、と願うのは当然のこと。でも、内田先生は、人工授精のことを「セックスの代わり」と、やさしく解説してくださいます。その人工授精についての詳しいお話を内田先生に聞きました。
人工的な授精法
人工的に採取した精子をシリンジなどを使って子宮内へ注入する方法を人工授精、または子宮内授精法といい、通常、配偶者間で行われます。精子は洗浄し、動きがよいなどの条件を整えて治療に用います。精液検査で異常が見つかった場合や、セックスでは精子が子宮に入らない、進んで行かないなどのご夫妻が適応になります。年齢にもよりますが、タイミング療法で半年~1年経過しても妊娠しないことを一つの目安と考えています。
でも、なかには人工授精に抵抗があるというご夫妻もいらっしゃいます。性交障害があり腟内射精ができていない場合には、治療の段階の一つとして、シリンジのキットを使う方法があります。性交障害の理由が女性側にある場合は抵抗感が強いかもしれないですが、男性側にある時は、マスターベーションで射精ができれば精液を腟内に送り込むことができます。それでも妊娠しない時に、人工授精へ進むのもいいかもしれませんね。
人工授精のプロセス
まず検査から始まります。精液検査の所見に問題があれば、早めの治療開始となりますし、異常が見つからなかった場合、年齢にもよりますが、ご夫妻の判断で3カ月後から1年後のこともあります。
治療は、生理中に1度、診察を行ってその周期の治療プランを立て、卵子の発育が確認できたところで、その翌日、または翌々日に人工授精を実施します。1回の治療周期でトータル3~4回の通院が必要ですが、卵子の発育状況で4~5回になることもあります。
精子は自宅で既定の容器にご自身で採取し、その後、原則2時間以内に持参していただきます。通院にそれ以上かかる時は、来院して採取することをおすすめしています。
人工授精は排卵のタイミングに合わせて行うので、セックスが可能な場合は、人工授精施行日の2・3日前、加えて人工授精が終わった翌日、翌々日もセックスが可能ならしてみましょう伝えています。
人工授精の治療ポイント
人工授精はセックスの代わりと考えて、もっとハードルを低くしてほしいと思っています。治療では、基本的には排卵誘発剤を使って女性側の条件を整えることをおすすめしています。男性には精子の状態が整う可能性の高い新鮮な精子で当日が迎えられるように、2〜3日前に射精をして準備してもらいます。採取した精液は温度管理に注意し、人肌で運ぶことがポイントです。
人工授精が治療として適応になる原因としては、、精子の状態によるところが最も多く、ご主人にはショックなことでしょう。さらに、セックス以外で妊娠を目指すとなると、気持ちはより落ち込むと思います。ご夫妻で目標をしっかりともち、そこを乗り越え、治療に臨みたいですね。でも、なかなかその壁を超えられない時は、早めにカウンセラーや看護師に相談しましょう。
生殖補助医療 のケースは?
一つは、抗精子抗体が陽性の場合です。女性がその抗体をもっていると、精子は卵子と出会えるところまで行けません。もう一つは、精子の条件が極端に悪い場合です。これらの場合でも、妊娠の可能性が低いことをご夫妻が納得したうえで、それでも1度はと決断されたのであれば、人工授精を試してみるのもありだと思います。なぜなら、世の中に100%がないのと同じで0%もないだろうという思いが僕の中に少しでもあるからです。人生には、どんな奇跡が起こるかわかりませんからね。