【Q&A】治療を続けることについて~政井先生

政井先生にお聞きしました。

佐久平エンゼルクリニック 政井 哲兵 先生
鹿児島大学医学部卒業。東京都立府中病院、日本赤十字医 療センター、佐久市立国保浅間総合病院、高崎ARTクリニック 勤務を経て、2014年に佐久平エンゼルクリニックを開院。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
ユキさん(47歳)
私は10年ぐらい不妊治療をしています。
その間、5~6回ぐらい着床しましたが、すべて稽留流産になりました。
はっきりとした原因は言われたことがありません。
赤ちゃんを授かることを信じて治療してきましたが、気づいたら10年経ち、年齢も47歳になってしまいました。
先生からは「もうそろそろ、第二の人生も考えてみたら」と言われましたが、やはり自分が納得して治療を終了させないと後悔してしまうと思います。
去年まではHMGや点鼻薬などを使って採卵していましたが、刺激しても採れる䛾が1~2個だからということで、今年からクロミッドのみの服用で卵を育てることになりました。
しかし、なかなか卵は育たないし、卵の質も今までより悪くなっている気がしています。
47歳でAMHも低いので、今後ど䛾ように治療をしていけばよいのかと思っています。
47歳で受け入れてくれる病院が近くにあれば、最後の望みで転院してみようかとも考えています。
やはり年齢的には妊娠するのは難しいというのは自分でも重々承知しています。
それでももう少し治療を続けたい時は、どのような事をしたら良いでしょうか。
これは、当院(私)の考え方になりますが、医療はあくまでも患者様の自己決定権が最優先されるという考え方によります。治療の開始を決めるのも患者本人(夫婦)であれば、治療のやめ時を決めるのも夫婦であるべきというスタンスです。

この間に、患者本人(もしくはパートナー)より、何かしらの意見を求められた場合はそれにきちんと向き合う(納得できるできないは別にしてもなにかしらのきちんとした見解を出す)というようにしています。
特に今回のような質問(治療のやめ時)に関しては、医療機関側が考える医学的な部分(医学的な妥当性)と患者本人が求める納得感(ある程度のやりつくした感、納得感を得たうえで治療の終結を決断する)に乖離があることがあり、必ずしも医療機関側の価値観だけで治療のやめ時を判断すると価値観の押し付けになる可能性はあるかと思います。
なので当方的には、医療的な妥当性より多少外れる可能性があっても身体的な危険、倫理的な問題など決定的な部分での明らかな問題がないような場合はある程度患者の希望に寄り添うようなスタンスをとっています。

今後の治療については、現在かかっておられる先生も、お話を読ませていただいた限りでは、必ずしも門前払いしているような状況ではないと思いました。

(むしろ、第2の人生も考えてみたら・・という言葉には思いやりさえ感じます。また、刺激しても卵胞が育たない医学的な状況も考慮された上で、あえてそれでも続けるならということでクロミッド単独(HMG添加しない)の体にも経済的にも負担の少ない方法を選んでくださっているように思います。)

「47歳で受け入れてくれる病院が近くにあれば、最後の望みで転院してみようかとも考えています。それでももう少し治療を続けたい時は、どのような事をしたら良いでしょうか。」

これに関しては、まず、現在の施設の先生も治療については受け入れてくださっている(必ずしも年齢だけで門前払いはしていない)という前提で考えると、これまで10年間?も向き合ってくださった先生のところで最後までやり遂げるという考え方もありだと思います。
もちろん先生の方針に何か決定的な納得できない部分や考え方の違いがあって転院を希望される場合はそれはそれでよいのかもしれませんが、正直なところでは受け入れが可能な施設というのが見つかるかどうかという問題はあるかもしれません。

「約10年間、検査や治療法等もいろいろと試しているようですが、はっきりとした不妊原因は示されていないようです。先生の考えをお聞かせください。」

これに関しては、これまで考えられうるあらゆる検査は行っていると思いますので、本当の意味での原因不明不妊症ということかと思います。
現代の医学では必ずしも解明できない不妊原因というのもまだたくさんありますので、こういうところに何か原因があるのかもしれません。また、PGTA検査は行っておられない?かと思いますが、これまでの採卵でもし仮にPGTA検査をされていれば、例えば得られた受精卵自体に問題があった可能性も考えられるかもしれません。

「47歳という年齢や低AMHなど、条件的に難しいケースだと思われます。もう少し治療をつづける場合、何か試せることはありますか?」

医学的には正直なところ、これをやると明らかに有効ですというのはなかなか難しいかもです
心穏やかに治療に対して納得感が得られることも必要かと思いますので、担当の先生とのコミュニケーションをしっかりとっていただき、疑問に感じるところはとことん聞いてみるという姿勢が重要かと思います。

「治療のやめどきに悩んでいる患者さんへ、アドバイスをお願いします。」

治療のやめ時については施設の考え方によっても違うと思いますが、わたしは、先ほども述べたように治療の開始を決めるのも夫婦であるなら、治療の終結を決めるのも夫婦であるべきというスタンスです。不妊治療は
必ずしも10人が10人結果を出せる保証があるものではありませんが、わたしは治療に臨む患者さんのスタンスと治療を提供する医療者側の姿勢で10人が10人満足感を得て治療を終えることは可能だと思っています。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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