AMH が低く、夫の精子にも
問題が。顕微授精を行っても
妊娠が継続しません
人工授精を4 回行うも妊娠に至らず、初めての顕微授精でも化学流産になってし
まったれんさん。年齢的に妊娠の確率を上げることは難しいのか、今後の治療はど
うすべきか、いくたウィメンズクリニックの生田克夫先生にお話を伺いました。
ドクターアドバイス
●精液所見が悪ければ、やはり顕微授精を。
●無理して性交渉に臨まず、精液採取を。
胚盤胞までたどり着いても正常な受精卵である確率は1/3。諦めずトライしましょう
4回の人工授精で結果が出ず、顕微授精でも化学流産になってしまったとのことですが、どのような理由が考えられますか?
生田先生●顕微授精で妊娠はできたのにそれが継続しない理由は、年齢の高さにあると思います。高齢になると卵子の染色体異常の頻度が高くなりますから、41歳という年齢で受精卵が胚盤胞までたどり着くのは4割ぐらいで、そのうち3つに1つしか赤ちゃんになりそうな卵子がないということです。2/3は染色体異常が発生しているので、顕微授精を行っても妊娠が成立しないか、妊娠しても流産になってしまうことが多いんですね。
本格的な不妊治療を始める以前に、初期の子宮頸がん手術をされているということですが、妊娠率との関連はありませんか?
生田先生●頸管粘液が減っている可能性があるので、普通にタイミングをとる形では妊娠しにくいかもしれません。ですが体外受精の場合は、妊娠自体への影響はないかなと思います。年齢的なことを考えると、ご主人の精液所見もあまり良くないようなので、顕微授精を続けて気長に受精卵を幾つかつくっていく、というのが良いと思います。そうすると、その中に赤ちゃんになる正常な受精卵ができてくる確率が上がります。ある程度良い胚盤胞ができたら、とにかく移植して、数多くの胚盤胞が得られればPGT -Aも選択肢に入るでしょう。
前回は化学流産に終わっていますが、そこまではたどり着けて、結果的にダメになってしまったというだけ。もっと手前の段階、つまり受精はしても胚盤胞にならなかったり、胚盤胞になって移植はしたけど着床しない、着床しても途中で発育が止まる、というのも同じ原因。年齢的に染色体異常の頻度が高くなっているため、という感じがします。れんさんは着床しないわけではないと思われるので、諦めずに頑張ってほしいと思います。
前回はクロミッドⓇとHMG300単位で卵巣刺激を行ったとのことですが、刺激の方法を変えてみたりすることも有効でしょうか?
生田先生●AMHが低いのでクロミッドⓇとHMGを使われたんでしょうが、クロミッドⓇを使わない処方もあります。ロング法はAMHが低いと反応が悪くなって卵胞が育たない可能性があるのでれんさんにはあいません。ですが、アゴニストを使うショート法などを試してみるのも悪くはないでしょうね。ただ、AMHの値によってはかえって反応が悪くなる人もいるのでなんとも言えませんが。
エストラーナⓇで胸が苦しく痛くなった、というのは、副作用だと考えられますか?
生田先生●あまり聞きませんね。エストラーナⓇは発疹が出ることはありますが、胸部不快感の症状が出る可能性は0.1%未満です。薬ですから、頻度は少なくても人によって何らかの症状が出ることは否定できませんけれど。
コロナワクチンの接種時期と重なっていたそうなので、その副反応かもしれませんね。
生田先生●一度中止した後にまたエストラーナⓇを使われているので、医師も副作用ではないと判断して再度使ったのだと思います。
お互いを思いやり負担の少ない方法を選びつつ、気長に根気よく治療を
ご主人がEDぎみで治療にもあまり協力的ではないようですが、夫婦で治療に対する温度差がある方へアドバイスをお願いします。
生田先生●難しい問題ですが、当院でもそういうご夫婦はここ5年くらいの間に多くなってきています。ご主人が忙しかったり神経を使う仕事だったりすると、家に帰るとグッタリして性的な興奮が起きない。いざタイミングをとろうと思って性交渉を始めても持続性がなく、疲労感でいっぱいになって性的な興奮が消えてしまうんですね。奥さんの排卵日だからと頑張って性交渉するよりも、体外受精なら精液が採れればいいので、肉体運動をほとんど伴わないマスターベーションでいいわけです。それで妊娠を目指せば、ご主人も気が楽なのではないかなと思いますよ。