切迫流産を誘発する原因について

仕事の負担を減らせば流産を予防することができますか?

神奈川レディースクリニック 小林 淳一 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1984 年より習慣流産の研究と診療に携わり、1989 年より済生会神奈川県病院においてIVFを不妊症・不育症の診療に導入。その後、新横浜母と子の病院の不妊・不育・IVFセンター長に就任。2003 年、神奈川レディースクリニックを開院する。患者さまの個々のペースに合わせた無理のない医療を目指す。
りーしゃんさん(32歳)10 月に凍結胚移植を実施。先日切迫流産と診断され、自宅安静2日後くらいで2回目の流産をしました。今までに4回移植しており、今回で5回目です。職業は看護師で、体への負担が大きい仕事をしています。その負担が流産を誘発してしまったのでは、と思っており、休職や勤務時間の短縮を検討しようかとも思っています。何事も絶対大丈夫とはいえないと思いますが、仕事のペースを落とすことで妊娠できる可能性はありますか?

りーしゃんさんの職業は看護師ということですが、仕事内容と流産率には関連があるのでしょうか。

小林先生●昔、習慣流産の学位を取っている時に、外来にいらした患者さんの職業を調査・研究したことがあります。結果、保育士さんの流産率が一番高かったのですね。なぜ多いのか。それはおそらく肉体的・精神的ストレスが多い仕事内容だからではないでしょうか。
 大切なお子さんを預かっているという重圧に加え、お子さんが転んだらすぐに駆けつけなければいけないなど、自分の意に反した行動もしなければならない。それ以外にもさまざまなノルマがありますよね。体調が優れず、お腹が張っている時も静かに座っていることもできません。
 看護師さんもそれと同じような環境で働いています。当院でも、不育症の疑いで受診される患者さんの中で看護師をされている方が多いという印象はありますね。看護師さんは肉体的・精神的ストレスに加え、夜勤もあるなど勤務時間が不規則。流産への影響がゼロとはいえないのでないでしょうか。

やはり、心身への負担が流産原因になってしまうということですか。

小林先生●それは臨床流産の場合で、胎囊が見えてからの流産ということです。妊娠6週から10週くらいの1カ月間が一番大事で、この時期の無理は禁物。体を気遣って生活していただきたいです。また、初期の段階での流産は受精卵が原因であることがほとんどなので、通常通り過ごして問題ないでしょう。

妊娠がわかったら、仕事をセーブしたほうがいいのでしょうか。

小林先生●デスクワークではなく、保育士や看護師などストレスが多く、時間も不規則なお仕事の場合、休めるのだったら休んだほうがいいかもしれません。時短勤務やシフトを減らすことができればそれでもいいと思いますが。
 今は不妊治療に理解がある企業も多くあるようですね。当院でも、患者さんが勤務している職場に提出する診断書をよく書いています。妊娠で休職する場合、給料の一部をもらえる助成制度もありますから、辞職ではなく、このような制度を活用して安定期に入るまでお仕事をセーブできれば安心ですよね。
 それに加え、不可欠なのがご主人の協力です。共働きなのに奥様に家事をすべて任せていませんか? 不妊治療中、妊娠中は奥様の体への負担を少しでも減らすために、ご主人も積極的に家事に参加するようにしましょう。
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