【Q&A】排卵誘発で卵巣が腫れ、生理が来なくなりました~森先生

排卵誘発剤により卵巣が腫れると、生理が来なくなる!?

真相を草津レディースクリニックの森 敏恵先生に教えていただきました

森 敏恵 先生(草津レディースクリニック)日本産科婦人科学会専門医、日本生殖医学会会員、日本受精着床学会会員、日本卵子学会会員。神戸や滋賀県の産婦人科などを経て、草津レディースクリニック院長に就任。「笑顔になれるクリニック」をめざし、臨床心理士による心のケアなど、心身両面の治療を大切にしています。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

タロさん (37歳)

採卵のための排卵誘発(投薬)で卵巣が腫れ、生理が来なくなりました。
9月下旬→カウフマン療法→10月下旬、採卵のため生理3日目HMG300単位1回、レトロゾールとクロミッド1錠ずつ5日間。
生理7日目の診察で、まったく卵胞が育っておらず、その後も13日目、19日目の診察で卵胞0。
左卵巣に影があり、卵胞かな?と様子をみましたが10日後の診察で卵巣が8cmに肥大。
11月に人生で初めて30日を過ぎても生理が来なくなり、12月頭に吸引手術(150cc)、
その2週間後、また同じところが4cm大に腫れていたものの右卵巣に卵胞があり、年末に排卵。
排卵後左5cm、右4cmの腫れを認めるも生理が約3ヶ月ぶりに来ました。
その後の生理5日目の診察で卵巣は同じように腫れたまま、卵胞は0でした。
今までもたまに、腫れることはありましたが、だいたい生理がくれば収まっていました。

生理が来なくなったのも初めてで、このまま治療を継続してもいいのか、そもそも継続できるのか不安です。
生理が来ない間、2回1週間程度の不正出血がありました。

相談内容や検査データを見て、どのような印象を持たれましたか?

なかなか難しい状況ですね。
AMHが0.7と低い方は卵巣予備能が低下している可能性があり、このようなイレギュラーなことが起こりやすいです。
先生も苦慮されていると思います。

排卵誘発剤で卵巣が腫れ、生理が来なくなるというのはよくあることでしょうか?

また生理が来なくなった理由や不正出血があった理由として、どのようなことが考えられますか?

排卵誘発をして卵巣が腫れたと表現した場合、通常は卵巣予備能が高いため卵巣が過剰に反応したと解釈しますが、タロさんの場合はそれに当てはまらないようです。AMHが低いため卵巣予備能は低いと考えられます。
このような場合、排卵誘発をしても思ったように卵胞が発育しなかったり、突然発育して排卵してしまうこともあります。
生理が来なくなったことに関しては、卵巣が腫れたことが原因ではなく、卵巣予備能が低いために起こっているのではないでしょうか。
卵巣が腫れたことに関しては、質問に「10日後の診察で」とあるので、その間に排卵した可能性はありませんか。
卵巣が腫れる原因は、体外受精のように医原性の場合もあれば、機能性のもの(黄体)や器質性のもの(子宮内膜症性卵巣嚢胞)などいろいろあります。
受診先の先生の診断はいかがでしょうか。
卵巣の腫れは、何によるものなのかでとらえ方が変わります。
不正出血に関しては、いつもと違うから不正出血と思われていて、でもそれが生理であることがあります。
基礎体温やホルモンデータはいかがでしょうか。これらのデータで確認してみてください。

相談者さんが行った排卵誘発法について、どのように思われますか?

当院ではホルモンデータとエコー所見を加味して排卵誘発方法を考えています。
採血データやAFCや過去の採卵データの記載がないので何とも言えないというのが正直なところです。
HMGは生理3日目に300単位を使用しただけで、その後は使わなかったということでしょうか。
AMHが低い方には、低刺激周期か自然周期が良いので、クロミッドとレトロゾールの選択で問題ないのではないかと推察いたします。

治療の継続について、不安を感じているそうです。先生ならどのような検査や治療を提案されますか?

薬の使い方が同じでも、個人差も周期差もありますので、受診頻度を増やし細やかに対応できるようしていきます。
もし早発卵巣不全が考えられる場合は、エストロゲン補充によるFSHの調整や、PFC-FDによる治療を行っています。

その他、アドバイスをお願いします。

心にとめておかなくてはならないのは、排卵が起こらない方に対しての治療は非常に難しいということです
まだ37歳ですから、良い卵子との出会いも期待できないわけではありません。体外受精の合間のタイミング療法で授かる方もいらっしゃいます。
いつ排卵するかわからないので、通院しながらじっくり良い卵子との出会いを待たれるとよいかと思います。
授かるまでにまだ数年かかるかもしれません。
早く妊娠したいという気持ちだとは思いますが、数年かかる可能性を受け入れて、焦らず治療に向き合ってください。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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