タイミング法から始めるか、最初から体外受精を試みるか

子宮外妊娠で右卵管を切除。妊活の注意点は?

いくたウィメンズクリニック  生田 克夫 先生 名古屋市立大学医学部卒業。名古屋市立大学産科婦人科学教室助教授、名古屋市立大学看護学部教授などの経歴を重ねたが、不妊に悩む名古屋の方たちの役に立ちたいという思いで、教育者の立場を辞して独立。地元・名古屋の中心部、栄に開院し、1986 年から体外受精の現場を歩いてきた経験と穏やかな人柄で、数多くの患者さんを妊娠に導く。
もりこさん(38歳) 2020 年7 月に7 ~ 8 週で稽留流産。11 月には7 週で子宮外妊娠が判明し、卵管破裂により開腹手術で右卵管を切除しました。2 回とも自然妊娠です。手術から半年以上過ぎ、妊活を始めたいのですが、再発を避けるため不妊治療専門クリニックで初期検査や子宮卵管造影検査を受ける予定です。結果次第で体外受精も考えています。タイミング法から体外受精にステップアップする際の判断基準、治療で注意すべきことをお聞きしたいです。子どもは複数人欲しく早く妊娠したいです。

検査データから、気になることは?

生田先生● 緊急搬送による開腹手術では不安も大きかったと思います。まずは妊活を再開できるまでに回復されてよかったです。手術を受けた病院の状況にもよりますが、手術時の子宮や卵管の状態について後日報告を受けているのでしょうか? 着床して破裂した卵管の周囲に腫れや炎症の痕跡の癒着などがあったのか、残した卵管の周囲の状況、そういう所見のデータがあると、今後の治療方針が立てやすくなります。

子宮外妊娠の再発を心配されています。どうすれば予防できるのでしょう。

生田先生●子宮外妊娠は妊娠全体の1%程度といわれています。主な原因は、2003 年くらいでピークとなって今は減少してきているクラミジア感染で、以前は治療せずに放置した結果、 卵管内や卵管周囲に炎症が起き、卵管の受精卵の輸送機能が低下して子宮外妊娠を引き起こすケースが多々ありました。最近は性感染症への理解が深まっており、異常があればすぐ受診される女性が多いので、感染症による子宮外妊娠のリスクは減っています。また、卵管を両方残した場合の再発率は10%程度、片方切除された場合の再発率は7~8%と考えられています。
 再発を防ぐには、生理が止まって妊娠反応が出たら1週間くらいで病院を受診してください。まず経腟超音波検査で胎囊が子宮内に認められるか否かで子宮外妊娠の可能性の有無が確認できます。その段階ならhCG の値の推移で待機療法にするか、薬物療法にするか、腹腔鏡下での手術にするかを決めることができ緊急の開腹手術に至ることはありません。しかし、気づかずに7週くらいに入ってしまうと卵管破裂を起こし、緊急開腹手術となります。
 子宮外妊娠は、昔は妊婦死亡三大要因の一つでしたが、現在は経腟超音波装置の発達で、防げるようになりました。

今後の治療法の選択、ステップアップについてアドバイスをお願いします。

生田先生●38歳という年齢を境に妊娠率がぐっと下がるので、妊活はできるだけ早く始めましょう。
 自然妊娠を2回経験されていますので、2~3周期はタイミング法を試みて、それで成功しなければ体外受精へのステップアップをおすすめします。
 卵管が片方の場合は、両方ある場合に比べて自然妊娠率は7割程度に下がります。ひとまず卵管通過性の検査で卵管の通りをチェックし、その後の治療方法をご検討ください。
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