男性も妊活を考えはじめたら早めに検査や治療を受けよう

妊娠しにくい原因の約半数は男性にあるとされていますが、必要な検査や症状、治療法は? 英メンズクリニックの江夏徳寿先生に教えていただきました。

英メンズクリニック 江夏 徳寿 先生 2005年鹿児島大学医学部卒。2011年神戸大学医学部腎泌尿器科入職。2016年神戸大学医学部腎泌尿器科助教。2016年4月英ウィメンズクリニック男性不妊外来を担当。2018年4月英ウィメンズクリニック男性診療部部長、研究部副部長に就任。2018年11月より英メンズクリニック院長に就任。日本泌尿器科学会専門医、指導医。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本泌尿器内視鏡学会腹腔鏡手術技術認定医。

精子の状態が思わしくない時は泌尿器科でさらに詳しく検査

男性不妊の原因のなかには、精巣で精子をうまくつくれない造精機能障害や無精子症、性機能障害など重度の要因があります。これを調べる検査は「精液検査」と「泌尿器科的な検査」に分けられ、まずは精液検査を行います。

一般的にWHOの精液検査の基準値を下回る場合は重度の男性不妊が疑われ、泌尿器科の詳しい検査をおすすめしています。ただ、基準値は一つの目安ですので、これを下回ると絶対に妊娠できない、上回ると必ず妊娠できるということではありません。

泌尿器科的な検査では、触診とエコー検査、血液検査を行い、男性機能やホルモンの状態を確認します。たとえば、下垂体ホルモンが不足し、精子をつくる能力が低下している場合は、これを補うお薬を使い、精子の改善をうながします。また、精子の状態がかなり悪い場合は、精巣または精子の通り道に原因があるのかなどを判断する材料になります。

重度の男性不妊が見つかってもお薬や手術による治療が可能

造精機能障害のなかでも多いのが、精巣に静脈の瘤こぶができる精索静脈瘤です。これにより血流障害などが起こると、精子の質に影響します。エコー検査で精索静脈瘤が認められた場合は、日帰り手術(保険適用)によって改善が期待できます。

無精子症は、閉塞性と非閉塞性に分けられます。閉塞性の場合は、精巣を切開して精子を直接採取する「TESE(精巣内精子回収術)」を行います。また、精子はいても非常に少なく、射出精液のなかに運動精子がほとんど見当たらない時に行うこともあります。手術後の妊娠率は、女性側の状態にもよりますが、一般的には顕微授精と遜色のない成績が得られています。

一方、もともと精巣の働きが悪く、精巣の中をくまなく探さないと精子が見つからない非閉塞性の場合は、「micro TESE(顕微鏡下精巣内精子回収術)」の適応になります。手術をしてもまったく精子が得られないことがありますので、事前に「Y染色体微小欠失」の検査(遺伝子検査)を行い、手術の適応を決定します。この検査でY染色体の中の精子をつくる情報に異常が見つかると、現時点の医療ではご自身のお子さんを希望することが難しくなります。どちらの手術も、ほかの治療の選択肢がない方に行われます。

性機能障害は、前述のものとは主訴が異なり、ご本人が自覚できる症状です。なかでも勃起障害(E D)は、当院を受診される7人に1人の割合で見つかります。治療には昔から使われているバイアグラⓇやレビトラⓇ、シアリスⓇなどのお薬が有効です。

コロナに感染すると精子に影響!?ワクチン接種と精液検査を受けよう

男性不妊のなかでも造精機能障害の約半数は原因不明です。生活習慣の見直しや内服治療で精巣の酸化ストレスを抑えたり、漢方薬で精子の状態を改善できることもあります。

また、最近は新型コロナウイルスに感染した男性のなかに精子の状態がかなり悪い方が見受けられます。当院は新型コロナウイルスワクチンを接種した男性の治療成績をフォローしていますが、これまでワクチン接種後に精子の状態が悪くなる方は確認されていません。海外でも「ワクチン接種は精子に影響を与えない」という報告が出ていますので、基本的には妊活中の男性にワクチン接種を推奨しています。

2022年4月からは、不妊治療の保険適用がはじまる予定です。患者さんの状態に合ったオーダーメードな治療をどこまで提供できるかという課題はありますが、妊活中の方にとっては治療負担が軽減できるメリットもあります。特に男性の検査は心身の負担が少なく、大きな費用もかかりません。精子の状態がその後の治療方針に影響することもありますから、まずは妊活を始める早い段階で、積極的に検査を受けていただきたいと思います。

気になることがあれば気軽に泌尿器科に相談を!

精液検査の結果によって、泌尿器科の精密検査が必要になることも

男性不妊の多くは原因不明。重度の不妊もお薬や手術で治療が可能に

コロナ感染後に精子状態が悪くなるケースも。妊活前にワクチン接種を

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