【Q&A】Th1/Th2:10.9 移植時のタクロリムスについて~浅田先生

浅田先生に聞いてきました

浅田レディースクリニック浅田義正先生  名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

くみさん(37歳)

第一子の不妊治療2年目です。
3回目採卵を経て、9月末に4ABの胚盤胞を移植しました。凍結胚です。
移植前の検査で内視鏡にて肉眼的に慢性子宮内膜炎の疑いとなり、オーグメンチンを1週間ほど、ラクトフェリン膣錠10日実施。
細胞診にて慢性子宮内膜炎マイナスの結果でした。
Th1/Th2 についても10.9で、移植2日前からBT11までタクロリムス1ミリを内服していました。
移植後、BT7に採血でhcg:55.7。BT11に 尿検査で陽性を頂きました。この日でタクロリムスの内服も終了しました。
BT13に日付が変わる頃、激しい悪寒があり、午前3時半頃に38.8°C発熱。カロナール400を内服し、6時ごろには37度代前半に下がりました。
そして午前11時頃、生理痛䛾ような下腹部痛があり、12時ごろに出血が開始しました。18時頃に、37.6度に上がったため、フロモックス100を内服。その後は熱は出ていません。
BT28の現在も出血は少量ですがつづいています。
BT18に胎嚢確認できず。hcgはこの時測定していません。
念のためにと1週間後にまた確認するということでBT25に再度エコーしましたが胎嚢確認できず、この時尿検査でhcg 陰性でした。
ドクターに確認したところ、発熱が化学流産の原因の可能性もあるが、卵の問題は可能性が高いとの事でした。
しかし、私はここ10年くらいは38度代の熱を出したことがなく、発熱時に他の症状もなかったので…
免疫抑制剤飲み終わった直後でもあるので、私の免疫が着床した卵を攻撃してしまったのではないかと心配しています。
また、慢性子宮内膜炎はマイナスでしたが、内膜の状態が良くないのではないか、とも悩んでいます。
私の免疫が卵を攻撃した可能性はありますか?その場合、何か対策はありますか?
タクロリムスの内服期間を延長してもらうことは有効でしょうか?
子宮内膜の状態について、他にできる検査や、出来ることはありますでしょうか?

胎嚢が確認できず、化学流産であった、ということが細かく書かれています。免疫的に子宮内膜が卵を攻撃したのではないかという心配をされていますが、その発想は20年程前に話題になりましたが、現時点ではっきりとしたエビデンスはありません。

免疫は、心臓移植、腎臓移植などでは、移植した臓器が免疫反応で拒絶されることがあり、臓器移植の研究として始まりました。

以前は、受精卵も自分とは免疫が半分一致しますが、半分はパートナーのものであるため、子宮の中でも拒絶されて当然、という理論がありました。そのため、ブロッキングファクター等、様々なことを想定した研究がなされましたが、現在では、そういういったものはなく、免疫細胞は着床に関与はしていますが、臓器移植のときの拒絶反応のようなものは、子宮内では起こらない、というのが、世界的な統一見解になっています。なぜなら、代理出産で他の人に受精卵を移植した場合、卵子の年齢に応じた妊娠率になるということが証明されていますし、子宮外妊娠では、子宮内膜と全く関係のないところに着床でき、妊娠が成立しています。

くみさんが現在悩んでいる内容は、世界的に実証されたことと異なるものです。

生殖医療専門の医師といってもそれぞれに得意分野があります。

例えるなら、今晩のおかずをどうしよう、と思ったとき、肉屋さんに行けば肉を勧められますし、魚屋さんに行けば魚を勧められるし、八百屋さんに行けば野菜を勧められるというように、各施設が、自身の得意な分野でその理由付けをしている、というのが今の生殖医療の現場です。くみさんが通院されているクリニックは“子宮内膜で妊娠を説明しよう”という考え方のため、そのような説明があったのではないかと推察します。

慢性子宮内膜炎検査やタクロリムス治療においても、きちんとしたエビデンスはいまだにない、と言ってよいと思います。実験的という認識であり、世界的に臨床ではすすめられていません。

妊娠は、受精卵ができて、その中の遺伝子がその時々に適切に発現し、細胞分裂して新しい細胞ができ、分化して成長する、というメカニズムですので、妊娠には遺伝子が一番大切な要素となります。そして、その遺伝子の集合体が染色体です。

発育が途中で止まり、妊娠が継続できない原因について、現在判明していることは染色体異常ですし、それ以上に大きな原因は、受精卵ができたときの遺伝子の構成です。不妊の原因としては、こちらが本質ですので、他のことにこだわるよりも、本質的な考えをして別の治療を受けよう、とすることも大切なことだと思います。

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