妊活を開始し、基本の検査が一通り終了。検査の結果で原因が判明した場合、その後、どのように治療を進めていくのでしょうか。子宮や卵管因子、排卵障害、男性不妊など、原因別に治療例を紹介。かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生に教えていただきました。
ドクターアドバイス
子宮や卵管に原因がある場合、どのように治療を進めていったらいいのでしょうか?
子宮因子のなかで着目すべきは子宮内膜ポリープと粘膜下の子宮筋腫。この2つは受精卵の着床を妨げてしまう可能性があるので、不妊治療を行う前に対処することがあります。
子宮卵管造影で異常が見つかったら子宮鏡検査をして、内視鏡下で切除。ポリープは1回切除しても再発することが多いので、術後もエコーなどで経過観察をしていったほうが望ましいでしょう。
子宮筋腫は子宮内膜を直接圧迫するような位置にできていれば、ポリープと同様に内視鏡下で取り除きます。内膜の外側にできた筋腫なら妊娠に影響はありませんが、あまり大きなものを放置しておくと流産や早産、出産時に出血が多くなるなどのリスクが高まることも。大きさによっては切除することが妊活を開始し、治療の進め方ありますが、この手術を受けると傷が固まって妊娠できるようになるまで半年程度かかります。35歳以上の方は時間が勝負なので、採卵を優先して受精卵を凍結し、筋腫の手術後、子宮の状態が整ってから移植するという方法もあります。
卵管因子についてですが、卵管が完全に閉塞していたら自然妊娠はできません。対処法は2つあり、1つはFTカテーテルという手術を受けること。内視鏡を子宮から卵管に入れて、風船のついたカテーテルで詰まった部分を広げます。また、卵管采のほうで癒着している場合は、腹腔鏡で卵管と卵巣の癒着を剝がす処置を。もう1つの選択肢は卵管を使わない体外受精にステップアップすること。年齢や妊娠についての考え方など患者さんによって異なると思うので、医師とよく相談しながら治療方針を決めていただきたいと思います。
排卵に問題がある場合の対処法は?
排卵障害の原因としてよくあるのは、脳下垂体性のものとPCOS(多囊胞性卵巣症候群)です。卵巣を刺激する脳下垂体からの周期的なホルモン分泌に乱れがある脳下垂体性の場合は、排卵誘発剤を使って排卵させます。
PCOSは卵胞自体たくさんあるのだけれど、それをなかなか放出できないという状態。男性ホルモンが少し優位になっており、うかつに排卵誘発剤を使うと過剰刺激になってしまうことがあります。このような方の場合、腹腔鏡を用いては卵巣の表面を焼灼してあげると自然排卵することがあるのですね。また、メタボぎみで排卵がうまくいかない方にはダイエットをおすすめすると同時に、経口糖尿病治療薬のメトホルミンを処方すると、排卵障害が改善して自然排卵することがあります。
男性不妊だった場合、どんな治療をするのですか?
男性不妊のなかで多いのは精子が少ないというケースだと思いますが、残念ながら今の医学で精子を増やす特効薬や方法はありません。唯一治療できるのは精索静脈瘤という病態が原因となっている場合で、手術をすると劇的に精子の状態が良くなることがあります。それ以外で原因不明の場合、自然妊娠は難しいので、人工授精や顕微授精で妊活にチャレンジすることに。当院では精子濃度が2000万/ml以下だと人工授精、1000万/ml以下であれば顕微授精をおすすめしています。
また、精子が確認できない無精子症というケースには二通りの治療法があります。精子の通り道が塞がっている場合はTESEという施術で精巣内精子を採取して体外受精をします。精巣が精子をまったくつくっていないという場合はマイクロTESEといって、倍率の高い顕微鏡を使って精巣内を観察して精子がいそうな組織を狙って採取。なかなか厳しい状況ですが、うまく精子が採れれば妊娠される方もいらっしゃいます。
男性不妊はまだわかっていないことが多く、治療法も限られていますが、精子が1匹でも2匹でも採れれば妊娠のチャンスは十分あります。精液検査を数回行っても精子が少ない状態だったら、一度泌尿器科や男性不妊外来の受診を。恥ずかしがらず、男性側も治療に前向きになっていただきたいですね。