胚盤胞になっても低いグレードばかり。初期胚と胚盤胞どちらがいい?
年齢が高くなると採卵数が少なくなり、胚盤胞の成長率も低くなるといわれます。40 代のART では初期胚と胚盤胞どちらが着床しやすいのでしょうか。また、胚の質を上げる方法は? 田村秀子婦人科医院の田中紀子先生に教えていただきました。
ドクターアドバイス
胚盤胞にこだわるより妊娠の機会を逃さないことが大事
40代の受精卵のリスクはさまざま状態によって移植法が異なります
──年齢が高い人に適した移植法はありますか。
田中先生●年齢が高くなると、卵巣内の卵子数が減少し、成熟する過程で染色体異常をもつ卵子が増加します。また、酸化ストレス(喫煙や過剰の飲酒、生活習慣の乱れなどにより活性酸素が発生し細胞を障害する)も、卵子や精子の質の低下に影響を与えます。そのほか、加齢による卵子のミトコンドリアの機能の低下により、受精卵の発育止や胚盤胞への到達率が低下します。このような卵子や受精卵の質の低下が、加齢による不妊や流産の主な要因と考えられています。
移植する胚の選び方は、その方の年齢や採取した卵子数、受精卵の状態によって異なります。とくに受精卵の状態は実際に培養してみないとわかりません。また、高齢の方の受精卵は凍結に弱く、融解したときに変質することがあります。
発育が遅く胚盤胞に成長しない受精卵の多い方では、初期胚を移植するといい結果が出ることがあります。また凍結リスクの高い方には「新鮮胚移植(採卵周期に未凍結の胚を移植する)」を提案しています。その他、「子宮内膜刺激胚移植(SEET)法」や「二段階胚移植(初期胚を1個移植し、2〜3日後に胚盤胞を移植する)」も胚盤胞を着床しやすくする効果もあり、試されてもいいと思います。
精子の状態も受精卵に影響男性も詳しい検査や体質改善を
──胚のグレードを良くする方法はありますか。
田中先生●受精卵は卵子と精子から成り立っていますので、卵子の質の低下だけではなく、精子の状態が悪くても、受精卵の質や成長に影響することがあります。精子に関する近年の研究では「酸化ストレスにより、染色体が断片化した精子の割合が増える」といわれています。
けいさんのご主人は精子量が少なく、運動率も低いとのことですから、ご主人も「精子DNA断片化検査」などの詳しい検査をおすすめします。男性も年齢上昇に従って精子DNAの異常を生じる割合が上昇しており、それらにより高齢卵子の受精卵の発育を妨げる可能性があります。
けいさんはAMHの数値が比較的良く、妊娠もされています。まずはご夫婦で体質改善に取り組んでいただきたいですね。運動や食事などの生活改善、抗酸化力を高めるサプリメントの摂取や鍼灸などを取り入れたセルフケアも行うといいと思いますよ。
その上で、通常卵巣刺激で採卵数を増やしてみては? 胚盤胞に到達する受精卵が増える可能性もあります。その後は、胚盤胞にこだわらず、可能性のある移植法に柔軟にトライして妊娠につなげてくださいね。