体外受精に踏み切っても「卵子が育たない「卵子の質が 悪い「陰性が続く」など、思いどおりの結果につながり ませ。今回は山下能毅先生に、3 名の方から寄せられ た質問にお答えいただき、40 代に合った卵巣刺激法や、 体外受精を受ける時の心構、甲状腺検査の重要性につ いて詳しく教えていただきました。

 

ク  先生 大阪医科大学医学部を卒業後、北摂総合病院産婦人科部長・大 阪医科大学産婦人科病棟医長、医局長、講師として、不妊治療や 腹腔鏡手術に積極的に取り組む。2014年、宮崎レディースクリニッ クの副院長に就任し、2017年4月、同院の院長に。

ドクターアドバイス

40 代の不妊治療は    長い道のりも想定して 心のケアも忘れずに

無排卵後の採卵。卵子の質に影響は?

次周期の採卵(ロング法)のためピルでリセット待ちです。本来は 高温期のはずが基礎体温はガタガタ。無排卵かな? と心配です。 前周期が無排卵だと卵子の質に影響しますか? ここあさん(40 歳)

 

生理をきちんと起こした後の 低刺激法で質の良い卵子に。

無排卵の原因には多囊胞性卵巣症候群(PCOS)や、年齢にとも なう卵巣機能の低下が考えられます。高刺激法といわれるロング 法は、通常は 35 歳未満で卵巣予備能(AMH)が良く、月経周期 が正常な方に適しています。月経開始前の高温期に GnRH アゴニ スト(ブセレリンなど)の点鼻薬で排卵を抑え、長期間にわたり 卵巣を刺激します。そのため、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)など のリスクも高くなります。無排卵の原因がどちらの場合もロング 法は向いていないと思います。

ここあさんの詳しい状態がわからないですが、一般的に 40 歳の 方にロング法をおすすめすることはまずありません。無排卵で高 温相にならないということは、リセットのためのピルが効いてい ない可能性もあります。卵巣機能が低下して高刺激法を始められ る状態ではないと思います。

まずはピルなどで生理をきちんと起こしたうえで、レトロゾールなど の内服薬と注射薬を組み合わせた低刺激法を試されてはどうでしょう か。この方法のほうが質の良い卵子が採れる可能性は高いと思います。

卵子の育ちが悪いです。

卵胞が採卵可能な大きさに育ちません。HMG 注射と排卵 止めの薬を飲み D14 で採卵を判断しますが、今まで D15  以降の採卵は受精確認できていません。何か卵子が順調に 育つ方法は?  はなさん(44 歳)

40 歳からの体外受精に必要な卵子は平均 15.8 個!

体外受精で 1 回の妊娠に必要な卵子数は、30 歳で7個、  44 歳では 42 個という統計データがあります。つまり 1 回に 採れる卵子が 1 〜 2 個の場合は、20 〜 30 回の採卵が必要に なるということです。40 歳以上の方の体外受精では、「治療 の道のりが長くなるかもしれない」ことを前提に、ご夫婦が 納得されて治療を受けていただくことが大事だと思います。

はなさんの場合は、これまでと同じ刺激法で卵胞が 15 〜  16mm以上に育たないと思ったら、そこで採卵して受精卵に育 てて凍結するといいでしょう。費用はかかりますが、この繰 り返しを根気よく続けられることが大切です。卵胞は 15mm になれば採卵できますので、18mmにこだわることはありませ ん。こうしてある程度の個数の受精卵を貯めて凍結融解胚移 植をされるといいと思います。また、年齢が高い方は子宮内 膜の状態が良好でしたら新鮮胚移植も一つの方法です。

治療を続けていくなかでは、心が折れることもあると思い ます。そんな時は医師やスタッフに遠慮なく相談してくださ い。またカウンセリングの活用も治療の大きな助けになりま す。当院でも 45 〜 47 歳の方がこうした治療を乗り越えて妊 娠されています。はなさんも「良い卵子に出合えたらいいな」 くらいのゆとりをもって治療にのぞまれると、良い結果につ ながると思います。

 

甲状腺の検査を受けるべき?

体外受精で陰性が続いています。喉の違和感、寝る時に 足の裏が熱い、やる気が出ないなど甲状腺疾患の自覚症 状が…。気になりますが、検査を受けるか迷っています。 エンジェルエッグさん(40 歳)

潜在的な甲状腺疾患の人も 治療をすると妊娠率が改善

甲状腺疾患は若い女性に圧倒的に多く、不妊症や流産の原 因に甲状腺機能の低下が影響していることがあります。当院 は 2019 年から近隣の甲状腺専門クリニックと連携して独自 のガイドラインを作成し、初診のすべての方に甲状腺検査を 行っています。その結果、自覚症状がなくても甲状腺機能が 落ちている「潜在性甲状腺機能低下」の方が 30%以上見つか り、当院だけでも累計 100 名以上に及びます。しかし、この ような方が甲状腺専門医のもとで適切な治療を受け、甲状腺 機能をコントロールしながら不妊治療を行うと、体外受精前 の妊娠率は飛躍的に高くなります。

エンジェルエッグさんも甲状腺検査は必ず受けて、少しでも 疑いがあれば甲状腺の専門医に診てもらいましょう。たとえば 異常値だった場合は、お薬を服用して 2 カ月ごとに採血して経 過観察します。また、明らかに甲状腺機能が低下している場合は、

「今月の妊娠や胚移植は控えてください」といった専門医の指示 が出ますので、無駄な移植や流産などのリスクを抑えられます。 もともと甲状腺検査は卵管造影検査の予備検査として行わ  れていましたが、この検査をきっかけに甲状腺疾患や橋本病 が見つかるケースは増えています。甲状腺機能は年齢ととも に低下しますから、自覚症状がない方もぜひ受けられることをおすすめします。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。