AMHが低いのは喫煙習慣が関係している?妊娠は難しいでしょうか
残っている卵子の数や卵巣機能を示しているといわれているAMH値。喫煙習慣 があると年齢平均より低くなる、つまり卵巣機能が悪いというのは本当なのでしょ うか。ファティリティクリニック東京の小田原靖先生に詳しいお話を伺いました。
ドクターアドバイス
- FSH 値や胞状卵胞数も併せて評価を。
- 卵巣刺激でより多くの卵子を確保して。
- 今禁煙してもAMH 値は変わりません。
卵巣機能の評価はAMH値のほか、FSH値や胞状卵胞数も参考に
―― 41歳で0・54ng/mlというAMH(抗ミュラー管ホルモン)値についてどう思われますか。
小田原先生● 41歳だとAMHの平均値は歳だとだいたい1.3ng/ml、44歳だとだいたい0.66 程度ですから、sakura さんは 44~45 歳くらいの値に相当します。データとしては年齢に比べて低いことになりますね。
AMH値が低いこと自体、確かに発育卵胞数が少なかったり、年齢が高くて低AMHの方は卵巣刺激をしても採卵数が少ない傾向があります。しかしそれはあくまでも統計的なもの。当然個人差がありますから、AMHが低く41 歳くらいのご年齢でも4個、5個程度、卵子の採取が可能なケースも十分あります。
――低AMHの方でも妊娠できる可能性はあるのでしょうか。
小田原先生●卵巣機能の評価はAMHだけでは なく、月経中のFSH値と胞状卵胞数も参考にします。sakura さんのFSH値がわからないので何ともいえませんが、FSH値がを少し超える程度であるとすれば、低刺激ではなく、通常の卵巣刺激でも十分卵子が採れるケースもあります。年齢が上がってくると正常な染色体をもつ卵子の率が減ってきますから、卵巣刺激である程度卵子の数を確保した ほうが妊娠に至る可能性が高くなるということになりますね。
FSH値が20mlU/mlに近いような状況であれば強めの刺激をしても卵子が多く得られる可能性は低いと思いますが、10mlU/ml台の前半に保たれており、なおかつ胞状卵胞がある程度見えているのであれば、卵巣刺激をして体外受精を試してみる価値はあるのではないでしょうか。卵子の数を多く採るほうが妊娠に結びつくということは、現在のご年齢とこの状況からすれば間違いのないこと。ある程度数が採れるのであれば、今よりも強めの刺激法でトライするのは良い選択だと思います。
今禁煙してもAMH値は変わりませんが、妊娠にとってやはり喫煙は禁物です
――AMH値が低いのは喫煙習慣が関係しているのですか。
小田原先生●確かに統計的には喫煙をしている方のAMH値は低い傾向があります。ただしそれは長い喫煙習慣の中であることで、今止めたから値が急に良くなるということはありません。それを聞いて「では禁煙しなくてもいいのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、血管を硬化させるなど喫煙は妊娠にとって良くないことはわかっていますから、たばこを吸っている方はきっぱり止めたほうがいいでしょう。
ほかに気になる嗜好品としてアルコールがありますが、これに関してはAMHと明らかな関係性は証明されていません。何をしたら下がるということよりも年齢を重ねた結果という部分が大きいので、今急に何かを変えるということをしなくてもいいと思います。AMHの値をどうにかしようと考えるのではなく、いかに卵巣から妊娠する可能性のある卵子を引き出してくるかが重要。なるべく多くの受精卵を得て、胚盤胞までもっていくようにし、複数の受精卵を凍結。まずはそこを目指して治療を進めていくことが大切だと思います。
―― s a k u r a さんは子宮内ポリープもあるそうです。
小田原先生●一度、子宮鏡でポリープの状態や子宮内膜に炎症がないかどうかチェックしてみてはどうでしょうか。炎症が引き金となっていて、着床を阻害する可能性があるということであれば、移植する前に掻爬して取り除いておくのが好ましいかと思います。単一的に子宮の下部にあり、付随する炎症がなければ着床にはほとんど影響はありませんので、手術は必要がない場合もあります。卵巣刺激法のほか、子宮の環境についても先生とよくご相談して進めていっていただきたいですね。