性感染症にかかったことがある人は、生殖能力が低下することがある?

妊活の一歩はまず知ることから。妊娠・出産について、あなたはどのくらい知識がありますか? 〇×クイズで、妊娠の知識を高めましょう!

奥 裕嗣 先生 1992年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病院勤務の後、アメリカに留学。 Diamond Institute for Infertility and Menopauseにて体外受精、顕微授精等、 最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、IVF大阪クリニック勤務、IVFなんばクリニック 副院長を経て、2010 年レディースクリニック北浜を開院。医学博士、日本産科婦人科 学会専門医、日本生殖医学会生殖医療専門医。

性感染症にかかったことがある人は、生殖能力が低下することがある?

クラミジア感染症は不妊症の原因に。抗原検査で陽性が出たら、ご夫婦で治療を

性感染症(STD)にはいくつか種類がありますが、なかでも妊娠のリスクになりやすいのがクラミジア感染症です。女性は感染しても自覚症状がほとんどありません。気づかずに放置してしまうと、子宮頸管から子宮内膜、卵管へと感染が広がり、それぞれに炎症を引き起こします。たとえば、子宮頸管炎になると頸管粘液不全、子宮内膜炎は着床障害、卵管炎は卵管の詰まりや癒着による卵管障害につながり、不妊症の原因になります。

クラミジアの検査には「抗原検査」と「抗体検査」の2つがあります。抗原検査は子宮入口の粘液を採取し、活動しているクラミジアの存在を探して、現在感染しているかどうかを調べます。また、抗体検査は血液検査で抗クラミジア抗体を調べることによって、クラミジアに感染した経験などが確認できます。有効な治療を行うためには、体の中に活動しているクラミジアが存在しているかどうかがポイントになります。かならず「抗原検査」を受けるようにしましょう。

抗原検査で陽性になった場合は、ジスロマックⓇという抗菌薬を1日4錠、1回服用するだけで、ほぼ治療は終了します。どの性感染症にもいえることですが、1回の性交渉で60〜70%の頻度でパートナーに感染します。ご夫婦で同時に治療することが重要です。

不妊の原因は、男性と女性が半々である? 

不妊原因の約半数は男性にも問題が。男性もすすんで検査を受けて

WHO(世界保健機関)によると、男性のみの原因は24%、男性と女性の両方の原因は24%。これを合わせると約50%になります。男性の不妊原因の割合は、精巣で元気な精子がつくられていない原因不明の造精機能障害が90%。残りの10%は精索静脈瘤や精路閉鎖など原因が明らかになっているものです。

当院では、男性は初診時に問診・血液検査・精液検査・超音波検査を行っています。血液検査ではFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)、テストステロン(男性ホルモン)を調べます。たとえば、精巣を刺激して精子をつくる働きがあるFSHの値が高くなると、精巣や精子に問題があることが推測できます。また、超音波検査では乏精子症や精子の運動率の低下につながる精索静脈瘤などが発見できます。

検査の結果、原因がわからない方は、血流の改善をうながす漢方やサプリメントを服用してしばらく様子をみます。また、原因が明らかな重度の男性障害の方は、奥様から良好な卵子が採れれば、顕微授精で治療できる場合がほとんどです。

検査に抵抗がある方は、まずは精液検査だけを受けることもできます。男性の原因が早く見つかれば、ご夫婦で適切な治療に早く進めます。治療のスタートが早いほど奥様の年齢も若いですから、それだけ妊娠率も高くなります。さらに、場合によっては女性が不必要な検査や治療をせずに済みますので、限られた時間とお金を有効に生かすことにも。男性もすすんで治療を受けていただきたいですね。

 

 

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