体外受精による子どもの割合は60人に1人?

妊活の一歩はまず知ることから。妊娠・出産について、あなたはどのくらい知識がありますか? 〇×クイズで、妊娠の知識を高めましょう!

小林 淳一 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1984年より習慣流産の研究と診療に携わり、1989年よ り済生会神奈川県病院においてIVFを不妊症・不育症の診療に導入。その後、新横浜 母と子の病院の不妊・不育・IVFセンター長に就任。2003年、神奈川レディースクリニッ クを開院する。患者さまの個々のペースに合わせた無理のない医療を目指す。

体外受精による子どもの割合は60人に1人?

5年後くらいには10人に1人は体外受精児に!?


「60人に1人というのはいつの時代の話?」という感じですね。国内では昭和57年から体外受精を始めているのですが、当時は50人を1クラスと考えると、その中に体外受精児は1人いるかどうかという割合でした。

グラフを参照すると、少子化、つまり総出生児数は減少傾向にあるのに、生殖補助医療で生まれた赤ちゃんは増加しています。平成28年においては総出生児数が100万人を切って98万人程度になっているのですが、体外受精児はさらに増えて5万4110人に。18人に1人という割合にまでなってきています。

このまま少子化に歯止めがかからなければ、来年にはおそらく出生児数は90万人を割れ、5年後くらいには10人に1人は体外受精児になると考えられているんですね。

体外受精児が増えている要因の一つは、このように少子化で割合が増えたということ。もう一つはメディアなどによる啓発や情報の開示が進んで正しい知識が深まり、生殖補助医療に対して抵抗をもたなくなったことがあげられるのではないでしょうか。

また、日本での生殖補助医療の歴史はまだ30年ほどですが、その間、経腟エコーによる採卵、顕微授精、胚凍結、経腟のプロゲステロン製剤、タイムラプス胚培養など、いくつもの革命が起こって治療の技術や精度が格段に進歩し、結果、妊娠率が上がってきたことも体外受精児が増加している要因になっているでしょう。

流産の最も多い原因は赤ちゃんの染色体などの異常?

流産原因の80%以上は受精卵の染色体異常


流産を含め、妊娠や着床がうまくいかない原因の80%以上は受精卵の染色体異常と考えられています。「体外受精の流産率は高い」といわれることがありますが、それは自然の状態だったら妊娠しない卵を移植しているからです。生物は元々自分で淘汰する力をもっているので、普通だったら生命力のない異常な卵は選ばれません。子宮内膜も卵管内の受精環境も「この卵は使わないほうがいいね」と感じて、あえてダメにしているんですね。少し悪いいい方をすれば、体外受精はその自然のシステムに反し、本来は生き残れない卵を選んでしまっていることもあります。

なるべくよい受精卵をつくり、丁寧に分析・選別するようにしていますが、見た目の評価はできても中の状態までははっきりわかりません。近年、良好な胚を何度移植しても流産してしまう人はPGS(着床前スクリーニング)という検査が受けられるようになりました。これは胚を検査し、染色体が正常なものだけを移植することを目的としています。

あらかじめ異常な胚は排除できるので確かに流産率は減るかもしれませんが、移植に使える胚も減ってしまうというデメリットも。高齢の人や習慣流産の人にとって本当に有効な検査なのか、今後、そのへんのバランスが課題になってくるかと思います。

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