移植14回も繰り返す流産。治療法は?【医師監修】

現在35歳のレトロプリンさんは、不妊治療歴5〜6年。先日、14回目の移植が陰性に終わったそうです。今後、どのような治療を選択していけばよいのか、受けるべき検査はあるのか、徐クリニックARTセンターの徐東舜先生に教えていただきました。

レトロプリンさん(35歳)からの質問 第一子は自然妊娠で出産し、2017年から二人目妊活を開始。人工授精8回行うもすべて陰性だったため、体外受精にステップアップしましたが、陰性、稽留流産を繰り返しています。転院後に受けたnk活性、Th1/Th2などの検査は問題なし。慢性子宮内膜炎があり、治療済み。主治医の見解は「状態のいい凍結胚を移植してhCGが出ているが、何回も化学妊娠を繰り返したり2回稽留流産している。やはり、子宮環境のせいかもしれないから再度CD138と子宮鏡の検査を受けるべき」とのこと。2年前に治療済みで、ALICE検査でも陰性だが、再度検査するべきなのか。夫婦遺伝子検査もおすすめとのこと。もはやPGT-Aしかないのでしょうか。先日、14回目の移植が陰性に終わりました。治療や検査をやり尽くした感があり、先生も過去に受けた検査の再検査(CD138、子宮鏡、遺伝子検査)を勧めることや、採卵して移植し続ける話になってしまいます。何度も同じ検査をするのも疑問に感じています。今後、どうしたらよいのでしょうか。
【医師監修】徐 東舜先生(徐クリニックARTセンター)大阪大学医学部卒業。大阪大学病院、愛染橋病院、大阪府立成人病センター、西宮市立中央病院(医長)を経て、2000年、徐クリニックARTセンターを開業。産婦人科専門医。生殖医療指導医。妊娠・出産にいち早く近づけることを最優先に、質の高い治療でサポート。腹腔鏡や子宮鏡手術は1000例を超える。

1 流産胎盤の染色体検査を行うべき

なぜ、良好胚を移植しても流産を繰り返すのでしょうか?

通常、流産処置の際に流産胎盤の染色体検査を行い、原因が胎児側だったのか母体側だったのかを鑑定します。母体側であれば原因の一つに慢性子宮内膜炎がありますが、レトロプリンさんはALICE検査で陰性なので、医師が提案するCD138検査を改めて行う必要はないでしょう。胎児側であれば、解決策としてPGT-A検査で染色体異常がない胚を移植する、という方法があります。

主治医からは夫婦の染色体検査を提案されているようですが、順番としてはPGT-Aが先。4BAや4ABの良好胚を移植しても、35歳という年齢では見た目では良好でも半分以上に染色体異常があります。PGT-Aは現段階では先進医療になっていないので、取り扱いや考え方は施設によって異なるかもしれませんが、2回以上移植して結果が出なければ、原因を突き止める手段として胚を調べるべきでしょう。レトロプリンさんに至っては、14回も移植して陰性がつづいていますから、すでにPGT-Aを考える段階だと認識していただきたいですね。

 

2 自然周期で妊娠継続を目指す方法も

先生なら、どのような治療法を提案されますか?

たとえば、これまでずっとホルモン補充周期なら、自然周期を提案します。

ホルモン補充周期はエストロゲンとプロゲステロンという2剤で子宮内膜を育てますが、内膜を調整するには他にも因子が必要で、卵巣から出てくるさまざまな物質の影響によって着床しやすい環境をつくっていると考えられます。実際に、ホルモン補充周期は癒着胎盤が多くなる、流産率や妊娠率が自然周期に比べて低い、などの報告もあり、当院でも徐々に自然周期に変えていったという経緯もあります。排卵こそ人工的に行ったとしても、卵巣に黄体をつくったあとは、黄体から出現するホルモンで妊娠維持させるほうが、結果的にはその後の経過は良好とも言えるので、よほど生理不順などがなければ自然周期を試してみてはいかがでしょう。

ほかに、子宮鏡検査はエコーでは確認できないポリープや癒着などが見つかる可能性があるので必須。レトロプリンさんに有効かはわかりませんが、着床不全の患者さんにはPRP療法を提案する場合もあります。

 

3 原因を突き止め、時には違う方法も試してみる

最後に、アドバイスをお願いします

レトロプリンさんの治療歴や検査歴を見ると、原因がわからないまま長い期間をかけてやみくもに治療している、という印象を受けます。不妊治療は精神的なものにも左右されがちですし、何回も同じ方法で良好胚を移植していつも失敗する、というのは辛いことです。1つでも2つでも、何か少し変えるだけでリフレッシュできることもあるので、あまり気負わずに治療に向き合いましょう。

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