子宮内膜が厚くなりません。移植日はどのように決めるの?

凍結胚移植を予定。

移植日がD28以降でも よいのでしょうか?

神谷 博文 先生 札幌医科大学卒業。同大学産婦人科学講座、第一病理学講座に 入局後、斗南病院にて産婦人科科長を10年間務める。1998年、 神谷レディースクリニックを開業。現在、非常勤医を含めて医師を6 名に増やすなど、診察の体制を強化。専門の不妊カウンセラーや体 外受精コーディネーターも相談にのるなど、患者さんが安心して治療 に取り組める環境づくりに力を入れている。
ゆきさん(39歳)からの相談 Q.体外受精にすすみ、1回目は陰性となり、2回目は採卵から5日目の胚盤胞 を凍結しました。ホルモン補充周期法で移植の予定です。D14(生理開始日 から14日)で内診をしたところ、子宮内膜の厚さが6㎜弱でまだ薄く、移植 日を決められませんでした。医師には、子宮内膜がもう少し厚くなるのを待ち、 D21に再度内診、移植日を決めると言われています。D21に十分な厚さがあ れば、D28 あたりの移植と言われたのですが、いろいろネットで調べてみると、 これだけ遅い移植の方は見つけられず、D25以降は破綻性出血の可能性があ るので勧めないとコメントしている医師もいて、どうしたらよいのかわかりませ ん。移植するタイミングは、どのように決めているのでしょうか。

子宮内膜の厚み

ゆきさんは、子宮内膜が厚くならず、移植予定日が延びています。移植にはどれくらいの厚さがあればよいのでしょうか。
神谷先生 子宮内膜の厚さが十分ではないことは不妊の原因の一つです。
一般的には厚さ7㎜以上、できれば8㎜以上で良好胚であれば、臨床的妊娠率は 40 〜 50 %、継続妊 娠率は 30 %以上といわれます。
着床するか どうかは胚の質によるところが大きいため、染色体の状態を含めて良好胚であれば、厚さ7㎜以上になれば移植してもいいと考えます。
ゆきさんは6㎜弱ということですから、40 %以上の妊娠率を期待するのであれば7 ㎜以上になるまで待つほうがよいでしょう。
しかし、子宮内膜の厚さは体質によります。当クリニックでは、子宮内膜が薄い人には、子宮内膜の血流改善のため、血管拡張作用のあるビタミンEやリアージュ、小児用バファリン、エストロゲンの追加投与などを治療法の一つとして用いることがあります。

ホルモン補充周期法

凍結胚移植の場合、移植日はどのように決まるのですか?
神谷先生 ホルモン補充周期法は、エストロゲン(卵胞ホルモン)と黄体ホルモンを投与して、子宮内膜の調整を行い着床しやすい状態にして凍結胚移植を行う方法です。
エストロゲンの働きで子宮内膜が約7〜8㎜以上になったタイミングで、黄体ホルモンを追加し、移植日を決めるのが一般的。
自然周期に近いタイミングになるようにエストロゲン、黄体ホルモンを投与するのが基本ですから、生理周期が 28 日型の場合は、排卵日にあた るD 14 までに子宮内膜を7㎜以上にして黄 体ホルモンを追加、 3 日目の初期胚を凍結した場合はD 17 に移植、胚盤胞を凍結した 場合はD 19 に移植を行います。
凍結胚移植は、ホルモンを投与しない「自然周期法」と「ホルモン補充周期法」があります。
「自然周期法」は生理周期が規則正しい比較的若い方に向いています。
一方、「ホルモン補充周期法」は移植日が明確で、特に働く女性の場合、仕事の調整がしやすいメリットがあります。
どちらの方法も妊娠率は変わりません。

破綻性出血の可能性

ゆきさんは、移植予定がD 28 頃と、遅いこ と、破綻性出血の可能性があることを心配されています。移植時期が遅れることで、妊娠率に影響はありますか?
神谷先生 D 28 以降でも破綻性出血が起き ていなければ移植に問題はありません。
報告では、エストロゲンの投与が最短6日間でも、最長 60 日間でも、その後の移植で妊娠 率に違いはありません。
大切なのは、黄体ホルモンを投与した日を採卵日と規定して、凍結胚を融解し、移植するタイミングです。
長期間エストロゲンを使用していると、子宮内膜を維持できずに破綻性出血を起こすことがありますが、それはその可能性がある、ということ。
D 28 以降でも、破綻性出血が なければ、移植を実施することに問題はありません。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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