連続流産、今後の治療と不育症検査について

Q 2回連続で同時期に稽留流産。 不育症検査を受けたほうがよい?

前沢忠志 先生 日本産科婦人科学会専門医、指導医。日本生殖医学会専門医。母 体保護法指定医。2006年浜松医科大学を卒業後、初期研修を経 て三重大学産科婦人科の医局に入局。済生会松阪総合病院、紀南 病院などを経て、2012 年よりIVFなんばクリニック、IVF 大阪クリニッ クで不妊治療を学び、2016年より三重大学医学部附属病院勤務

ドクターズアドバイス

●2回連続で流産しても、不育症であるとは限りません。
●自信をもって次の妊娠に臨むために、一度不育症検査を受けてみては?
かなこさん(34歳)からの相談 Q.2人目不妊治療中です。現在3歳の1人目も治療し、ゴ ナールエフ ® 自己注射での排卵誘発によるタイミング法で 妊娠しました。1年3カ月前に2人目の治療を始め、治 療開始から5カ月で妊娠しましたが7週で心拍確認前に 稽留流産。その2カ月後に治療を再開し5カ月目で妊娠 するも、また7週で心拍確認前に稽留流産してしまいまし た。2回連続同じ時期での流産で、かなり落ち込んでい ます。今後の治療について、同じ方法でよいかステップアッ プしたほうがよいのか、不育症の検査は受けたほうがよい のでしょうか? ちなみに、1回目の流産後、治療をして いる際に主人が突然EDになってしまい、タイミングはシ リンジ法で行っています。よろしくお願いいたします。

かなこさんの状況をご覧になって、前沢 先生の所見はいかがですか。

前沢先生 まず、妊娠したということはその力のある卵子であるということなので、特に採卵までの方法は変える必要はないと思います。問題は受精卵が育たない、ということなので不育症検査を受けることを推奨します。

不育症の可能性が高いのでしょうか?

前沢先生  2 回以上連続して流産すると不育症だとされていますけれど、 1 回の妊娠で問題なく出産に至る確率は 20 %くらいで す。逆に言えば 8 割の人は流産するか着床しないで終わってしまう。なので、 1 回の流産は珍しいことではありません。それが2 回だと少し確率がある。 3 回目となるとさすがに何か原因があるのではないか?   と調べていくことになりますが、 2 回流産した時に検査をすすめることが多いです。
その結果、「何も問題ない」と診断される人が 7 割くらいだと言われています。 7 割が問題なければ検査する必要があるの?   と思われるかもしれませんが、流産は悲しみもすごく大きいですし、手術による体への負担も大きい。また次も流産するのではないかと妊娠するのが怖くなる方もいるので、「問題ないことを確認する」という意味合いも大きいんです。

検査を受けて何もなければ、安心して 次の妊娠に臨めるということですね。

前沢先生 異常がなければほとんどの人が 3 回目で妊娠して出産まで行ける、ということをきちんと説明したうえで治療を進めていくことが非常に重要です。

不育症の検査はどのように行うので しょうか。

前沢先生 大部分が血液検査です。不育症の原因はいろいろあって、妊娠すると赤ちゃんを異物とみなして攻撃しないよう「免疫学的寛容」という作用が働くはずなんですが、それがうまく働かない体質の人や、「微小血栓」ができやすい体質の人がいます。脳梗塞や心筋梗塞など命にかかわるような病気を引き起こす大きな血の塊ではなく、小さな血栓。子宮には細い血管が張り巡らされているので、そこに血栓ができることで赤ちゃんに十分な酸素や栄養分が行かなくなる。そうすると妊娠はしても育っていかず、流産を繰り返すことがあります。そういう体質ではないかどうかを調べます。

2 回とも同じ時期に稽留流産されている 点はどうでしょうか?

前沢先生 同じ時期だからこの原因、という特定は難しいのですが、一般的に妊娠初期の流産は赤ちゃん側の原因…つまり染色体異常であることが多いです。お母さん側の原因=不育症と診断されるのは 1 割くらいと全体から見れば少ないですが、 2 回続けてということであれば、調べてみる価値はあります。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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