PCOSでAIHは意味ある?

PCOSですが主人の精子は良好。 体外受精でなく人工授精する意味は?

排 卵 障 害 のなかでもっとも 多 いとされるPCOS。

実 際 の 治 療 の 流 れや、 人工授精や体外受精を検討するタイミングについて、 醍醐渡辺クリニックの山口剛史先生にくわしく教えて頂きます。

山口 剛史 先生 奈良県立医科大学卒業。2007 年京都府立医科大学大学院医学研究科 統合医科学専攻、同博士課程修了。公立南丹病院、京都府立与謝の海 病院産婦人科医長などを経て、2010 年より醍醐渡辺クリニック勤務。

ドクターアドバイス

人工授精でPCOS以外の 原因が見つかる可能性も
PCOSで排卵ができていることと、どのような形 で精子を卵管に到達させるかは別問題ですので、人 工授精も試す意味はあると思います。 インスリン抵抗性や肥満の改善は、流産や妊娠合併 症のリスクの低下にもつながります。
かぷりこさん(23歳)Q.PCOSのため、結婚を機に不妊専門クリニックに通院しています。 さまざまな検査をしましたが、男性ホルモン値が少し高いと指摘され た以外は、歳の差がある主人ともに問題ありません。現在、グリコラ ンⓇを服用し、クロミッドⓇと注射でゆっくりですが排卵しています。 3カ月間タイミング指導を受けており、結果が出なければIVFをし たいと希望しましたが、私が若いので「今すぐIVFをする必要はな いんじゃない?」といわれ、AIHをしました。主人に問題がないの にAIHをする意味はあるのでしょうか?

主な不妊原因の一つだが 本質的な病因の解明は不特定

PCOS(多囊胞性卵巣症候群)は、性成熟期の月経異常や不妊のおもな原因の一つといわれています。海外の診断基準もありますが、国内では日本産科婦人科学会の診断基準に基づいて、①月経異常②多囊胞性卵巣③ホルモン値の異常(血中の男性ホルモン高値、またはLH値の高値、かつFSH値の正常)のすべてを満たす場合をPCOSとしています。
 家族性発症や人種間で差異が見られる ために、何らかの遺伝的背景があるものと推測されていますが、いまだ本質的な病因は特定されておらず、予防法も確立していません。2型糖尿病や肥満などもリスク因子といわれていますので、血糖異常や肥満(BMIが 25 以上)の人はなりやすいといえるかもしれません。

PCOSの程度により 飲み薬から体外受精まで 段階的に治療

妊娠を希望される人でBMI 25 以上の肥満に該当する場合、インスリン抵抗性を上昇させますので、減量によりインスリン抵抗性を改善するようにします。標準体重まで落とせなくても5%程度の減量で、排卵の再開やインスリン抵抗性の改善といった内分泌の状態を改善する傾向がみられ、臨床的に意味があるといわれます。そのうえでクロミフェンという飲み薬を用いたり、肥満や耐糖能異常がある場合は、血糖値を下げる目的でメトホルミンなどを併用して排卵を促すようにします。

また、BMI 25 未満で非肥満のPCOSの人、あるいは肥満の人で減量・運動でも排卵がない場合は、クロミフェン療法が第一選択になります。高プロラクチン血症を示す場合は、ドーパミンアゴニ スト(カバサールⓇなど)を併用。また、副腎性高アンドロゲン血症を示す場合 は、グルココルチコイド(プレドニンⓇなど)を併用することがあります。

PCOSの人は内因性のLH値が高く、それでも卵胞発育が不良であったり、排卵しない場合は、FSH(卵胞刺激ホルモン)の注射剤を少しずつ増やしながら卵胞を刺激したり、クロミフェンとFSHの併用療法を行います。

薬物療法で難しい場合は、卵巣表面に小孔を多数あける腹腔鏡下卵巣多孔術という外科的手術を行います。術後の自然排卵率は 74 %、妊娠率は 60 %といわれ、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)と多胎妊娠のリスクが低いというメリットがあります。

それでも排卵しない場合は体外受精を検討します。PCOSの人はOHSSを起こしやすい傾向がありますので、胚移植は卵胞刺激周期で行わずに、卵巣が鎮静化してから実施することが多いです。

排卵誘発法を併用した 人工授精は妊娠率の上昇を 期待できるので試す意味はある

PCOS以外に不妊原因がない場合は、排卵誘発剤を用いてOHSSにならないようにできるだけ複数個の排卵をめざします。かぷりこさんが行っている治療の流れに大きな疑問はありませんが、3カ月間のタイミング治療を行っている間にヒューナーテストは実施されたでしょうか?

 もしも頸管粘液中の運動精子の状態が不良であれば、抗精子抗体を調べてみてはどうでしょうか。ヒューナーテストで問題がなく抗精子抗体も陰性であれば、ご主人の精液検査の結果では濃度、運動率、量ともに問題ありませんから、必ずしも人工授精をしなくてもよいと思います。

AIHの実施については、原因不明不妊の場合でも排卵誘発を併用した人工授精は、人工授精を単独で行うよりも妊娠率が上がり、排卵誘発周期の自然性交に比べて妊娠率が上昇するといわれています。人工授精を試してみるのは、あながち間違っていないと思います。仮にヒューナーテストが不良で抗精子抗体が陽性であれば、3時間あけて人工授精を反復してみるのも一つの方法です。ご主人とは年齢差があるそうですが、精子も老化するといわれていますので、受精能力など精液所見だけで片付けられない原因もあるかもしれません。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。