黄体機能不全の治療法は クロミッド Ⓡが基本?
受精卵の着床や妊娠の維持によくない影響を及ぼすといわれている 「 黄 体 機 能 不全 」。
そ の原 因 や 有 効 な 治 療 法 などにつ いて、 かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生に詳しいお話を伺いました。
ドクターアドバイス
黄体機能不全とは どんな病気?
黄体ホルモンというのは、排卵したあとの卵胞が黄体化して、そこから分泌されるホルモンです。下垂体から分泌されるLHが黄体を刺激して分泌されるのだろうといわれていますが、具体的なことはまだわかっていません。
黄体機能不全はこの黄体ホルモンを分泌する黄体が何らかの原因でうまく機能せず、黄体ホルモンの分泌が減少してしまう状態をいいます。
自覚症状はある? 検査法や診断基準は?
基礎体温を測っている場合は、「高温期 が維持されにくい」状態も黄体機能不全を疑う一つの目安になります。ただし、それだけで確定的な診断はできないでしょう。
病院で採血をして黄体ホルモン値を調べ、きちんと診断を受けることが一番だと思います。
黄体中期(排卵してから5~7日目くらい)の血中のプロゲステロン(黄体ホルモン)値を計測。ピーク時に 10ng/ ml 以上あれば十分に黄体ホルモンが分泌されており、それ以下だと黄体機能不全と診断される可能性があります。
黄体ホルモンが足りないと、受精卵が子宮内膜に着床しにくい状態になると考えられています。妊娠を希望されている方は対処が必要になってくるでしょう。
黄体機能不全の治療は クロミッドⓇがベスト?
黄体ホルモンの分泌を正常にするものに、いくつかの治療法があります。
1つは、プロラクチンというホルモンが高い場合に、その分泌を抑える薬を使います。このホルモンは排卵を抑制すると同時に排卵したあと、黄体ホルモンの分泌も抑えてしまいます。もし高プロラクチン血症が原因であれば、薬で治療することで黄体機能の改善が期待できます。
それから、たじゃさんもおっしゃっているクロミッドⓇによる治療。これは排卵誘発剤で、確かに黄体機能不全にも効くといわれていますが、長期の使用で子宮内膜を薄くしてしまう副作用があります。黄体ホルモンの分泌が増えても、子宮内膜が薄いままだと着床に影響が出ることがあるので、長期服用しないなど、注意しながら使う必要があるでしょう。
また、HCGというホルモン製剤にも黄体ホルモンの数値を上げる作用があります。効果はかなり高く、自然周期での使用は問題ありません。しかし排卵誘発剤を使用した体外受精の刺激周期など、エストロゲンが高い状態で使うと、OHSS(卵巣過剰刺激症候群)を引き起こすことがあり、場合によっては注意しなければいけません。
黄体補充をすれば 子宮内膜も厚くなる?
最も適切で安全なのは、黄体ホルモンの薬で、直接補充する方法ではない でしょうか。黄体ホルモンはエストロ ゲンの値が高いと逆に低くなってしま う傾向がありますから、体外受精の場 合は必ず黄体補充療法を行います。
ただし、黄体補充で黄体ホルモンの 分泌状態がよくなっても、子宮内膜は あまり厚くならない人も。そのような 時は超音波で内膜の状態を詳しく診た り、場合によっては内膜の病理検査を することもあります。
残念ながら、黄体機能不全はすべて の方に合う効果的な治療法はないの で、一人ひとりの状態に合わせて、ど んな形で治療していったらいいか考え ていくことになるかと思います。