体外受精の継続について

3回の化学流産

このまま移植を続けて 結果が出るのか不安です

奥 裕嗣 先生 1992年愛知医科大学大学院修了。蒲郡市民病院勤務の後、アメリカ に留学。Diamond Institute for Infertility and Menopauseにて体外 受精、顕微授精等、最先端の生殖医療技術を学ぶ。帰国後、IVF大 阪クリニック勤務、IVFなんばクリニック副院長を経て、2010年レディー スクリニック北浜を開院。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日 本生殖医学会生殖医療専門医。タイムラプスの導入後、独自の基準 で卵子の選別を試みて妊娠率が上昇している先生。「タイムラプスで受 精卵の形態的な評価以外の評価ができる時代となっています」。これから データを収集し、学会で発表していく予定だそうです。
echoさん(40歳)からの相談 Q.3回目の胚盤胞移植をして反応はあるものの、hCG数値が低く継続できません。 このまま移植を続けて良い結果が出るのか不安です。子宮頸がん検査でHPV感 染による異形成があり、経過観察中なのですが影響はありますか? また化学流産でも不育症検査をしたほうがよいですか? ほかの検査や対策など何かアドバイ スをお願いいたします。1回目は、移植1週間後hCGは0.6mIU/ml、数日後生理。 2回目、移植1週間後hCG 60.2mIU/ml、10日後hCG 660.8mIU/ml胎嚢確 認ができず、3日後hCG 1084mIU/mlで胎嚢確認ができませんでした。その後、 卵管水腫持ちのため、腹腔鏡手術により両卵管をクリッピング。3回目の移植1週 間後hCG 20mIU/mlで4日後、生理のような出血があり数値が下がりました。

echoさんは、化学流産を3回繰り返さ れています。

不育症検査をしたほうがよいの でしょうか。
奥先生 流産を2回以上繰り返す方を不育症 と診断します。
化学流産を1回の流産とみな すかどうかは、意見が分かれるところですが、 流産を繰り返す方は何か原因が隠れている可 能性があります。
まずは、不育症検査を受け られることをおすすめします。
染色体異常が3回続いている可能性は否定 できません。
ちなみに 40 歳以上の方の受精卵 の染色体異常の割合は 90 %。
染色体異常の受 精卵は着床しにくく、着床しても流産しやす い傾向があります。
さらに、 40 歳以上の流産 率は約 40 〜 50 %あります。

不育症検査には、どのようなものがありま すか。

奥先生 いくつか種類がありますが、代表的 なのはNK細胞活性、抗リン質抗体、血小板 凝集能、プロテインS活性、第 12 因子などで す。
さらに、ご夫婦ともに染色体検査を受け られてもいいかもしれません。
40 歳以上の方 の流産原因の約 80 %は染色体異常で、トリソ ミー、モノソミーといった染色体の「数の異常」 が原因のことが多いようです。
しかし、不育 症の方の約 10 %に、ご夫婦のどちらかに転座 型という染色体の「構造の異常」が見つかる ことがあります。
学会のガイドラインでは、 国内での出生前診断は認められていませんが、 転座型の染色体異常で2回以上流産を繰り返 す場合は、出生前診断が認められています。
受精卵を調べて正常な受精卵を胚移植するこ とによって、流産のリスクを軽減することが 可能です。

子宮頸がん検査でHPV感染による異形 成があるそうです。

こちらの影響はないの でしょうか。
奥先生 子宮頸がんの異形成とは、子宮頸が んの前段階(前がん病変)のことです。
今後、がん化する可能性はありますので、定期的な 検査は必要ですが、不妊の直接的な原因では ありません。
いずれにしても早めに不育症検査を受けて いただくのがよいでしょう。
代表的な不育症 検査で約 70 %の確率で異常が見つかる可能性 があります。
ただ不育症検査の難しいところ は、残りの 30 %は原因が見つからないこと。
すべての方の原因が見つかるわけではありま せん。
さらに、原因が見つかり治療しても、 100%妊娠できるとは言い切れない現状も あります。
ですが原因が見つかり治療するこ とで、次の流産のリスクを軽減できる可能性 はあります。
治療方法は原因によって異なり ますが、いずれも胚移植の前後から行います。
血液系の異常であれば、アスピリンやヘパリ ン療法、免疫系の異常であれば、ステロイド 療法や漢方薬による治療を行います。
また移植については、 40 歳以上の方は受精 卵の分割スピードが遅くなるため、新鮮胚移植よりも凍結胚移植をおすすめします。
ホル モン補充周期に凍結胚移植を行えば、「着床の 窓」が閉まるのを遅らせることができ、着床 のタイミングを逃しにくくなります。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。