原因不明の場合の治療の進め方

検 査 を し て も は っ き り と し た 不 妊 の 原 因 が わ か ら な い 場 合 、加 齢 に よ る 卵 子 の 老 化 も 考 え ら れ ま す 。

そ の よ う な 時 に ど ん な 心 構 え で 治 療 を 進 め た ら い い の か 、宮 崎 レ デ ィ ー ス ク リニックの宮崎和典先生にお話を伺いました。

 

宮崎 和典 先生 大阪医科大学医学部卒業。学生時代の新生児医療への興味が きっかけとなり、体外受精や不妊治療の世界を志す。同大学産科 婦人科講師を経て、1992年に不妊症、不育症治療専門クリニッ ク、宮崎レディースクリニック開業。開業当初より泌尿器科の専門 医による男性不妊外来を開設する。A型・しし座。スイス観光の際 に軽いトレッキングを体験された先生。下りで膝が痛くなり、ほとんど 動けなくなってしまったそう。体力の低下を痛感し、最低週2回のト レーニングを目標に、しばらくお休みしていたジム通いを再開!

ドクターアドバイス

治療やサプリなど 多方面からアプローチ

一つの治療法にこだわらず、時 には一般不妊治療と体外受精を 並行して行うと良い結果につな がることがあります。

卵子の質 を上げる生活習慣やサプリメン トも取り入れましょう。

原因不明の不妊は 加齢による影響が大きい

一般的に女性は 35 歳以上になると、妊娠率の低下 とともに流産率も増加します。

これは加齢による卵 の染色体異常や受精後の胚の発育の悪化によると考 えられていますが、詳しいメカニズムはまだ解明さ れていません。

ただ高齢の女性でも、年齢の若い女 性のドナーから卵子提供を受けると妊娠率が上がる ことから、女性の妊 にんよう 孕力の低下は加齢による卵子の 質の低下が大きな要因であることがわかっています。

細胞内のミトコンドリアの機能低下と卵子の老化を 関連づける研究結果が報告されてはいますが、詳細 はまだ何もわからない状況といってよいでしょう。

現状では卵子の老化を予防したり、卵子を若返らせ る革新的な方法は残念ながらないのです。

一般不妊治療と体外受精を 組み合わせて考える

当院で体外受精による不妊治療を行っている患者 さんの平均年齢は 39 ・ 8 歳。半数の患者さんが 40 歳 以上という状況のなか、最近は治療する側としても 難しい局面が多いです。

統計による女性の妊娠率は 35 歳からどんどん下が りはじめ、 38 歳では 35 歳の半分くらい。

当院では 45 歳で妊娠、出産に至った方が5組ほどいらっしゃい ますが、それはかなり特別なケースです。

とても幸 運な例であって、皆さんが同じような治療をして妊 娠できるかというとそうではありません。

以前は 40 歳以上の患者さんには、最初から体外受 精をすすめていましたが、最近は 30 代の方にも、希 望者には最初から体外受精をすすめています。

当院 の場合、 38 歳以上で初診に来られた方には、「1年以 内に一度は体外受精も考えておいてね」と伝えるよ うにしています。

卵巣予備能には個人差があり、 38歳ですでに手遅れになりかけている方もいらっしゃ います。

実年齢だけでなく、AMH(抗ミュラー管 ホルモン)の値などを参考にしながら、その方に合っ た治療のステップアップが必要です。

生殖補助医療 の技術が確立されている現代、体外受精や顕微授精 はもう「最後の手段」ではありません。

手遅れになっ て後悔する前にチャレンジしておいてほしい治療な のです。

それに、よく「一度、体外受精に進むと、もう前 の治療には戻れない」と思い込んでいる方がいらっ しゃいますが、決してそんなことはありません。

特 に原因不明の不妊で結果が出ない場合、残された時 間を無駄にすることなく、いろいろな治療法を試し てみるべきだと感じています。

卵管や精子に決定的 な不妊因子があるような場合は別ですが、体外受精 だけ、タイミング療法や人工授精などの一般不妊治 療だけと、分けて考える必要はまったくありません。

体外受精も一般不妊治療と組み合わせて並行して やっていけばよいというのが私の考えです。

それぞれの段階の治療から わかることがある

不妊治療にはタイミング療法や人工授精などの一 般不妊治療から、体外受精や顕微授精などの高度生 殖補助医療まで、段階を追って治療を進めていくス テップアップという考え方があります。

「原因不明」 と一言でいいますが、不妊症に関する一般的なスク リーニング検査だけではわからないことが、実際の 治療過程で判明したり、推測できたりすることがた くさんあります。

まずタイミング療法では、卵胞チェックやホルモン 値の検査によって、実際の排卵日がずれていないかど うかを確かめることができます。

生理周期が長めの方 のなかには、毎月きちんと月経があっても年に数回し か排卵されていないような方がいらっしゃるので注意 が必要です。

きちんと排卵日を確認し、黄体期に問題がないかどうかを調べてもらいましょう。

性交後の女性の子宮頸管粘液を顕微鏡で調べる ヒューナー検査では、卵子と精子がうまく出会うこ とができているか、つまり頸管因子がないか、ある 程度のことがわかります。

また、不妊治療にはご主人の協力が不可欠です。

当 院では開業当時から男性不妊外来を設けていますが、 最近は男性が自分から予約をして受診されるケースも 増えました。

ご主人の協力を得られないと、そのため に治療を先に進めることができず、女性が高齢化して さらに状況を悪くすることも懸念されます。

たとえ精液検査をされていても、一度きりの検査結果では男性 側の不妊の原因が見つけられないことも。

人工授精を 行えば、卵管のピックアップ障害や本当に男性因子が ないかどうかを推測することができます。

もし費用の問題があるとしたら、排卵誘発法の見 直しと人工授精という治療もいいと思います。

ただ、 人工授精を5、6回やるにしても最低5、6カ月はか かってしまいますので、それをやらないと「次へス テップアップできない!」と考えるのではなく、あ る程度のところで体外受精もやってみるなど、柔軟 に考えていくといいでしょう。

特に 40 代の治療では、 限られた時間を有効に使うこともポイントです。

卵子の質の改善には、レスベラトロール、エルカ ルニチン、DHEA、メラトニンなど、アンチエイ ジング系のサプリメントや漢方薬も試してみる価値 があるでしょう。

今の医学では卵子の質を劇的に改 善することはできませんが、食事や運動習慣などと 組み合わせて行うことで、良い結果につながるケー スが多々あります。

一つの治療法にこだわらず、そ れらの力も借りながら、柔軟な治療計画を立てるこ とが大切かと思います。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。