卵子の老化 と どのように闘って いけばいいですか?
卵子の老化という厳しい状況下で妊娠・出産を叶えるためにはどうしたら いいのでしょうか。
治療の進め方や老化への対策について、 仙台ARTクリニックの吉田仁秋先生にお話を伺いました。
ドクターアドバイス
40代の不妊治療で もっとも大切なのは 「急ぐ」ということ。
後悔しないように、 早めに集中して治療を!
40 歳を過ぎたら 一般不妊治療は1、2回で ステップアップを考えて
不妊治療にはタイミング療法や 人工授精などの一般不妊治療、そ の上になると高度生殖医療といわ れる体外受精や顕微授精と、いく つかの段階があります。
通常では まずタイミング療法からスタート して、結果が出なければより高度 な治療にステップアップしていく わけですが、それぞれどのくらい の期間トライするかは、年代に よって異なってきます。
当院の場 合、だいたい 35 歳を基点にスピー ドアップをはかっているんですね。
一般不妊治療に関しては、基本 的に 34 歳までの方ならタイミング 療法6カ月・人工授精6カ月。
35歳を過ぎたら3カ月ずつ、 40 歳を 過ぎたらそれぞれ1、2回という度 合いになってきます。
40 代で「早 めに妊娠したい」という方であれ ば、一般不妊治療のステップを飛 ばして、体外受精もしくは顕微授 精から治療をスタートするという ケースもあります。
ステップアップのスピードを考え る時は、実年齢はもちろん、AMH (抗ミュラー管ホルモン)の値など を参考にしながら、その方の卵巣年 齢をチェックすることも重要。
卵巣 予備能が著しく低下していれば、実 年齢がまだ若くてもスピーディな治 療が求められます。
最終的にはご本人の意志で決めて いくので、「タイミング療法や人工 授精でもう少し頑張りたい」という 方は、できるだけそのご希望に沿 うように治療方針を立てていきますが、あまりそこで粘りすぎず、少し でも妊娠率がいい治療を受けていた だきたいですね。
妊娠がゴールではなく、 元気に出産することを 最終目標に治療計画を
妊娠がゴールだと考えている方 が多いと思いますが、そうではな く、最終目標は健康体で元気な赤 ちゃんを産むことです。
年齢が進 むと受精卵の染色体異常の割合が増えてくるので、妊娠しても流産 する確率が高くなってしまいます。
妊娠を維持できたとしても妊娠高 血圧症候群などの合併症を引き起 こしたり、早産になりやすかった り…。
赤ちゃんについても、 40 歳 以上だとダウン症児を出産する確 率が 90 人に1人程度とかなり高く なります。
当院でも患者さんにお話しして いますが、本来なら安全生殖年齢 の限界は 35 歳。
そこから先、特に40 歳を過ぎてからの妊娠・出産は、 ある程度のリスクを伴います。
そのリスクを少しでも減らすために、 スピーディかつ確率の高い治療を 考えていくことが必要になってく るんですね。
治療の工夫はもちろん、 生活習慣も見直して 妊娠力をアップ!
加齢とともに卵子も老化して、 染色体異常の割合が増えていくわ けですが、残念ながら今の医学で は卵子そのものを若返らせる方法 はありません。
40 代から 20 代に若返らせること はできませんが、少しでも細胞の 老化を遅らせることはできると思 います。
それにはやはり、食事や 運動など生活習慣の改善が欠かせ ません。
たとえば、毎日ウォーキングを20 分以上続けて骨盤の血流を良くして新陳代謝を促す。
ファストフー ドやコンビニのお弁当、おにぎり だけの偏った食事ではなく、ビタ ミンやミネラルなど、さまざまな 栄養素をまんべんなく摂れるメ ニューを考えるなど。
また当院では、場合によっては DHEAやメラトニンなどのサプ リメントをおすすめすることもあ ります。
個人によって効果は異な りますが、特に卵巣機能が落ちて いる高齢の方の場合、卵子が採れ なかった人が採れるようになった り、受精卵の質が改善されるケー スも。
最近ではプラセンタという成分 に着目し、プラセンタエキス、Lー カルニチン、αーリポ酸、コエンザ イムQ 10 を配合したサプリメント を開発しました。
卵子の細胞質に はエネルギーを産み出すために多 くのミトコンドリアが存在し、こ の物質が卵子の中の 95 %のエネルギーを作り出しています。
加齢などでこのミトコンドリア が効率的に働かなくなると、卵子 がエネルギー不足になり、分裂や 成熟、受精卵の生育などに支障を きたします。
プラセンタをはじめ、 エネルギー産生に必要な成分をサ プリメントで補ってあげれば、卵 の質の向上が期待できます。
当院の体外受精の妊娠率は 43 歳 以降で2割程度(凍結胚移植)。
通 常、その年代だと1割程度ですが、 さまざまな工夫をして2割まで引 き上げました。
40 代になると、 20 代や 30 代の時 よりもさらに個人個人の条件が変 わってくるので、排卵誘発など治 療の工夫はもちろん、食生活や運 動、サプリメントなど、患者さん 自身もできることは積極的にトラ イして、統合的に妊娠力を上げて いくことが必要になってくると思 います。