治療以外にできること

時間がない…… 治療以外に できることはある?

「妊娠するためにできることは何でもやろう」との思いから、治療以外にもさまざまな健 康法やサプリメント、漢方、鍼治療などを試される方が大勢います。

それらは実際に効果 があるのでしょうか。

浅田レディースクリニックの浅田先生にお聞きしました。

 

浅田 義正 先生 名古屋大学医学部卒業。1993年、米国初の体外受精専門施設に 留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用 いた顕微授精による妊娠例を報告。2004 年、浅田レディースク リニック開院。2006年、生殖医療専門医認定。2010年、浅田 レディース名古屋駅前クリニック開院。先生のご自宅には、奥 様の特技という空中ブランコの本格的施設が完備! 昨年9月末 放映のTV番組「ナニコレ珍百景」でも紹介されました。先生も 昨年、初挑戦し、「意外にあっさり飛んで成功しちゃった」とか。 次のチャレンジを楽しみにしているそうです。

ドクターアドバイス

世界中どんな環境で も子どもは生まれてい ます。

健康にこだわり すぎず、スト レスを溜めな いことも大切 です!

妊娠するために したほうがいいことは何?

治療以外でも妊娠のために良い といわれることは多くあります が、いずれも代替医療や健康法で はあっても、直接、妊娠率を上げ るものではありません。

ただ、健 康法の多くは血液の循環を良くす ることが中心になっています。

卵 巣に作用するホルモンは血液の流 れに乗って運ばれますので、そう いった意味では、同じように治療 していても血流の悪い人よりはい いだろうということはいえます。

サプリメントについても、それ を服用することで卵子の質を良く したり、妊娠率を上げるというこ とはできません。

卵子を成長させ るのはあくまでもホルモンです。

当院でも「Asadaサプリ」という抗酸化作用に特化したサプ リメントを作っていますが、これ は子宮内膜が厚くならない人の子 宮内に低酸素状態をつくり、着床 や胚の培養をサポートするという 発想から生まれたものです。

なぜなら、私たちは普段 20 %の 酸素の中で生きていますが、胚の 培養に適しているのは5%の低酸 素状態。血管の塊のような臓器で 高酸素環境である子宮の内膜が厚 くなるのも、血管から離れ、子宮 内に一時低酸素環境をつくるため のメカニズムといわれています。

ですから特に胚移植前後の子宮内 低酸素維持の補助として考えてい ます。普段でもアンチエイジング や健康増進のための抗酸化剤は重 要です。

とはいえ、これも卵子を良くす ることはできません。

今、市場で不妊改善のためにいいといわれていることのほとんど は、むしろ妊娠してから赤ちゃん のためにやったほうがいいことば かりだと思います。

具体的な治療では どんなことが有効?

30代後半に比べ、 40 代の人はも ともと卵子が老化しているため、 体外受精でも一般不妊治療でもそ んなに差はないのではないかとい う意見もあります。

しかし、もと もと確率が低い上に、さらに途中 でロスがあればもっと成績は悪く なります。

したがって当院では、 できるかぎり多くの受精卵をつ くって、その受精卵が育つかどう かが 40 代の治療の要だと考え、体 外受精を中心にしています。

ただ、体外受精を中心にしても、 そこは3通りに分けています。

1つ目は 40 代前半でまだ卵巣予備能 が良く、注射を打ったら 10 個、 20 個と採卵できて、普通の体外受精 ができる人。

次に、 40 代の多くが そうですが、卵巣予備能が低く、 内服のクロミフェン中心の簡易の 体外受精を行う人。

問題は、FSH、LHがすでに 上昇し、閉経移行期に入りかかっ ている3つ目のケースです。

この 場合に、ピルやカウフマン療法な どでF S Hを下げ、何周期も同じ ことを繰り返していると、時間だ けつぶし、結局、何もできなくなっ てしまいます。

当院では、卵胞ホルモンを使っ て、FSH、LHが上がらない状 態を保って治療をしていきます。

そうすることで、本当にもう卵子 がなくなって何もできないという 前のフェーズに対処できると考え ます。

この方法は 20 、 30 代の早発卵巣不全にも有効です。

生理不順があれば、まずはAMHを測り、 単にホルモンのバランスが悪いの か、本当に卵子がなくなりかけて いるのかを知ることが大切です。

また、体外受精をすると、高齢 の人の卵子は見た目や成長が悪い と思いがちですが、そんなことは ありません。

分割期では差はあり ませんが、胚盤胞になる率も下が ります。

それは体外培養のストレ ス負荷において、若い卵子よりも 高齢な卵子は脆弱だから。

そこで 当院では、 40 代は胚盤胞移植にこ だわりません。

胚盤胞まで待たず とも早めに戻すことで妊娠できる 症例は増えます。

40 代の不妊治療で 知っておくべきことは?

まずは、卵子の真実を知ってほ しいと思います。

不妊治療がいつまでできるかという目安には年 齢と、もうひとつ卵巣予備能があ ります。

卵巣予備能については、 よく 45 歳相当とか何歳相当の予 備能という言い方を耳にします が、これは誤解のもとで、正し くありません。

同じ年齢でも卵巣 予備能の差によっては、治療の内 容も治療を続けられる期間も変 わってきます。

また、妊娠にも出産にも適齢 期があります。

当院でも 47 歳で 出産まで至った例もありますが、 それはオリンピック級の記録で、 ごくまれな例です。

何歳になったら諦めよという ことはありませんが、客観的な データを見て、正しい知識を身に つけて自分で判断できるように なってほしいと思います。

それは 正しい人生設計をするためにも 大事なことです。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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