生理不順で排卵障害です

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)です。

なるべく自然で早く 子どもを授かれる治療は?

北村 誠司 先生 慶應義塾大学医学部卒業。1989年からIVFおよび内視鏡手術に 従事。子宮鏡下手術による胚移植の改善や、腹腔鏡下手術による 子宮筋腫、内膜症の解消・改善を積極的に図ると同時に、妊娠困 難症例に対しても新しい治療を取り入れて対応。本院(荻窪病院) 泌尿器科の男性不妊専門医の協力により、TESE-ICSIや逆行性 射精など、男性不妊の治療体制も整えている。AB型・いて座。多 くの方を受け入れ、今以上に診察をスムーズに行えるように、もっと 広い場所への移転や増設などを検討中。年数回、懇談の場としてサ ロンを開催するなど、つねに患者さんが主役のクリニックです。
匿名さん(29歳)からの相談 Q.現在29歳で、昨年末に結婚。24歳の時、生理不順で受診した産婦人科で排卵障害を告げられました。当時は独身でしたが、クロミッドⓇの使用をすすめられ、3 年ほど服用。その後、服用をやめて様子を見るようにいわれましたが、基礎体温が 上がるのは2カ月に一度程度。この1年は低温状態が続いています。昨年の夏には AMH検査も受け、結果を受けて多嚢胞性卵巣症候群と診断されました。今は漢方 の「婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)」とマルチビタミンのサプリメントを飲んでい ます。なるべく早く子どもを授かりたいという思いと、自然な形で授かりたいという 思いがせめぎ合っています。どのような治療を行っていったらいいのでしょうか?

AMHからPCOSは判断できる?

AMHの値でPCOSと診断されたようですが、実際にはどのような条件が揃うと確定診断ということになりますか。
北村先生 AMHの数値は卵巣の残りの卵胞数を推測できるということで、卵巣の予備能を調べる時に用いられる検査ですが、その値からPCOSの傾向があるかどうかも判断することができます。
当院の場合、だいたい1 ・50が卵子が多めに出来るかどうかの基準の値。
それを超えて5・00以上になってくると、PCOSの可能性を疑っています。
高い方では 15 とか 20 という値も見られますね。
しかしそれだけではなく、現在、国内では以下の条件をPCOSの診断基準としており、3つすべてを満たす場合は確定診断ということになります。
①月経不順や無月経など月経の異常
②卵巣に胞状卵胞がたくさんある
FSH値よりLH値が高い
匿名さんはAMHの値だけではなく、これらの要素もきちんと調べたのでしょうか。
もし調べていないようでしたら、まずは検査をして、きちんとした診断を受けることが一番かと思います。

まず、糖負荷の検査

PCOSだという確定診断を受けた場合、どのような治療法がありますか。
北村先生 当院の場合、PCOSの傾向がある方にはまず、糖負荷の検査を受けていただいています。
検査をして耐糖能に異常がある、インスリン抵抗性が認められれば、メトホルミンというお薬を積極的に使っていきます。
先にクロミッドⓇという排卵誘発のお薬を使って、その効きが悪い時には糖負荷試験を実施し、インスリン抵抗性があればメトホルミンも追加していくというケースも多いですね。
この2つに、さらに当帰芍薬散という漢方薬もからめていくという治療で、排卵の状態がうまく整って妊娠されるという方も少なくありません。
当帰配合の漢方薬は匿名さんも現在飲まれているようですね。
北村先生 確かに当帰の成分はPCOSの方に良いとみなされています。
ただ、漢方薬の場合、どういうふうに効いてなぜ改善するのか、そのしくみはまだはっきりわかっていません。
漢方以外のお薬でもその効き方は間接的で、PCOSだけに直接作用するものは未だ開発されていないというのが現状です。
「なるべく自然な形での改善を」と望まれているようですが。
北村先生 以前クロミッドⓇを飲まれて、やめたらまた排卵が不調になったということですから、まったくお薬を使わないという形は難しいかと思います。
早い妊娠を望まれているようでしたら、やはりクロミッドⓇやメトホルミンを服用し、半年は様子を見ていただく。
薬を飲みながらタイミング法に臨んで、半年程度経っても結果が出ないようなら、その時点で人工授精体外受精へのステップアップを考えてみてはいかがでしょうか。
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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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