卵胞が無事に育つか、妊娠できるか不安です

過去の摂食障害が 原因で無月経に。

妊娠は可能なの?

蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立中央病院 産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人科部長を経て、1990 年オーストラリア・PIVETメディカルセンターへ留学。帰国後、1995年 蔵本ウイメンズクリニック開院。O型・おうし座。役職が増え、さらに忙し さが増すなか、趣味のミュージカル鑑賞の機会は確保。先日も東京で「ク レイジー・フォー・ユー」を見て来たばかり。夏の「レ・ミゼラブル」福 岡公演も楽しみにしているそうです。
かなこさん(30歳)からの相談 Q.摂食障害となって16歳から今まで無月経です。この間、何度か産婦人科に行 き、薬で月経を促しましたが、体重が少なくなり、薬もやめました。一時は体 重が30㎏になりました。現在は身長157㎝、体重42㎏です。昨年結婚し、 不妊治療専門の科へ。検査の結果、子宮は萎縮、ホルモンも極端に少ないが、 ゼロではないとのこと。精液検査、卵管造影検査は問題なしでした。そこでプ レマリンⓇとプラノバールⓇを使ったカ ※ ウフマン療法を3サイクル行い、その後ク ロミッド Ⓡを処方され、5日間飲みました。その時点での卵胞はまだ小さく、さ らに5日間飲みましたが、大きくなりませんでした。その後、11㎜程度になり、 HMGを注射し、5日目に再度注射しました。卵があるのは薬のお陰でしょうか? 今後、卵が成長する可能性や妊娠の可能性はあるのでしょうか?
不妊と体重について
かなこさんは 15 歳の時に摂食障害が原因で 体重減少が起こり、 16 歳から現在に至るまで、 無月経が続いています。
蔵本先生 皮下脂肪やある程度の体重は月経や排卵などの女性機能にとても重要です。
必要以上に皮下脂肪や体重が減ると、脳の視床下部でのGnRH というホルモンの分泌が低下し、視床下部性無排卵が生じます。
これが続くと、さらに下垂体機能が低下します。
すると下垂体ホルモンである FSHLHの分泌低下が起こり、より強い無排卵、無月経が起こります。
体重減少に伴う無月経には、比較的軽い「体重減少性無月経」と「神経性食欲不振症」があります。
後者は不食や過食を繰り返したり、隠れ食いするなど、食行動異常を伴う摂食障害があります。
標準体重のマイナス20 %以下の痩せは、その後者であり重症とい えます。
重度の体重減少から栄養失調を起こし、時として生命に危険が及ぶ可能性があります。
実際、このケースの死亡率は6%です。
さて、かなこさんの場合、体重が最低の時は 30 ㎏だったとのことですが、肥満度を示す 体格指数のBMI で見ると、 12 ・2 で非常 な痩せ状態です。
BMIの計算式は体重(㎏)÷身長( m )÷身長( m )で求め、日本での正常域は BMI 18 ・5 から 25 未満です。
か なこさんは現在 42 ㎏ですが、標準体重(BMI = 22 )は 54 ・2㎏です。
体重減少に伴う無 月経を改善するには、食事をきちんと摂り、体重を増やすことが必要です。
かなこさんも標準体重の約 90 %、つまり 48 ㎏まで増やせば、 より排卵しやすくなると思います。

規則正しい生活

かなこさんは現在、クロミッドⓇを服用していますね。
蔵本先生 クロミッドⓇは視床下部を刺激してGnRH の分泌を促します。
ただし、下垂体機能がまだ低下しているので、直接卵巣を刺激して卵胞の発育を促すHMG 製剤の注射も必要でしょう。
卵胞が 11 ㎜程度に育っている ので、気長にクロミッドⓇと HMG 製剤の併用で治療すれば、排卵していくと思います。
体重減少による無月経が長期間続いたので、視床下部や下垂体の回復が遅れていますし、卵巣の反応にも時間がかかると思います。
AMH(抗ミューラー管ホルモン)は小さな卵胞から分泌されるホルモンで、卵子が多くあるか、少ないかを見る指標の一つですので、早めに検査することをお勧めします。
AMHがある程度高ければ、HMGの注射は最も強力な排卵誘発剤ですので、慎重に投与しないと多数の卵胞が発育し卵巣が腫れたり、多胎妊娠となることがあります。
今回は、発育卵胞が1個でしたから、それほど心配はいらないでしょう。
食事は1日3回バランスよく摂取し、規則正しい生活と少なくとも7時間程度の睡眠を取りましょう。
ストレッチなどの適度な運動は良いです。
今後、摂食障害などの異常をきたしたら、メンタル面を診てもらえる心療内科やメンタルクリニックを受診してください。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。