MD-TESEを検討中。

回収できる可能性や 顕微授精の成功率は?

絹谷 正之 先生 愛媛大学医学部卒業。広島大学医学部産科婦人科学教室入局。そ の後、東京の山王病院リプロダクションセンターにて高度生殖補助医療 研修、顕微授精を修得。1999年にはカナダ、アメリカにて高度生殖 補助医療研修を行う。2000年、絹谷産婦人科副院長、2002年より 院長に。広島県産婦人科医会常務理事。 ISO9001やJISART(日 本生殖補助医療標準化機関)の認定を2010年~2011年に取得。「僕 も50歳を超えたから、元気に働けるのもあと10年くらいじゃないかな。 新しいことにチャレンジしつつ、体力も含め今を大切にしながら、これから も頑張っていきたい」とおしゃっていました。
けんけんさん(32歳)からの相談 Q. 治療歴1年、39歳の主人が非閉塞性無精子症です。染色体の検査をした結果、 クラインフェルター症候群という結果でした。20個の細胞を調べた結果、すべて 異常だといわれました。普通は調べたうちの2~3個のことが多いといわれました。 MD-TESEを検討していますが、精子が回収できる可能性はどのくらいあるでしょ うか。また、回収できた場合の顕微授精の成功率はどのくらいあるでしょうか。 MD-TESEをした場合、更年期障害のようなリスクがあるといわれました。それ はどのくらいの確率で起こるのでしょうか。また、どのくらいの症状が出るのでしょ うか。よろしくお願いします。

クラインフェルター症候群

けんけんさんの治療内容について、どう思わ れますか?
絹谷先生 けんけんさんのご主人の精子が精 液中にいないということがわかり、きちんと調 べられた結果、非閉塞性の無精子症と診断さ れたのでしょう。
クラインフェルター症候群は男性不妊の原 因精査によって発見されることが多く、男性 不妊の原因となる染色体異常のなかで、頻度 が高いものです。
ご主人は生まれながらに、 染色体異常があって精子をつくる能力が普通 の方より劣っていたのです。
そうすると精巣から精子が得られるか、と いうことが問題なのですが、けんけんさんの 場合はMDーTESE(顕微鏡下精巣内精子回収術)を検討されていますね。
これは顕微 鏡で精巣内を観察し、精細管と呼ばれる小さ な組織を採取して、その中から精子を回収す る方法です。

MDーTESEの精子回収率

MDーTESEの成功率については、どれく らいなのでしょうか?
絹谷先生 まず、精子が回収できる可能性で すが、 45 〜 50 %といわれています。
ではそれ が事前にわかるかどうかですが、精巣の大き さや血液中のFSHの値などである程度は予 測できるものの、確実ではありません。
ただし、 クラインフェルター症候群の場合は年齢によっ て、回収率が変わってきます。
たとえば 20 代 と若い方は 50 %よりやや高い回収率で、年齢 が上がるにつれて精子の回収率が下がるといわ れています。
けんけんさんのご主人の場合は39 歳ですので、データ上では 40 %以下になり ます。また片側だけでなく、左右両方に行う と約 10 %回収率が高くなるといわれています。
精子が回収できた場合の成功率については、 通常の顕微授精よりやや低め、または同等と いわれています。
受精率はやや下がるものの、 受精できれば妊娠できる可能性は十分ありま す。
良い精子、運動精子が得られるかが大き なポイントです。

MD-TESEと男性更年期

MDーTESEをした場合、更年期障害の リスクを教えてください。
絹谷先生 残念ながら正確にはわかりません。
どの程度の手術になるか、つまりは精巣にどの くらいの損傷が生じるかで術後の症状は違って きます。
女性の更年期障害と同じように、手 術をしなくても男性でも自然に、男性ホルモン が減って更年期障害になることはあります。
そ れを、LOH症候群と呼んでいます。
手術がきっ かけで男性ホルモンが減る可能性があるので、 そうなれば症状が出てしまうでしょう。
先ほど 言ったように、両方の精巣を手術することで精 子の回収率が上がりますが、その分、更年期 障害発症のリスクは高まってきます。
男性の更 年期障害の症状として、勃起障害、性欲低下、 睡眠障害、筋力の低下、知的活動の低下など があげられます。
クラインフェルター症候群の男性では男性ホル モンが元々低下していると考えられます。
手術 によって男性ホルモンがさらに減少することもあ りますが、体が既に男性ホルモン低下の状態に 適応しているということも考えられるので、症状 の程度はそれ程でもないかもしれません。
いろいろ心配されているようですが、MDーT ESEをトライする価値はあると思います。
主 治医の先生とよく話をして、今後の治療について 検討してみてください。
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