ドクターから 「閉経も頭に入れて」と 宣告されました

30代で告げられた「閉経」という言葉に戸惑い、 治療の継続に不安を感じる日々。

ほかに有効な治療法は?

藤野婦人科クリニックの藤野祐司先生にお話を伺いました。

藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。米国留学、同大学医学部婦 人科学教室講師を経て、1997年にクリニックを開業。 現在、同大学で非常勤講師も務める。B型・おとめ座。 先日、ハワイで買ったアロハシャツを着て撮影に応じ てくださった先生。よく見ると、エビ、トロ、ハマチ、 カリフォルニアロールなど、なんと柄が全部お寿司の 模様に! いつも遊び心を忘れない先生らしいセレク トです。

ドクターアドバイス

●自然周期の採卵で凍結胚移植を試みる
●転院やセカンドオピニオンも選択肢に
●夫婦でよく話し合って治療の継続を決める
きぃさん(38歳)からの相談 Q.不妊治療4年目の 38 歳です。カウフマン療法で人工授精7 回失敗。体外受精でなんとか1個を採卵しましたが、着床せ ず失敗。ショート法を試みましたが、卵胞が育っていなくてキャ ンセルになりました。もう一度、カウフマン療法と言われま したが、本当に可能性がないのでしょうか? 違う病院での 検査も視野に入れています。現在、FSHが20mIU/ml以上 あります。ピル治療中に不正出血をして、ピルを替えて不正 出血は治まりました。ですが、排卵誘発剤の注射を3本打っ たあたりから、また不正出血。結果、卵胞が育ってくれません でした。キャンセルとともに閉経も頭に入れてほしいと言わ れました。本当に望みがないのでしょうか?

●これまでの治療データ

検査・ 治療歴

不妊治療4年目。
カウフマン療法で人工授精7回、体外受精1回。

不妊の原因と なる病名

卵巣機能障害、子宮内膜症卵巣嚢腫

現在の 治療方針

カウフマン療法。転院して再検査も検討中。

精子 データ

特に問題なし

POFの可能性

不妊治療4年目に医師から「閉経も頭に入 れてほしい」と言われ、今後の治療につい てのご相談です。 38 歳とまだ年齢的には早 いように思われますが、先生はどうご覧に なりましたか?
藤野先生 日本女性の平均閉経年齢は約 50 歳 で、日本産科婦人科学会では「早発閉経」の 定義を 43 歳未満としています。
きぃさんは 30 歳代後半で、排卵誘発剤を使ってもなかなか 排卵しないということですが、やはり卵巣機 能の低下が始まっていると考えてよいでしょ う。
一般に 40 歳未満で無月経となり、血中の 卵胞刺激ホルモン(FSH)の値が高く、エ ストラジオールの値が低下した状態をPOF (早発卵巣不全)と呼んでいます。
まだはっき りとした診断基準は確立されていませんが、 最近は卵巣に残っている原始卵胞の数が少な くなっている状態を示すDOR(卵巣予備能 低下)と表現されることも多いです。
卵巣予備能を評価するのに最も有効な指標 であるAMHの値がわからないとのことです ので、一度、きちんと測定されたほうがい いかもしれません。
ただ、担当医の先生が おっしゃるとおり、FSHが高値であること、 ショート法による卵巣刺激で卵胞が育たな かったことなどから考えると、残念ながら卵 巣に残っている原始卵胞の数がかなり減少し ていることは確かだと思います。

子宮内膜症の種類によっては

ひどい子宮内膜症で、卵巣嚢腫もあるとのこ とですが、そのままでは治療に影響があるで しょうか?
藤野先生 子宮内膜症が卵巣のチョコレート嚢腫だと判断すれば、そのせいで卵巣機能が 低下して早発卵巣不全を起こしている場合が あります。
チョコレート嚢腫だけを手術で取 るという選択肢もあるでしょうが、子宮内膜症の手術は卵巣の原始卵胞を減少させ、卵巣 機能の低下が進行する方もたくさんいらっ しゃるので、症状が強くなければ手術はあまり考えないほうがいいと思います。
腹膜や直 腸との癒着が起こっているような、広範囲に 広がる子宮内膜症だとすれば、人工授精では 妊娠が難しく、体外受精による積極的な治療 が必要となるでしょう。

移植の方法を考える

ショート法による卵巣刺激で卵胞が育たず、 胚移植をキャンセル。今後はカウフマン療法 に戻すという治療方針のようですが、他に有 効な治療法はあるのでしょうか?
藤野先生 以前にカウフマン療法を併用しな がら、人工授精を7回行われたとのこと。
おそらくエストロゲンの補充で卵胞の発育を促 したうえで、人工授精をされていたのだろう と思います。
カウフマン療法とは、不足して いるホルモンを人工的に補い、自然の排卵周 期に似たホルモン環境を作り出す治療法です。
正常な月経周期では、前半にエストロゲンの み、後半にエストロゲンとプロゲステロンが 分泌されますので、それをホルモン剤の投与 で補います。
使用する薬剤そのものに排卵誘 発作用があるわけではありませんが、ホルモ ンの補充により、時に排卵が起こるということが時々あるので、早発閉経には有効な治療 法です。
FSHの値が高いタイプの方の治療 では、エストロゲンを補充しながら、排卵誘 発剤を使うという方法がよく取られます。
た だ治療歴から見て、状況はかなり厳しいもの と言わざるを得ません。
望みがあるとすれば「月経周期は 28 日」と 記載されていたところでしょうか。
まったく 薬を服用せずに月経が 28 日周期で来るのであ れば、自然に起こる排卵のチャンスを逃さず に採卵し、凍結胚移植による体外受精を積極 的に考えられたほうがいいと思います。
胚移 植に一度失敗されていますが、1回の採卵ご とに新鮮胚で戻すのではなく、採卵できた卵 子は受精卵にして凍結しておいて、凍結胚を 時期を見て戻すという方法を試されてはどう でしょうか。
採卵を何度か繰り返しながら、 子宮や卵巣のコンディションを整えたうえで、 条件の良い時に戻すと、良い結果につながる ケースがあります。

セカンドオピニオンも

転院も考えていらっしゃるようですが、どう でしょうか?
藤野先生 医師によって治療のアプローチの 仕方が違うことはよくあることです。
一つのやり方で通すのも一つの方法かもしれません が、やはり患者さんの卵巣機能にはそれぞれ 個人差があります。
個人差に合わせてくれる 先生を探されて、相談に行くのも一つの方法 かと思います。
セカンドオピニオンとして、 他の施設の先生に意見を求める形でもいいの ではないでしょうか。
今後の治療について、最後に先生からメッ セージをお願いします。
藤野先生 厳しいことを言うようですが、担 当医がおっしゃるように閉経も念頭に入れる 必要があるでしょう。
そのうえで治療をやめ るのも選択肢の一つです。
ただ年齢的にはま だ少し余裕がありますので、もし諦めきれな いということでしたら、自然周期で採卵し、 凍結胚移植という治療を試みることをおすす めします。
相談にのってくれる施設へと転院 なさるのもいいでしょう。
一人ひとりの卵巣 機能に合わせて排卵誘発方法を細かく調整し てくれるなど、柔軟な対応が期待できるクリ ニックに転院し、新たな気持ちで検査や治療 を受けることには意味があると思います。
今 後はご夫婦でじっくりと話し合いをされ、悔 いが残らないようにすることが大切です。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。